普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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1章 再び動き始めた運命の歯車

8.私が聖女?

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「星ちゃん、ちょっと待ってて」

 日が暮れカーテンも閉めていたため真っ暗な部屋が少し不気味だなと思っていると、陽がそう言ってすぐにスマホのライトが小さな明かりを灯す。
 
「チョピ、大丈夫?」
「うん、ボクは大丈夫だよ?」
「!?」

 チョピを頭上から下ろし確認すると、なんと言葉をしゃべる。愛らしい舌っ足らずなしゃべり方。
 いきなりのことに驚きすぎて開いた口がふさがらない。

 ついさっきまでチュピチュピって鳴いていたはずなのに、いきなり話せるようになるの?
 まさかさっきの呪文が話せるように……なんで今?

「セイカ、やっぱりボクの言葉が分かるんだね?」
「え、やっぱりって? ねぇ陽もチョピの言葉が分かるよね?」
「ごめん私にはチュピしか聞こえない。星ちゃんはわかるの?」

 チョピの言葉に違和感を覚え陽に確認すると、申し訳なさそうに首を横に振って逆に問われてしまう。
 何かが終わった気がした。
 
【うん、そうだよ。ボクの言葉が分かるのは聖女のセイカだけだもん!!】
「!!」

 衝撃的な信じたくはない真実を聞かされ、私の脳みそがキャパオーバーを起こす。

 …………。
 …………。
 黒崎は確かトゥーランを平和に導ける者って言っていたよね?
 私と つよしはそれを聞いてかってに救世主だと思っていたけれど、蓋を開けてみれば聖女(候補)?
 
 聖女って今ラノベや漫画で流行のあれだよね?
 特別な聖なる巨大な力を持つ乙女……。
 それが私?
  なんで?
 確かに私には魔王の力と言う特別な力があるけれど、それは聖女とは真逆の力だよね?
 そもそも私聖女になるつもりないし。

「星ちゃん、大丈……あ、電気がついた」

 頭の中がジャットコースターになっている私を心配してくれる陽の声と同時に、電気が復旧したらしく部屋全体がパッと明るくなった。
 私を心配そうに見つめる陽の表情がはっきり分かると、なんだか落ち着くけて我に返り安心する。

 私には助けを求め手を差し伸べれば、その手を握り返し受け止めてくれる親友がいる。すぐには良い方法を答えてくれなくても、一緒に悩んで考えてくれる。
 
「どうやら私が聖女だからチョピの言葉が分かるらしい」
「星ちゃんが聖女?」
【そうだよ。だからボクはセイカをトゥーランに連れてきたんだよ】

 驚く陽にお構えなしにチョピは当然とばかりに胸を張って、更なる爆弾を容赦なく投下してくる。
 
 とぅーらんにつれてきた。

 今確かにそう言ったよね?
  私はまだ聖女になるなんて言ってないのに、なぜいきなりそう言う展開になるんだろうか?
 確かに物語はいきなり転移が主流だけど、これは現実なんだから選ぶ権利だってあるはず。

「星ちゃん、チョピちゃんは今なんて言ったの?」
「それがチョピ曰く、ここが……」

 どうしても信じたくない私は、立ち上がりカーテンを勢いよく開ける。

 外の景色は見慣れた町並みではなく街灯もない、真っ暗闇で遠くの方がかすかに明るい。
 綺麗に輝く満天星空には二つの月に似た衛生? が浮かんでいる。
 明らかにここは私が住んでいる街……地球でもない。

 ここがトゥーラン?

「ねぇ星ちゃん、ここはどこ?」
【トゥーランだよ!!】
「……トゥーラン……」

 放心状態のまま、もう一度言うチョピの言葉を代弁する。
 受け入れたくない状況なのに、こんな物見せられたら信じざるおえない。
 それは陽も同じようで、言葉も表情もなくし呆然と外を見ているだけ。

 何をどう言っていいのか分からずただ沈黙が続いていると、部屋の外が騒がしくなり階段をすごい勢いで駆け上がってくる音が聞こえた。
 警戒する前にドアが乱暴に開く。

「星歌、陽ちゃん、無事か?」

 尋常じゃないパパだった。
 私の顔を見た途端、少し安心したようではあった。

 パパも一緒だと言うことはまさか家ごと転移した?
 だとしたら つよしも一緒ってこと?
 二人がいればなんとかなるかも?
 ……龍くんがいないは残念だけど……。

「無事なんだけど、どうしよう? どうやらチョピがトゥーランに転移させたみたい」
「やっぱりそうか。チョピ、なんてことをしてくれたんだ」
「チュピ!!」

 パパにはなぜか今の状況が理解出来ているようで現状には驚かず、怒りの矛先はチョピに向けられ怒鳴り散らす。
 迫力満点のパパにチョピは生命の危機を感じたのか、さっと私の背後に隠れて恐怖に脅え私の足下にしがみつく。

 今まであんなに自信たっぷりにやりたい放題したんだから、少しはパパの逆鱗に触れて痛い目見ろ。

 と思うものの、脅えたチョピを見ていたら助けてあげたいと思ってしまう。

 チョピはずるい。

「ねぇパパ、落ち着いて話そうよ」 
「……わかった。それならリビングで話し合おう」

 私の頼みなのだからなのか、何か言いたそうにもすぐに落ち着いてくれる。
 しかし私が聖女なんて知られたら、怒りはすぐに再発しそうだ。

「あのおじさん、 つよしは大丈夫ですか?」
「おそらく家ごと転移されているようだから、今龍ノ介が呼びにいっている」
「え、龍ノ介さんもいるんですか?」
「ああ。ちょうど来た所、転移させたようだ」

 まさかまさかの龍くんがいることにちょっと都合が良すぎるなと思うも、嬉しそうな笑顔を見せる陽を見てたらこれで良かったんだと思う。
 それに私もきっとパパにとっても心強い。

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