ETに出会えるアパートはここですか?

ume-gummy

文字の大きさ
27 / 37

世界は俺を置いて進んでしまう・2

しおりを挟む
 自分は結構図太いな。と、星來は思った。
 あれから、ベッドに寄りかかって床で眠ってしまい、気付いたら夜明けだった。
 
 その時は既に避難警報は解除されていたものの、特に新しい情報が無いらしく、テレビも、ネットも同じ話を繰り返し放送している。
 スマホを見ると学校から『子供たちはみんな元気にしています。今日の修学旅行は予定通り行います』と言う内容のメールが来ていて、星來は安心した。

 今日は昨日と打って変わって良い天気だ。
 今朝の朝焼けは異様に赤かったのに。
 前に「朝焼けは雨の前触れ」と聞いた事があったから雨が降るかと思っていたのに、そんな事は無かった。

 昨日は出来なかった洗濯を早々に済ませ、昨日作ったもので朝食を済ませる。
 やっぱり一人だと寂しい。
 
 しかし、流石に昨日は作り置きを作りすぎたと、星來は反省していた。
 今朝、改めて冷蔵庫の中を見たら、タッパーでパンパンだったのだ。
 そこでふと閃いて、金田にも分けようと、少しづつ取ってタッパーに詰め直した。
 
 エプロンを外して外へ出ると、虎之助が駐車場に止まっている車の上で日向ぼっこをしているのを見つけた。
 そこで「おはようございます」と声を掛けると、彼は辺りをぐるっと見回してから喋り始めた。
 
「虎之助さん、昨日は大丈夫でしたか?」
「ああ、オレは大丈夫だが、老人にはキツイな」
「佐々木さん、何かありました?」
「昨夜なかなか眠れなくてな、まだ横になってる。何かあった時は頼むな」
「分かりました」
 そんな事を話していると、声が聞こえたのか、金田がドアを開けて出て来た。
「二人共、ちょっと良いかな。昨日の事で、U&Eから大事な話があるそうなんだ」

 金田に呼ばれて、久しぶりに部屋へお邪魔すると、玄関の様子が変わっていた。
 下駄箱に考紀の身長位の金属の棒のが2、3本立てかけてあり、不思議な色合いの布の服が、前は無かったポールハンガーに引っかかっている。
 プロヴァンス柄の壁紙が可愛い台所にも、明らかに護身用だと思われる物がいくつも置いてあった。
 
 
 作り置きを渡してから金田の部屋へ入ると、モニターに老齢の男性が映っていた。
 ライブ映像らしく、彼は星來を見るとにこやかに笑う。
 金田に促されて、星來と虎之助はソファへ座った。
 
「博士、お待たせしました。管理人さん、こちらU&Eのエイベル・シアーズ博士だ」
(リヒトさんに似てる……、あっ!)
 そこで、星來はリヒトの外見は、彼の息子を真似ていると聞いたのを思い出した。
 似ていて当然である。
 
「皆さんおはようございます。星來さん、初めまして。そしてトランシルバニア・イル・トランディージョ君、元気そうで何より」
 博士は言語研究者とあって、日本語がペラペラだった。
 あと虎之助の本名が長すぎる。
 
「おはようございます」
「ふん、早く俺の名前を言えるようになれ。発音が違うぞ、気に食わん」
「あ、あの、羽根田 星來です。父と母がお世話になっています」
 ふん、と鼻を鳴らしてテーブルへ乗る虎之助を横目に、星來は深々と頭を下げた。
 
「こちらこそ、彼らはもう引退しているのに、引っ張り出して悪かったね」
「いえ、二人共喜び勇んで出掛けたので大丈夫です。そんな事より、昨日何があったんですよね。皆は無事なんですか?」
 星來は気が急いで、聞きたい事を聞いてしまう。
 それを金田も、虎之助も止めなかった。

「ああ、皆は無事だよ。昨日のは心配をかけてすまなかったね。星來さんにはその件で協力してもらわないといけないので、ちゃんと話します」

 昨日の騒ぎについて、博士は星來はにも分かるように説明してくれた。
 発端は先日の鹿と一緒にいた、クランカ星から来た二人なのだそう。

 二人はクランカ星の有力者の息子で、彬たちに追われていた時は地球へ無断で遊びに来て一度捕まったが、監視の隙を突いて逃げていたのだと言う。
 あの後、再び彼らを捕まえたは良いものの、有力者の息子と分かったので、流石に一般人と同じに送り返す事ができなかった。
 そこで、クランカ星に連絡を取ったところ、現政権反対派のクーデターが起きて親が失墜、引き取りを拒否されたそうだ。
 
 そこから彼らが『フェザーガーデン』に住む、住まないの話に繋がる。
 以前はU&Eにて、地球に住む為の教育を施していた後『フェザーガーデン』へ住まわせたいと言っていた。
 
 それが数日前、彼らの親が反対派を駆逐して政権を取り戻したと言うのだ。
 こちら側としては親が彼らを迎えに来るだろうと準備していたのだが、実際に来たのは反対派で、親の名を騙って二人の引き渡しを要求してきた。
 
 しかし、二人が確認すると、それが反対派だと直ぐに分かった。
 ゴタゴタに巻き込まれたくない地球側が、確認が取れるまで彼らは引き渡せない、とやんわり拒否すると、向こうは正体がバレたのが分かったのだろう。
 有無を言わさず攻撃を仕掛けてきた。
 その時、衛星をいくつか破壊され、通信関係などで混乱が起きたそうだ。
 
 そこに追いかけて来たクランカ星の現政権が追いつき、一触即発になった。
 このままでは地球周辺が紛争地になってしまう、と考えた地球側は『訪問者』と一緒に、クランカ星人たちと話し合いをする事にしたと言う。
 クランカ星人は力こそ正義なところがある。
 力で勝る他の星の者が話し合いの場にいれば、大人しく話を聞いてもらえると思ったのだ。

 結果、有力者の息子二人がいた事もあって、現政権側とは直ぐに話が出来た。
 
 しかし反対派の一部は最後まで反発、最後は内輪揉めの末に自爆してしまった。
 あの光はその時のものだったらしい。
 
 
 知らない星の見た事もない人々の事だが、彼らの最後の光を見たと知って、星來はとても怖くなった。
 星來が両腕で自身の身体をかき抱くようにしていると、顔を覗き込んできた虎之助が心配そうに「お前顔色が悪いぞ、大丈夫か?」と聞いてきたが、星來は返事も出来ない。
 暫くすると「星來さん」と、博士が優しい声色で話しかけて来た。
 
「星來さん、大丈夫。昨日の事は貴方とは一切関係のない事です。気に病まなくていいのですよ」
 ゆっくりモニターを見上げると、博士が穏やかな笑顔でそう言っている。
 どこかリヒトに似た表情を見て、星來は少し安心した。
 
「すみません、取り乱して。俺に用があったんですよね」
 星來が気丈に振舞うと、隣に座っている金田が労うように背を擦ってくれる。
 博士も心配そうに手を伸ばしていたが、届かないと気付いたのだろう、居住まいを正して話を続けた。
 
「ええ。その前に、今回の事件を世界へ公表する事になってね。それと同時に『訪問者』の存在も知ってもらう予定だと国際事務局から連絡があったんだ」
「早いですね」
 金田も知らなかったのだろう、驚いて目を見開いていた。
 そして、国際事務局と言うのが、地球が宇宙世界と交渉する機関であると星來に補足してくれる。
 こんなの、世界が混乱するとしか思えないと考えていると、博士が画面に写真を映し出した。
 
「実はかなりの数の映像が流出していてね、これなんか交渉に向かう途中だろうね。エリス星の乗り物がしっかり写っているし、こっちなんかは飛行機から撮ったのだろうね、遠くにリヒトまで写っているよ。攻めて来た方など天体望遠鏡でも見えたから、何日も前から騒ぎになっていたし、今回は衛星も破壊されている。もうオカルト現象でごまかす事ができないんだ。世界は既に混乱しているんだよ。地球側も今なら『訪問者』を功労者として紹介できるチャンスだと思っているらしい」
 そこで博士はため息をひとつ吐いた。
 
「しかしだ、星來さん。公表されればそちらに『訪問者』が住んでいるのを嗅ぎつけて行く者がいるかもしれない。私たちも極力気を付けるが、貴方にも迷惑を掛ける事になってしまう事もあるでしょう。しかし、彼らは貴方を信頼している。どうか、投げ出さずに協力して欲しい」
「もちろんです……でも、俺みたいな一般人がどうしたらいいんでしょうか」
「相手にしないで、金田か宮島か黒永に連絡を。後は今まで通りでお願いします。貴方には彼らの心を守って欲しい」
「心を……」
 
 どうしたらそれができるのだろうか。
 不安になっていると、虎之助が擦り寄って来た。
 言うと怒るので言わないが、こういう時の彼は本当の猫のように見える。
 きっと彼も不安なのだろうと思い、星來は先程金田がしてくれたように彼の背中を擦ってやった。
 
 
 

 ・・・・・・・
 
 11/20 読みにくいので少し直しました。
           
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

処理中です...