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おかえり *
しおりを挟む「考紀、楓くんお帰りなさい」
星來とリヒトが行くと、丁度、修学旅行から戻って来たバスが学校へ到着して、子供が次々と降りて来るところだった。
一度クラスごとに集まり、解散して校門から出てきたところで星來は二人に声を掛ける。
「ただいま、疲れたぁ」
「僕も。早く帰ろう」
考紀も、楓も慣れない環境での旅行、しかもミサイルがどうのと言う騒動もあって余程疲れたのだろう。
いつもと違って肩が落ちて、既に眠そうだ。
「今日は家で一緒にご飯だよ。さっき連絡があって、彬さんは暫く帰って来られないかもしれないって」
「そうなんですか」
「明日は代休なんだから、泊まって行けば良いじゃん」
「リヒトさんが良いって言うならいいよ」
「別に構わないよ」
「やった」
星來は二人のお土産分増えた荷物を持ってやり、リヒトは他から分からないように、サイコキネシスで二人の背負っている荷物を持ち上げた。
アパートに戻ると、楓とリヒトはいったん自分の部屋へ戻ったので、星來と考紀は二人きりになる。
「洗濯物出してね。それで、旅行は楽しかった?」
「うん。世界遺産のところに白い馬がいてさ、あれ神馬って言うんだって! 夜にみんなで遅くまでお喋りしてさ、ご飯も美味しかったよ! そうそう、階段のところに猫がいてさ、楓と俺だけちょっとさわれた。お土産屋さんに初めて子供だけで入ったよ」
考紀が思い付いた事を順番に話しているのを星來は微笑ましく聞いた。
楽しそうで良かった、考紀が少し大人びて見える……と思っていると、不意に考紀が声を落とした。
「ところでさ、一昨日のって、やっぱり『訪問者』関係?」
「あー……」
「俺、見ちゃったんだよね、いっぱいUFOが飛んでるの。向こうは晴れてたからさ、それはもうばっちり。みんなも見て驚いてた」
「考紀は黙っていてね」
「分かってるって」
そう言って考紀は部屋へ戻ると、荷物の整理を始めた。
それが終わると、お土産を持って台所にやって来る。
「これ、お菓子で、俺と楓から。後でみんなで食べるやつ。これは俺と星來の。で、これはあげる」
「ありがとう」
小さな包みをもらった星來は、早速開けてみる。
中身はピンク色のミックスビーンズのキーホルダーだ。
「世界遺産を見に行ってなぜこのチョイス?」と、星來は首を傾げる。
「それ、リヒトさんに見えない?」
「あ、なるほどね。可愛いかも。このプニプニ感も似てる」
二人でひとしきり笑ってから、星來はそれをスマホに付けた。
それは後でやってきたリヒトに見つかり、とても喜ばれたのは言うまでもない。
夕食は予定通りに、リヒトや楓と一緒に食べた。
作り置きもだいぶ出したのだが、まだ冷蔵庫の中にたくさん残っていて、それを見た考紀が「作り過ぎじゃない?」と、呆れていた。
その後、考紀と楓はお土産のお菓子も開けずに、早々に部屋へ引っ込んでしまった。
随分疲れていたようで、狭いベッドで並んで眠ってしまっているのが微笑ましい。
布団を整えてやって、ダイニングへ戻って来ると、リヒトは小さい音でテレビを観ていた。
「リヒトさんは、今夜どうしますか」
星來は椅子に座っているリヒトに近付き、子供たちに聞こえないように耳元で囁いた。
昨夜のような事は無理だが、せめて、もう少し一緒にいたい。
恋人なんかいらないと思っていたのに、一度そう言う想いに捕らわれてしまえば歯止めが効かなかった。
彼は、彼の言う「食べる」と言う行為以外は、いつもとほとんど変わらない態度で接してくれる。
それはとてもありがたいのに、星來は少し寂しく感じてしまった。
これでは星來の方が、リヒトに恋焦がれているみたいで少し恥ずかしい。
でも、少しくらいなら、二人きりの時なら、子供たちに迷惑が掛からないくらいなら、構わないだろうか。
「あ……」
自己本位な思いに気付いて、星來は声を掛けた事を後悔した。
「いえ、やっぱりいいです……」
「やっぱりって何を? どうしたかったんですか?」
振り向いたリヒトは笑っていた。
揶揄われていると分かって、星來はムッとする。
「帰ります?」
「まさか」
突然、横抱きにされて、部屋へ運ばれた。
ベッドへ下ろされると、ドアが時間差で閉まる。
「チャンスはふいにしたくないです」
今日のリヒトは人間の姿のままだ。
星來が「まさかこの姿でするとか?」と、ドキドキしていると、彼の整った顔が近付いて唇を合わせた。
今度のリヒトのキスは生易しいものではなかった。
昨日の拙いものとは全く違い、舌とは思えない体積のもので口内を蹂躙される。
最初は口の中に溢れる程の量が入ってきて窒息するかと思ったが、意外や鼻から息が出来るようになっていて、慣れると喉奥を味わうようにうねっているのを感じる事ができた。
でも、舌を摘ままれると、昨夜のスライムの中での様子思い出して星來は直ぐにイキそうになってしまった。
服を汚してしまうと思い下半身へ手を伸ばすと、すでにGパンは膝まで下げられていて、下半身はスライムに包まれている。
片足をGパンから抜こうと足を上げると、下半身を包んでいた一部が、むにゅっと音を立てて中へ入り込んできた。
顔を動かす事ができないので見えないが、リヒトは顔以外スライムになっているようだ。
気付くと、いつの間にかシャツも捲られて胸にスライムが吸い付いている感じがする。
乳首を強く吸引されるのと、中のしこりを同時に押された瞬間、星來は中でイって、激しく痙攣した。
「……星來さん」
星來の呼吸が落ち着くと、リヒトは身体を離してベッドの端に座った。
驚いた事に、彼はもう服も着て元通りだ。
そして星來の服も整えると、優しく髪や顔を撫でてくれた。
「また受け入れてくれてありがとうございます。とっても美味しかった……。本当はボクも泊まりたいんですけれど、用事があるので今日は帰りますね。明日は朝からいないので、楓をお願いしてもいいですか」
「あ……はい」
疲弊して眠くなっている星來へリヒトは微笑むと、星來の好きなぺったりしたキスを肌のあちこちにしてくれる。
そして最後に唇へ。
じっくり時間をかけて唇を合わせてもらって、星來はとても幸せな気分になった。
「おやすみなさい、星來さん」
リヒトがそう言うと、とたんに身体が重くなる。
それから星來は朝になるまで目覚める事なく、夢も見ないで眠った。
*******
「……な、星來」
「ん……、あ! いま何時?」
「9時。俺たち朝ごはん勝手に食べたから。ちょっと公園行って来る」
「うん、行ってらっしゃい」
考紀は手を振ると、サッカーボールを手にして楓と出掛けて行った。
「うーん」
星來は伸びをした。
昨夜は本当によく眠れた。
朝起きて、隣にリヒトがいないのは寂しいけれど仕方がない、星來も自分のやる事があるのだし。
服のまま眠っていたのに気付いた星來は、サッとシャワーを浴びてから、考紀が出した修学旅行中の洗濯物を洗った。
『今日の夜、世界標準時の0時頃に、国際事務局から世界に向けて重大発表があると通達がありました』
そんな言葉がテレビから聞こえて来たのは昼のニュースだった。
国際事務局と言うのは聞き覚えがある。
以前、シアーズ博士と話した時に出て来た、『訪問者』との交渉を担っている部署がある国際的な機関だ。
一緒に昼食を取っていた考紀が、「国際事務局って何?」と質問したのに楓が詳しく回答しているのが聞こえるが、星來の頭には全く入って来ない。
(もしかして今夜、この間の事について発表があるのかな)
世界が変わってしまう予感に、星來はごくりと唾を飲んだ。
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