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裏世界・無法者の森編
第18話 白き胞子は闘いの狼煙
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地面が、音もなく裂けた。
そこから真っ白な柱が、ずるりと姿を現す。
いや、柱ではない。
無数の菌糸が束になり、絡み合い、蠢きながら天へと伸びていく。
その頂には、濡れた巨大なティッシュのような塊が貼りついていた。
ぬらり――木々の隙間から漏れた月の光を反射している。
『な……なんなんだ、あれは!』
後ずさりしたオランジェットの声が、静寂を切り裂く。
周囲の大木が、ギギ……ギコギコ……と軋み始めた。
まるで苦しげに唸るようなその音が、森中にこだまする。
木々の幹がわずかに震え、枝葉がざわめいた。
風ではない。――木々が、恐れている…そう感じた。
だんだんと木々の動きが大きくなり、残像のように速い動きへと変わる。
木々の影が、歪む。
『なんでもいい、今のうちに逃げよう、クラフティ!』
『うん!』
オランジェットはボンボローニを担ぎ、泥を蹴り上げ、息を切らしながら走る。
クラフティは少し足を引きずっている。だが、止まらない。
――バキバキバキッ!!!!!
森全体が揺れた。
二人が同時に振り向く。
ガリッ! バリバリッ!!
菌糸の柱の頂――
あの濡れた幕のような部分が、内側から押し広げられていく。
膨らみ、裂け、
ゆっくりと、鳥が翼を開くように反り上がった。
『お兄ちゃん! あれ――!』
『キノコだ……! でっかいキノコだ!!!』
キノコの傘の裏側が、サメのえらのような形を浮かび上がらせる。
湿った空気が震え、胞子のような白い粒が宙を漂う。
その瞬間、周囲の大木たちが同時に動いた。
ギコギコギコギコ――
まるで、キノコの脈動に合わせて踊るように。
異様な光景だった……殺される――。
バオン!!!!
巨大なキノコの傘が――ゆっくりと、広がった。
静止画のような一瞬。
胞子の霧が逆光に照らされ、周囲が白金色に染まる。
それはまるで、「完成」を告げる儀式のようだった。
息を呑むほど――美しい。
だが、同時に、どうしようもなく恐ろしい。
その完璧なる美の裏側で、森が悲鳴を上げる。
ギギ……ギギギギギ――!!!
大木たちが苦しみにのたうつように揺れ、
枝を振り回し、幹を打ちつけ、
地面を裂くほどの力でしめ縄を叩きつけた。
バシィン!! ドシィン!!
枝の鞭が地を打つ音が、雷のように響く。
木々同士が絡み合い、引き裂き、傷つけ合う。
白い胞子が吹雪のように舞い、視界を覆う。
その中心――
オランジェットとクラフティが立ち尽くしていた。
完全に、囲まれている。
森が、二人を飲み込もうとしていた。
白い胞子の嵐が、二人の視界を奪った。
『クラフティ、走れ!!!』
オランジェットの叫びが風にちぎれて消える。
地面が波打ち、根が蛇のようにせり上がってくる。
ドンッ! クラフティが転んだ。
すぐにオランジェットが手を伸ばし、引き上げる。
『大丈夫か!? 立って!』
『う、うん……でも足が――!』
頭上を太い枝が唸りを上げて通過した。
ドガァン!! すぐ横の地面が抉れ、土が舞う。
木屑と胞子が光を反射し、あたり一面が白く霞んだ。
『こっちだ、急げクラフティ!!』
森が暴れる。
木々が互いにぶつかり、倒れ、枝が空を切り裂く。
バシッ!! バシンッ!!
『いってぇええええ!』
枝の鞭がオランジェットの肩をかすめ、布が裂けた。
血が滲む。それでも彼は振り向かない。
『ボンボローニ、しっかり掴まってて!』
背に負われたボンボローニが小さくうなずく。
地面が裂け、根がせり上がる。
足場が崩れ、二人は段差の下に転げ落ちてしまった。
そのとき、背後で何かが動いた。
巨大なキノコの傘が、脈打つように震えている。
まるで、逃げる二人を“見ている”かのように。
森が、荒れ狂う波のように迫ってきた。
枝がうねり、根が跳ね、地面ごと飲み込もうとしている。
『クラフティ……ごめん』
『えっ?』
オランジェットはボンボローニをそっと地面に下ろした。
そして、森を迎え撃つように両手を広げ、クラフティの前に立つ。
『走って――!』
『お兄ちゃん、ダメだよ……そんなの――!』
『走れぇええええええええええっ!!!!』
その叫びが空気を裂いた。
クラフティは涙に滲む視界の中、
わずかに差し込む光へ向かって走り出す。
振り返ったとき、
小さなオランジェットの姿が、
まるで津波のような森の影に呑まれようとしていた。
『ダメぇええええ!お兄ちゃん――――っ!!!』
オランジェットは静かに目を閉じた。
その表情は、どこか穏やかだった。
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
連続する爆音が森を切り裂く。
熱風が吹き荒れ、オランジェットの身体が宙に舞った。
視界が白に染まる。
――そして。
煙の向こうに、車椅子に乗ったプラガの姿があった。
その背後には、構えを取るメガチップスの面々。
彼らの影が、ゆっくりと煙の中から浮かび上がる。
――ブゥゥゥゥゥン……ッ!!
重低音と共に、空気が震える。
煙を裂いて、閃光が走った。
メガチップスの一人、クリスピーが両手持ちのハンマーを振り下ろして、
迫る枝を粉砕した。
バッッッキィィィン!!
木片が弾け、砕け散る。
続いて、オールドファッションがランスで、うねりながら走る木の根を次々と突き刺しては、捻りを加えて吹き飛ばしていく。
『良く頑張ったガキ!下がれ!!』
プラガが車椅子で前進する。
腕を上げると、車椅子の側面が変形し、砲口が展開した。
『目標――でっけぇキノコだ』
両目に光が宿る。
『メガチップス砲発射!!!』
ドガァァァァァァンッッ!!!!
咆哮が地面を貫き、根の群れをまとめて吹き飛ばした。
爆風に煽られた胞子が一瞬で蒸発する。
数十人のメガチップスが総攻撃を仕掛けた。
ズガガガガガガガガッ!!
森が悲鳴を上げるように揺れた。
巨大キノコの傘が再び脈打ち、胞子を噴き出す。
『くっ、まだ来るか……!』
プラガが巨大キノコに向けて指を突き出す。
『メガチップス砲出力増加!!!発射!!!』
轟音。
地面の下から立ち上る炎の柱が、森を飲み込む。
真っ白だった菌糸が、一瞬で赤く焦げた。
オランジェットは爆風に煽られながら、目を細めた。
『よぉ、ガキ、派手にやってくれてんじゃねぇか!』
『……プラガさん!来てくれたんですね!』
プラガはにやりと笑った。
『ガキが戦ってるんだ、手を貸すのが仲間ってもんだ』
『仲間…』
その背後で、炎が森を照らし出す。
暴れ狂っていた木々が、次々と倒れていく。
炎の中で、巨大なキノコがゆっくりと動く。
白かった傘は黒く焦げ、裂け目から光る菌糸が脈打っている。
まるで心臓の鼓動のように。
『まだ生きてるのか……!?』
オランジェットが息を呑む。
地面が爆ぜ、無数の菌糸が一斉に地上へ飛び出した。
まるで白い蛇の群れ。
その一本一本が木々を貫き、空を突き破る勢いで暴れ回る。
「来るぞッ!!!」
キノコの傘が震え――光を放った。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
音が消える。空気が歪む。
放たれた胞子の波が、衝撃波のように広がった。
『ぐあっ……!!』
メガチップスの仲間達が吹き飛び、木片の山に次々と叩きつけられる。
オランジェットが駆け寄ろうとするが、足元の根が絡みついた。
『ガキ!邪魔だ!下がれ!!』
プラガの声が飛ぶ。
備えつけられたタンクのバルブをゆっくりと開放する。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
車椅子の砲口が再び光る。
『これで終わりだ!メガチップス砲・オーバーバースト!!!』
ドォォォォォン!!!
地響きと共に、閃光がキノコの胴を貫いた。
白い胞子が弾け飛び、炎がそれを包み込む。
だが――
『嘘だろ……! まだ……!』
バッサァッ!!
キノコの傘が、再び持ち上がった。
裂け目の中で、無数の菌糸がうねうねと蠢めく。
ぞわっ――と、空気が震えた。
傘から飛び出した胞子が空を覆い、空間そのものが白く染まっていく。
『こいつ……本気を出したってのか!』
『お兄ちゃん!』
『クラフティ!来るな!』
巨大な白いキノコが、大気を震わせる咆哮のような振動音を放つ。
地面が波打ち、木々が一斉にざわめいた。
ギャキィイイイ!!!!
目を覚ましたカヴァルッチが、雄叫びと共に跳躍する。
穴の開いた巨大キノコの胴体に食らいつき、
そのまま、力まかせに――食いちぎった。
ブチィッ!!!
弾けるような音と共に、胞子が舞う。
カヴァルッチは地面に着地し、口の中の大きな欠片を「ペッ!」と吐き出した。
ズズズズズ――
巨大なキノコがぐらりと傾く。
倒れゆくその影が、禁足地の大地を覆う。
ズドォオオオン!!!!
引きちぎられた巨体が、叩きつけられるように地を打った。
轟音と共に、地面が大きく揺れる。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
勝利の瞬間は、あっけないほどだった。
だが、胸の奥から湧き上がる熱は止められない。
メガチップスたちは拳を掲げ、空に向かって吠えた。
キノコが倒れると、禁足地の木々も静まり返る。
暴れていた枝も、まるで息を止めたように凪いだ。
それでも、ここは禁足地。
彼らは互いに合図を交わし、足音を殺して出口を目指す。
風が炎を煽り、倒れた巨大キノコに火が移った。
瞬く間に燃え上がり、炎の柱が空を焼く。
轟音が森を震わせ、
やがて――すべてが静かになった。
森が、沈黙した。
そこから真っ白な柱が、ずるりと姿を現す。
いや、柱ではない。
無数の菌糸が束になり、絡み合い、蠢きながら天へと伸びていく。
その頂には、濡れた巨大なティッシュのような塊が貼りついていた。
ぬらり――木々の隙間から漏れた月の光を反射している。
『な……なんなんだ、あれは!』
後ずさりしたオランジェットの声が、静寂を切り裂く。
周囲の大木が、ギギ……ギコギコ……と軋み始めた。
まるで苦しげに唸るようなその音が、森中にこだまする。
木々の幹がわずかに震え、枝葉がざわめいた。
風ではない。――木々が、恐れている…そう感じた。
だんだんと木々の動きが大きくなり、残像のように速い動きへと変わる。
木々の影が、歪む。
『なんでもいい、今のうちに逃げよう、クラフティ!』
『うん!』
オランジェットはボンボローニを担ぎ、泥を蹴り上げ、息を切らしながら走る。
クラフティは少し足を引きずっている。だが、止まらない。
――バキバキバキッ!!!!!
森全体が揺れた。
二人が同時に振り向く。
ガリッ! バリバリッ!!
菌糸の柱の頂――
あの濡れた幕のような部分が、内側から押し広げられていく。
膨らみ、裂け、
ゆっくりと、鳥が翼を開くように反り上がった。
『お兄ちゃん! あれ――!』
『キノコだ……! でっかいキノコだ!!!』
キノコの傘の裏側が、サメのえらのような形を浮かび上がらせる。
湿った空気が震え、胞子のような白い粒が宙を漂う。
その瞬間、周囲の大木たちが同時に動いた。
ギコギコギコギコ――
まるで、キノコの脈動に合わせて踊るように。
異様な光景だった……殺される――。
バオン!!!!
巨大なキノコの傘が――ゆっくりと、広がった。
静止画のような一瞬。
胞子の霧が逆光に照らされ、周囲が白金色に染まる。
それはまるで、「完成」を告げる儀式のようだった。
息を呑むほど――美しい。
だが、同時に、どうしようもなく恐ろしい。
その完璧なる美の裏側で、森が悲鳴を上げる。
ギギ……ギギギギギ――!!!
大木たちが苦しみにのたうつように揺れ、
枝を振り回し、幹を打ちつけ、
地面を裂くほどの力でしめ縄を叩きつけた。
バシィン!! ドシィン!!
枝の鞭が地を打つ音が、雷のように響く。
木々同士が絡み合い、引き裂き、傷つけ合う。
白い胞子が吹雪のように舞い、視界を覆う。
その中心――
オランジェットとクラフティが立ち尽くしていた。
完全に、囲まれている。
森が、二人を飲み込もうとしていた。
白い胞子の嵐が、二人の視界を奪った。
『クラフティ、走れ!!!』
オランジェットの叫びが風にちぎれて消える。
地面が波打ち、根が蛇のようにせり上がってくる。
ドンッ! クラフティが転んだ。
すぐにオランジェットが手を伸ばし、引き上げる。
『大丈夫か!? 立って!』
『う、うん……でも足が――!』
頭上を太い枝が唸りを上げて通過した。
ドガァン!! すぐ横の地面が抉れ、土が舞う。
木屑と胞子が光を反射し、あたり一面が白く霞んだ。
『こっちだ、急げクラフティ!!』
森が暴れる。
木々が互いにぶつかり、倒れ、枝が空を切り裂く。
バシッ!! バシンッ!!
『いってぇええええ!』
枝の鞭がオランジェットの肩をかすめ、布が裂けた。
血が滲む。それでも彼は振り向かない。
『ボンボローニ、しっかり掴まってて!』
背に負われたボンボローニが小さくうなずく。
地面が裂け、根がせり上がる。
足場が崩れ、二人は段差の下に転げ落ちてしまった。
そのとき、背後で何かが動いた。
巨大なキノコの傘が、脈打つように震えている。
まるで、逃げる二人を“見ている”かのように。
森が、荒れ狂う波のように迫ってきた。
枝がうねり、根が跳ね、地面ごと飲み込もうとしている。
『クラフティ……ごめん』
『えっ?』
オランジェットはボンボローニをそっと地面に下ろした。
そして、森を迎え撃つように両手を広げ、クラフティの前に立つ。
『走って――!』
『お兄ちゃん、ダメだよ……そんなの――!』
『走れぇええええええええええっ!!!!』
その叫びが空気を裂いた。
クラフティは涙に滲む視界の中、
わずかに差し込む光へ向かって走り出す。
振り返ったとき、
小さなオランジェットの姿が、
まるで津波のような森の影に呑まれようとしていた。
『ダメぇええええ!お兄ちゃん――――っ!!!』
オランジェットは静かに目を閉じた。
その表情は、どこか穏やかだった。
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
ドオォォォォン!!! ドオォォォォン!!!
連続する爆音が森を切り裂く。
熱風が吹き荒れ、オランジェットの身体が宙に舞った。
視界が白に染まる。
――そして。
煙の向こうに、車椅子に乗ったプラガの姿があった。
その背後には、構えを取るメガチップスの面々。
彼らの影が、ゆっくりと煙の中から浮かび上がる。
――ブゥゥゥゥゥン……ッ!!
重低音と共に、空気が震える。
煙を裂いて、閃光が走った。
メガチップスの一人、クリスピーが両手持ちのハンマーを振り下ろして、
迫る枝を粉砕した。
バッッッキィィィン!!
木片が弾け、砕け散る。
続いて、オールドファッションがランスで、うねりながら走る木の根を次々と突き刺しては、捻りを加えて吹き飛ばしていく。
『良く頑張ったガキ!下がれ!!』
プラガが車椅子で前進する。
腕を上げると、車椅子の側面が変形し、砲口が展開した。
『目標――でっけぇキノコだ』
両目に光が宿る。
『メガチップス砲発射!!!』
ドガァァァァァァンッッ!!!!
咆哮が地面を貫き、根の群れをまとめて吹き飛ばした。
爆風に煽られた胞子が一瞬で蒸発する。
数十人のメガチップスが総攻撃を仕掛けた。
ズガガガガガガガガッ!!
森が悲鳴を上げるように揺れた。
巨大キノコの傘が再び脈打ち、胞子を噴き出す。
『くっ、まだ来るか……!』
プラガが巨大キノコに向けて指を突き出す。
『メガチップス砲出力増加!!!発射!!!』
轟音。
地面の下から立ち上る炎の柱が、森を飲み込む。
真っ白だった菌糸が、一瞬で赤く焦げた。
オランジェットは爆風に煽られながら、目を細めた。
『よぉ、ガキ、派手にやってくれてんじゃねぇか!』
『……プラガさん!来てくれたんですね!』
プラガはにやりと笑った。
『ガキが戦ってるんだ、手を貸すのが仲間ってもんだ』
『仲間…』
その背後で、炎が森を照らし出す。
暴れ狂っていた木々が、次々と倒れていく。
炎の中で、巨大なキノコがゆっくりと動く。
白かった傘は黒く焦げ、裂け目から光る菌糸が脈打っている。
まるで心臓の鼓動のように。
『まだ生きてるのか……!?』
オランジェットが息を呑む。
地面が爆ぜ、無数の菌糸が一斉に地上へ飛び出した。
まるで白い蛇の群れ。
その一本一本が木々を貫き、空を突き破る勢いで暴れ回る。
「来るぞッ!!!」
キノコの傘が震え――光を放った。
ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
音が消える。空気が歪む。
放たれた胞子の波が、衝撃波のように広がった。
『ぐあっ……!!』
メガチップスの仲間達が吹き飛び、木片の山に次々と叩きつけられる。
オランジェットが駆け寄ろうとするが、足元の根が絡みついた。
『ガキ!邪魔だ!下がれ!!』
プラガの声が飛ぶ。
備えつけられたタンクのバルブをゆっくりと開放する。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
車椅子の砲口が再び光る。
『これで終わりだ!メガチップス砲・オーバーバースト!!!』
ドォォォォォン!!!
地響きと共に、閃光がキノコの胴を貫いた。
白い胞子が弾け飛び、炎がそれを包み込む。
だが――
『嘘だろ……! まだ……!』
バッサァッ!!
キノコの傘が、再び持ち上がった。
裂け目の中で、無数の菌糸がうねうねと蠢めく。
ぞわっ――と、空気が震えた。
傘から飛び出した胞子が空を覆い、空間そのものが白く染まっていく。
『こいつ……本気を出したってのか!』
『お兄ちゃん!』
『クラフティ!来るな!』
巨大な白いキノコが、大気を震わせる咆哮のような振動音を放つ。
地面が波打ち、木々が一斉にざわめいた。
ギャキィイイイ!!!!
目を覚ましたカヴァルッチが、雄叫びと共に跳躍する。
穴の開いた巨大キノコの胴体に食らいつき、
そのまま、力まかせに――食いちぎった。
ブチィッ!!!
弾けるような音と共に、胞子が舞う。
カヴァルッチは地面に着地し、口の中の大きな欠片を「ペッ!」と吐き出した。
ズズズズズ――
巨大なキノコがぐらりと傾く。
倒れゆくその影が、禁足地の大地を覆う。
ズドォオオオン!!!!
引きちぎられた巨体が、叩きつけられるように地を打った。
轟音と共に、地面が大きく揺れる。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
勝利の瞬間は、あっけないほどだった。
だが、胸の奥から湧き上がる熱は止められない。
メガチップスたちは拳を掲げ、空に向かって吠えた。
キノコが倒れると、禁足地の木々も静まり返る。
暴れていた枝も、まるで息を止めたように凪いだ。
それでも、ここは禁足地。
彼らは互いに合図を交わし、足音を殺して出口を目指す。
風が炎を煽り、倒れた巨大キノコに火が移った。
瞬く間に燃え上がり、炎の柱が空を焼く。
轟音が森を震わせ、
やがて――すべてが静かになった。
森が、沈黙した。
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