気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy

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日常?

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 俺の異変に早いうちに気付いたのは、幼馴染で俺の護衛をしているベルンハルトと侍従のエミルだった。
 私呼びが俺になったのが切っ掛けだ。
 『私』と自分を呼ぶのが恥ずかしいので、『俺』は開き直って「ベルみたいな強い男に憧れてるんだよ。」と、そのまま俺で通した。
 ベルンハルトは満更でもないと言う感じだったから良かったけれど、エミルは品がないと嫌がった。
 その他はアルフォンスの記憶に頼れば不便もないし、皆からは「最近性格が丸くなったんじゃない?」くらいで済まされていた。
 アルフォンスって王子と言っても王位継承順位が低いので、余り王子らしさは求められないし、周りから期待もされていないので楽なもんだ。
だから、もう自由に生きても良いかな?

「ふん!ふん!」
「お前、何やってんだ?」
「見ての通り、腹筋を鍛えてるんだよ!」
「へぇ。」
いつもは表情を変えないベルンハルトが怪訝な顔をした。
 俺はまず、アルフォンスの身体を鍛える事にした。
 この身体は綺麗だけれど、すぐに転びそうになるのだ。
 王子の体幹が弱すぎる。体力もないし走るのも遅い。
 もし何かあって、アルフォンスの中身がだとバレた時、自分の身体くらい守れるようになりたいしな。

「ベル、今度剣の使い方を教えてよ!」
 今度は背筋を鍛え始めた。
 前の俺は勉強はともかく運動神経だけは良かったのだ。
 バスケ部に所属していたし、運動は続けたい。
「いいけど、怪我すんなよ。俺の首が飛ぶ。」
「善所する。」
「全く、前は少し動くのも嫌いだったくせに、どうしたんだよ。」
「あれだよ、キャロルの。」

 俺は身体を鍛える事に関して、キャロル(デフォルト名のままだった)を言い訳に使っている。
 あの後キャロルは王宮騎士と婚約したのだ。
 やっぱりアルフォンスルートではなかった。
 それは別に良いのだが、その王宮騎士の身体の良い事。
 ベルンハルトも良い身体をしているし、俺は「格好良い騎士に憧れて身体を鍛えることにした。」と言った。



 ベルンハルトは6歳の時に通い始めた、王立学園で出会った、所謂ご学友というやつだ。
 子爵の次男という下級貴族出身ながら、赤髪に金色の瞳の男らしい美丈夫で、気さくで女にも男にもモテる。
 学園を15歳で卒業して、俺は兄を支える為に専門の教師に付き、ベルンハルトは騎士の養成学校へと道は別れたが、手紙などのやり取りは続けていた。
 そして三年の学校生活が終わり、ベルンハルトが学校を卒業した時にアルフォンスが直々に護衛になって欲しいと頼んだのだ。

 対して侍従のエミルもベルンハルトと同じ6歳から同じ学園に通った仲。
 エミルは沢山子供のいる商家の息子だったが、子供の頃から優秀で、特待生として平民から学園に入った異色の存在だ。
 その頃、第三王子という微妙な立場のアルフォンスはなかなか側に置く者の候補が見つからなかった為、優秀なエミルをスカウトした。
 それからずっと俺に付いてくれて、身の回りから仕事のフォローまでなんでもしてくれる。
 さりげなく俺をフォローしてくれる二人がいなかったら、アルフォンスになった時に何も判らなくて困ってしまっただろうな。

 二人とはとにかく気安い仲だ。
 自分に傅く者ばかりに囲まれているアルフォンスは、気安く話せる者を近くに置きたかったのだろう。
 もちろんもこいつの事は気に入っている。

 そういえば、彼らも攻略対象だったな。
 二人ともキャロルに好意を持っていなかったが、攻略されていなかったのかな?

 俺は仕上げに腕立て伏せをして、汗を吸った服を脱いだ。
「全く、こんなに汗をかいて。」
 ベルンハルトが俺の背中の汗をタオルでそっと拭ってくれる。
「お前は肌が綺麗だし、これで少し筋肉が付いて見た目が良くなったら、女共が放って置かないな。」
 肩甲骨を撫で上げる動きがくすぐったい。
 俺は声を上げて笑った。

「そうしたら、今度こそ相手を離さないよ。」
「ああ、羨ましいな。」
 ベルンハルトは俺の項に軽くキスをして離れた。
 この世界の男ってスキンシップが凄いなぁ。
 記憶を探ってみたら、アルフォンスの時もスキンシップをしてくる奴が結構いたから、これが普通なんだろう。
「シャワーを浴びて来い。風邪引くなよ。」
「ああ、わかった。」
 俺は洗濯物を侍女に渡して、バスルームへ向かった。



 お風呂に入って部屋へ戻ると、机の上に手紙の束が乗っていた。
 エミルが事前に仕分けてくれているのに、ざっと見て20通ほどある。
 殆どが無視できないお見合いの手紙でうんざりしたが、仕方がないので椅子に座って中を確認し始めた。
 その中に、エリーゼの父からのものがあった。

 エリーゼは元々、養子になってシュミット家を継ぐ予定だった相手との結婚なので、そのまま家へ入るそうだ。
 それよりも、これから俺がお見合い攻めになる事を心配していた。
 そして俺に直に会ってエリーゼの事を謝罪したいと言う。
 一応、俺の方から破棄したんだから気にしなくて良いのに、俺との婚約中から二人は思い合っていたのが判ったので、直に謝りたいとの事だった。
 俺は面倒だとは思ったが、エリーゼの父は父王の宰相をしている事もあるので、父王の顔を立てて会う事にした。


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