気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy

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転生?

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 ・・・俺は乙女ゲームの世界に転生したみたいだ。
 回りにいる奴らみんな名前を聞いた事がある。
 一番びっくりなのはさっきまで池上 蓮いけがみ れんと言う、日本の高校生だった俺が、メイン攻略キャラの王子ってところなんだが。

 ――アルフォンス・テオ・グーテベルク
 俺が転生したのは金髪碧眼のグーテベルク王国の第三王子。
 今日は自分の18歳の誕生日パーティーらしい。

 タイトルがよく思い出せないが、前に妹が目の前でずっとやってたゲームなので内容に詳しくなってしまった。
 だが俺は男に興味はない。
 俺が好きなのはエリーゼ・シュミットと言う16歳の悪役令嬢の子で、美人で頭の回転が速くて、スタイルが良くて、いちいち反応が可愛いツンデレちゃんなのだ。
 そうそう可哀想に最後はこういう場所で王子や主人公に断罪されちゃうんだ。
 ・・・って、これそのイベントの寸前じゃないのか?
 いくら自分の誕生日パーティーだからって何しようとしてるんだよ。


 俺はきょろきょろと回りを見回した。
 まだそのイベントは始まっていないようだ。
 俺の隣にはゲームの主人公、子爵の娘キャロル(デフォルト名)。
 ゲームと同じ、ピンクっぽいストレートの金髪に大きな若草色の瞳。
 彼女は妹が操作していたイメージでは意外と腹黒いのだ。
 それに可愛い楚系なんだが、子供っぽいし体が薄すぎて俺の好みではない。
 そしてわざとなのか、仕様なのか、妹のせいなのか発言がいちいちアホっぽいのだ。
 俺は彼女から目を離して、悪役令嬢のエリーゼを見た。

 はぁ、可愛い。
 なんだろう、あの艶々プリプリの唇は。
 ゆるいウェーブのかかった濃い紫色の髪も綺麗だな。
 瞳の色は澄んだ水色。
 まつげが重そうで、ちょっと目が伏せられてるのが仕様なのか。
 複雑に編まれてハーフアップにされた髪には白い花が散らされている。
 そして大きな胸が強調されたネイビーのドレス。
 マジか?あんなに可愛い娘が俺の婚約者なんて・・・

「アルフォンス様?どうかなさいましたか?
 私の事を憐れと思って下さるなら、どうかエリーゼ様を王宮から追放して下さい!」
 ・・・あ、そうだ。断罪イベントね。
 正直やりたくないなぁ~
 俺は今世のアルフォンスの記憶を覗いてみた。

 うん、アルフォンスと主人公の関係はそこまで深くない。
 せいぜいお手てを繋いだくらいだ。
 それなのに彼氏面するとか大丈夫か?アルフォンス。

 アルフォンスの記憶にある感じだと、キャロルは攻略キャラ全員とそんな関係なんじゃないの?
 それなのに、アルフォンスは自分が一番だと思い込んじゃってるのか?痛いな。

 俺は周りにいる奴らの顔を見た、
 皆こちらに注目している。

 ・・・ここでもし断罪とかして「主人公キャロルは俺の女!」みたいな顔をしたら俺かなり痛い奴だよね。
 公式の場で婚約破棄げきなんてバカな事をしたら、この後のアルフォンスの協力者も減って、立場もヤバくなっちゃうんじゃ?
 と言うか、断罪したらアルフォンスルート確定?
 そうしたらエリーゼは家名に泥を塗ったからって家から追い出されて、最終的に国外追放になっちゃうんだよなぁ。
 もう会えなくなっちゃう。

 うん、決めた。


 俺はスッと立ち上がると、できるだけ優しく微笑んでエリーゼの前に立った。
「エリーゼ、一曲踊っていただけますか?」
「・・・はい。」
 皆、俺の突然の行動に驚いている。
 主人公なんか目を見開いて固まっている。
 まぁ当然だな、今まで皆でエリーゼの悪口を散々言っていたんだろうから。



 身体が覚えているからダンスは余裕っぽい。
 マナーも覚えているし、ルールや他人の情報もアルフォンスの記憶を精査すれば出てくるし、とりあえずは困らないな。
 それより、俺の本体はどうなってしまったのだろう?
 死んだ記憶はないけれど。

「殿下、どうかいたしましたか?」
 エスコートしている間につい考え事をしていると、エリーゼが不思議そうにこちらを見てきた。
「いや、エリーゼがとても美しいから魅入ってしまったんだよ。」
 アルフォンスの記憶に寄せればこんな恥ずかしいセリフも、スラスラ出てくる。
 それに憧れのエリーゼと踊ってるよ!手も握って、身体も近づけてる!
 俺ちょっと興奮気味。
 初めてのダンスは何事もなく終了した。



「殿下、申し訳ないのですが、私からお話があります。」
 ダンスが終わると、俺はエリーゼに人気の無いバルコニーへ導かれた。

 そこには主人公とエリーゼの父の侍従のイーヴォ・グリュンが待っていた。
 まさかそこにキャロルがいるとは思っていなかったので、俺は何か録でもない話をされるのかと思って、つい身構えてしまう。
 三人は俺に挨拶をすると神妙な面持ちでソファに座るように促して来たので、俺は三人の異様な雰囲気に怯えながら、勧められるままにソファへ座った。

「殿下、先ほどはどうしてエリーゼの婚約破棄をされなかったのですか?」
 あれ?キャロルの話し方がいつもと違う。凄く怖い。
「殿下はエリーゼをとても嫌っておいででしたよね。
 それなのにエリーゼとご結婚されるのですか?」
 怖。
 そうだよな、キャロルは俺が自分を好きだと思ってるんだもんな。
 俺に裏切られたんだもんな。
「えっと・・・今まではそう思ってたんだけれど、気が変わったというか・・・」
 そうか、これは修羅場ってやつか?

「エリーゼ、やっぱり殿下にだけはちゃんと話して、協力してもらうべきだったわ。
 殿下は決められた婚約を覆す程、愚かな方ではなかったのよ。」
 キャロルなんか酷いけど、エリーゼと普通に話せるのか。
 なんだか仲良さげだし。
 すると、エリーゼとイーヴォが俺の前に跪いた。
「殿下、どうか私との婚約は無かった事にして下さい。
 私、どうしても殿下と結婚は出来ないのです。」
「黙っていて申し訳ありません。
 以前より私達は愛し合っておりました。
 罰はいくらでも受ける覚悟はできています。
 でも、エリーゼは悪くありません。全ては私が」
「いいえ!私がいけないのです!もっと早くお伝えしていれば、この様な計画を立てずに済んだのに!」
 エリーゼとイーヴォがお互いを庇い合う。
「そう言う事ね。」
 なるほど。皆の前でわざと婚約破棄させ、手っ取り早く国外追放にでもなって、その後一緒になるつもりだったのか。
 こんな計画を練るなんて、よっぽど追い詰められてたんだろうな。

「本当に言ってくれれば良かったのに。
 お前もグルだったんだ。」
「ご、ごめんなさい!エリーゼが可哀想で、協力したかったんです。」
「お前、もっとアホかと思ってたんだけれど、それも演技か。やるな。」
 主人公は可愛らしく頬を膨らませる。
「酷い!」
 いつものキャロルに戻ったのを見て、俺は声を上げて笑った。
 そして三人を許して、エリーゼとの婚約は正式に白紙へ戻すと約束した。


 三人とは打ち解けられて嬉しいけれど、そもそも俺はなんでここに転生したんだろうか?


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