【本編完結】僕は魔王になりたくない、好きな人と仲良く暮らしたいだけ。

ume-gummy

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君を探して

リトス姫

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 ここへ来て3日。
 実際は太陽も見られないので、昼なのか夜なのか、何日経ったのかもよく分からないのだが、食事の回数からしてそのくらいだと思う。

 最近分かったのだが、初日に会った女性たちは、ここにいる首輪を付けた人物の世話をするためにいると言う事だ。
 彼女たちは食事の世話から着替え等、生活の全てをやってくれるので、ここでの生活で困る事はない。
 逆に、どうしてこんなに丁寧に扱われるのか、そちらの方が不思議なくらいだ。
 今のところ無理難題を押し付けられると言った事もないし、本当にここは何なのだろう。
 ハーレムとは名ばかりの貴族向けの座敷牢のような場所なのだろうか。

 首輪も何度か壊そうとしてみたが、無理だった。
 見た目はよくある物なのだが、魔石の部分に仕掛けがしてあるらしく、少しでも魔力が漏れるとそれが吸い取ってしまうのだ。
 しかも頑丈な革製で、繋ぎ目部分にも術が掛けられていた。
 
 どうしたらここからでられるかと思いながら、今日も壁の古代文字と向き合う。
 やはりこの文字を地道に解読するしかないのか。
 ガリエナはと言うと、とっくに飽きてしまって何処かへ行っている。
 今日は首輪を付けた人物を探すと言っていた。

 それにしてもこの文字、学園で習ったものとは全く違う。
 太陽、人、馬、鳥、なんかは分かる。
 基本はもうあまり使われていないディミトラ語に似ているので、それらと組み合わせで何て読むのか考えるのがクイズみたいで結構面白い。
 暇つぶしには持って来いだ。

「ジルヴァーノ」
「ひゃあ! 」

 突然、声を掛けられてびっくりした。
 この首輪を付けられてから人の気配を察するのも鈍くなっている気がする。
 まぁ、ここでジルヴァーノなんて僕を呼ぶのはガリエナしかいないのだが。

「何だよ、びっくりさせるな」
 ドキドキする心臓を押さえて振り向くと、ガリエナが「ごめん」と言った。
 こいつもこれでいて少し気が弱くなっているようだ。
 前ならこういう時は必ず追加で僕を揶揄ってきたのに。

「で、何だ?」
「あのさ、ここにこの国ディミトラ王国の姫がいるらしい。リトス姫って、お前を追いかけ回してた姫じゃない? 」
「ここに? 会えるのか? 」
「会いたいなら協力するよ、こっちだ」

 僕は頷いてガリエナの後に付いて行く。
 あんなに僕に執着していた姫だ、僕が会いたいと言ったら会ってくれるだろう……だが、問題はこの姿。
 いきなり女装の僕に会ったらびっくりしてしまわないだろうか?
 クールな魔術師の僕を格好良いと言ってくれていたのに。
 まぁ、好かれたい訳じゃないからいいのだが。

 
 このハーレム、中は自由に動けるのだが、居住区は身分・女性・男性に分かれていて、王族の姫は女性側の一番奥の大きな部屋にいた。
 入り口に侍女が二人立っていて実に分かりやすい。
 その二人にガリエナが近付いて行った。

「初めまして。私はベルトウィッチ子爵の三男のガリエナと申します。こちらにリトス姫がおられると聞いて妹と挨拶に参りました」
 良い笑顔を浮かべたガリエナは、侍女たちに向かって丁寧に挨拶をしている。
 その効果は抜群なようで、侍女たちは上気した顔でガリエナを見上げていた。
 しかし、そんな風でも王族を任された侍女たちだ。
 流石に男性は入れられないと言う。

「では、妹だけでも宜しいですか? 」
 おいおい、いくら薄絹を被って来ていても、僕は女性に見えないだろう?
 流石に無理だろうと思って引き下がろうとすると、ガリエナは二人の肩に手を回してコソコソ話し出した。

「……ええ、構いませんよ。ソフィア、10分だけなら構わないそうだ」
 そう言って、ガリエナは自分の身体を侍女たちに触らせ始めた。
 ええ、って、そう言う……ふ~ん。

 僕は姫の部屋のドアをノックして、返事が聞こえたと同時に中へ滑り込んだ。
 

 
 「貴方どなたかしら」

 部屋に入った僕を見てもリトス姫は分からなかったらようだ。
 どこかで見た事のある老齢の侍女が僕に立ち塞がる。
 仕方なく、僕は被っていた薄絹を捲って顔が見えるようにした。

「まぁ! 貴方、もしかしてジルヴァーノ様? 姫さま……」
「やだ、久しぶり。面白い格好してるじゃない。でも私を助けに来たとかじゃないわよね。あれだけ私を拒否したんだから」

 姫はソファーに寝そべったままこっちに顔を向けた。
 体調が悪いのか、顔色が悪い。
「あなたも捕まっちゃったのね。可哀そうに。何で来たのだか知らないけれど、もうここからは出られないわよ」
 姫は面白そうに笑う。
 もしかしたらフィオが攫われた事を知らないのだろうか。

「姫、そちらに移転の魔法陣を扱える魔術師がいますよね」
「そう言えば研究している人がいたわね、それがどうしたの? 」
「僕の婚約者がその魔術師に攫われました。僕はそれを追ってこの国までやって来たのです」
「そう、それで私が黒幕だと思ったって訳ね」
 姫は面白そうに笑った。
 今の話のどこが面白かったのかと腹立たしくなり睨みつけたが、姫は全然平気だ。

「大体ね、あなたが私との結婚を断ったからいけないのよ。あなたとわたしが結婚して、この国を出られれば私はこんな所に放り込まれなかった。婚約者も巻き込まれたりしなかったはずよ。もし、わたしが知っていたとしても、ここじゃあ外と連絡を取る事さえできないわ」
 そこでゆっくり起き上がった姫は、侍女が持って来たお茶に口を付けた。
 僕はそこで彼女の首にも首輪がある事に気が付く。

「わたしね、この国にいたらこうなる事が分かっていたの。だから、手っ取り早く国外の誰かと結婚して国を出たかったのよ。別にあなたが好きって訳じゃなかったんだからね」
「は……? 」
 あんなに好き好き言われていたのに、本当は好きじゃなかったと言われて衝撃を受ける。
 監禁までしようとしたのは何だったのか?
 しかし、ここに閉じ込められる未来が分かっていたなら、それも頷けると言うものだ。

「ならば、理由を話してくれれば良かったのです。他の釣り合う男を紹介する事も出来たのですよ」
 そう言うと、姫は薄く笑いを浮かべて首を横に振った。
「事情を知ってしまったら、相手もここに入れられてしまうから……」
 それは姫なりの優しさだったのだろうか。
 
「そうですか、お互い仕方なかったのですね。ところでここはどう言った施設なのですか? 古代遺跡の中のようですが、どうして僕たちは閉じ込められているのですか? 」
 質問すると、姫はちらっとこっちを見た。
「言いたくないのでしたら」
「そのうち分かると思うけれど、教えてあげてもいいわ。ここは”魔力供給施設”よ」
 
 聞きなれない名称に僕は首を傾げた。
 
 

 
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