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十二話
しおりを挟む三人が店の奥へと姿を消し、店内にはグッドナイト一人を残して静寂が訪れていた。
何が起きているのか。
グッドナイトは頭の中を整理出来ずにいる。
エイミーは、昔からの知り合いだ。
ここ数年はオイルタウンに程近い寂れたネオン街でバーを営んでいる。
政府の動向や各地の情報の仕入れに長け、裏に生きる者達の間ではそれなりに名が通っていた。
グッドナイトが西の大地へ戻って来れたことも、彼女の協力無くしては叶わなかった事だ。
「まだそんな所にいるわけ!?」
奥からエイミーの怒鳴り声が聞こえる。
グッドナイトは慌てて立ち上がり、カウンターに入ると小走りで戸の奥へと急いだ。
中には食事をするための部屋があり、さほど大きくないダイニングテーブルに椅子が三脚置かれている。
入ってすぐ左手の壁にもたれるようにメロウが立ち、エイミーはまるで我が家のように椅子に座ってくつろいでいた。
ユキも腰掛けてはいるが、落ち着かない様子で目をキョロキョロさせている。
「坊やに任せると話がくどくなりそうだから、わたしから話すわね」
そんなエイミーの嫌味に、メロウはどうぞ、と言うように右手を前に出した。
「ほら、座って」
ユキの横の椅子に座るようアゴ先で促され、グッドナイトはゆっくりと腰を下ろす。
「まず、先に。タイニー・ベスの事は謝るわ。彼女、以前からあまり良い噂は聞かなかったのよね。他の情報屋のデータを盗んだり、手荒な事をするって話がチラホラあってね」
話しながら、エイミーはふいに立ち上がると冷蔵庫を開けてテーブルの上にあったコップに水を注いだ。
「普段はなんて事ない奴なんだけど、お酒が入ると愚痴っぽくなったりして・・・・両親は中央都市に住んでいたとか、自分は本来こんな所に居るべきじゃないとか」
水を一気に飲み干すと、タン!とコップを置いて座り直す。
少し苛立ちの見えるその仕草に、ユキの体はビクッと小さく跳ねた。
「オイルタウンで生まれ育ってる奴らもいるからね。そいつらからしたら、そんな愚痴は聞いていて気持ちの良いもんじゃないわよね」
ふーっと長く息を吐き、少し目尻を下げながらユキを見つめる。
「もっと早く、ベスの行動に気づいていれば良かったわ。あのビラ、怪しい点も多いからほとんど誰も目に留めて無かったの。不自然にそのビラだけ捨てることも出来ないし、他にもっと簡単な情報提供の依頼は沢山あったのよ」
段々と、語尾が荒々しくなっていく。
「まさか、ベスが気にかけていたなんて・・・分かっていたら、アナタを見られる前に街から追い出せたのに!」
エイミーの言葉に、ユキは首を振った。
「わたしが、いけなかったんです。もっと慎重になるべきでした」
「優しいのね」
ユキの頬に手を当て、エイミーは軽く微笑んだ。
「でも」
眉間にシワを寄せ、ふと声が低くなる。
「彼女の得た情報は既に政府側に渡っているし、あなたを政府より早く攫って金儲けを企んでる奴らも五万といるわ。サイモンとここまできた道のりよりも、これから先は茨よ」
エイミーの言葉は、ユキに、そして何よりもグッドナイトに重くのしかかっていた。
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