2 / 41
日常?
しおりを挟む俺の異変に早いうちに気付いたのは、幼馴染で俺の護衛をしているベルンハルトと侍従のエミルだった。
私呼びが俺になったのが切っ掛けだ。
『私』と自分を呼ぶのが恥ずかしいので、『俺』は開き直って「ベルみたいな強い男に憧れてるんだよ。」と、そのまま俺で通した。
ベルンハルトは満更でもないと言う感じだったから良かったけれど、エミルは品がないと嫌がった。
その他はアルフォンスの記憶に頼れば不便もないし、皆からは「最近性格が丸くなったんじゃない?」くらいで済まされていた。
アルフォンスって王子と言っても王位継承順位が低いので、余り王子らしさは求められないし、周りから期待もされていないので楽なもんだ。
だから、もう自由に生きても良いかな?
「ふん!ふん!」
「お前、何やってんだ?」
「見ての通り、腹筋を鍛えてるんだよ!」
「へぇ。」
いつもは表情を変えないベルンハルトが怪訝な顔をした。
俺はまず、俺の身体を鍛える事にした。
この身体は綺麗だけれど、すぐに転びそうになるのだ。
王子の体幹が弱すぎる。体力もないし走るのも遅い。
もし何かあって、アルフォンスの中身が俺だとバレた時、自分の身体くらい守れるようになりたいしな。
「ベル、今度剣の使い方を教えてよ!」
今度は背筋を鍛え始めた。
前の俺は勉強はともかく運動神経だけは良かったのだ。
バスケ部に所属していたし、運動は続けたい。
「いいけど、怪我すんなよ。俺の首が飛ぶ。」
「善所する。」
「全く、前は少し動くのも嫌いだったくせに、どうしたんだよ。」
「あれだよ、キャロルの。」
俺は身体を鍛える事に関して、キャロル(デフォルト名のままだった)を言い訳に使っている。
あの後キャロルは王宮騎士と婚約したのだ。
やっぱり俺ルートではなかった。
それは別に良いのだが、その王宮騎士の身体の良い事。
ベルンハルトも良い身体をしているし、俺は「格好良い騎士に憧れて身体を鍛えることにした。」と言った。
ベルンハルトは6歳の時に通い始めた、王立学園で出会った、所謂ご学友というやつだ。
子爵の次男という下級貴族出身ながら、赤髪に金色の瞳の男らしい美丈夫で、気さくで女にも男にもモテる。
学園を15歳で卒業して、俺は兄を支える為に専門の教師に付き、ベルンハルトは騎士の養成学校へと道は別れたが、手紙などのやり取りは続けていた。
そして三年の学校生活が終わり、ベルンハルトが学校を卒業した時にアルフォンスが直々に護衛になって欲しいと頼んだのだ。
対して侍従のエミルもベルンハルトと同じ6歳から同じ学園に通った仲。
エミルは沢山子供のいる商家の息子だったが、子供の頃から優秀で、特待生として平民から学園に入った異色の存在だ。
その頃、第三王子という微妙な立場の俺はなかなか側に置く者の候補が見つからなかった為、優秀なエミルをスカウトした。
それからずっと俺に付いてくれて、身の回りから仕事のフォローまでなんでもしてくれる。
さりげなく俺をフォローしてくれる二人がいなかったら、俺になった時に何も判らなくて困ってしまっただろうな。
二人とはとにかく気安い仲だ。
自分に傅く者ばかりに囲まれているアルフォンスは、気安く話せる者を近くに置きたかったのだろう。
もちろん俺もこいつの事は気に入っている。
そういえば、彼らも攻略対象だったな。
二人ともキャロルに好意を持っていなかったが、攻略されていなかったのかな?
俺は仕上げに腕立て伏せをして、汗を吸った服を脱いだ。
「全く、こんなに汗をかいて。」
ベルンハルトが俺の背中の汗をタオルでそっと拭ってくれる。
「お前は肌が綺麗だし、これで少し筋肉が付いて見た目が良くなったら、女共が放って置かないな。」
肩甲骨を撫で上げる動きがくすぐったい。
俺は声を上げて笑った。
「そうしたら、今度こそ相手を離さないよ。」
「ああ、羨ましいな。」
ベルンハルトは俺の項に軽くキスをして離れた。
この世界の男ってスキンシップが凄いなぁ。
記憶を探ってみたら、アルフォンスの時もスキンシップをしてくる奴が結構いたから、これが普通なんだろう。
「シャワーを浴びて来い。風邪引くなよ。」
「ああ、わかった。」
俺は洗濯物を侍女に渡して、バスルームへ向かった。
お風呂に入って部屋へ戻ると、机の上に手紙の束が乗っていた。
エミルが事前に仕分けてくれているのに、ざっと見て20通ほどある。
殆どが無視できないお見合いの手紙でうんざりしたが、仕方がないので椅子に座って中を確認し始めた。
その中に、エリーゼの父からのものがあった。
エリーゼは元々、養子になってシュミット家を継ぐ予定だった相手との結婚なので、そのまま家へ入るそうだ。
それよりも、これから俺がお見合い攻めになる事を心配していた。
そして俺に直に会ってエリーゼの事を謝罪したいと言う。
一応、俺の方から破棄したんだから気にしなくて良いのに、俺との婚約中から二人は思い合っていたのが判ったので、直に謝りたいとの事だった。
俺は面倒だとは思ったが、エリーゼの父は父王の宰相をしている事もあるので、父王の顔を立てて会う事にした。
27
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる