普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?

53.強くなりたい

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「少しは落ちついたか?」
「うん、ありがとうパパ」

 パパの問いに私は頷き、お礼を言う。
 泣くだけ泣いてパパの入れてくれたミントティーを飲んだおかげで、頭の中がすっきりして冷静になれた。そしてようやくつよしの言葉と態度に違和感があったことに気づく。

 つよしはお調子者だけど、どんな人でも偏見を持たない心優しい人。
 だから私が嫌いと言うのは本心かも知れないけれど、魔族は人間の敵だとか魔王の孫娘は死ねなんて言う人じゃない。その証拠に直前までつよしは私を庇って黒崎を叱って、……そう言えば私黒崎に告白されてんだよね? つよしのことがショック過ぎて忘れていた。

「黒崎、ごめんなさい。私はつよしが大好きだから、あなたの気持ちには応えられない」
「……そうだろうな。だが佐藤があれなら自分にもまだチャンスがあるだろう? 魔族のことはこれから冷静になってちゃんと向き合おうと思う」

 すっかり落ち込み黙っていた黒崎に期待を持たせないようにきっぱり断ったのに、正当な理由を言われ保留へと持って行こうとする。
 魔族に対して前向きになってくれたのは良いことで嬉しいことなんだけれど、私は黒崎と友達になれても好意を持つことはないと断言できる。
 黒崎は所々パパに似ていて興味はあるけれど、なんかタイプじゃない。

「チャンスは絶対にないよ。だから私のことは諦めて」
「…………」
「聖女様は容赦がないね? そんなにダイチのことが嫌いなのかい?」
「嫌いでも好きでもないだけです。でも下手な希望を持たせるのは残酷なことでもあるから、容赦ない方がきっぱり拒否すれば諦めてくれると思ったからです」

 再び黒崎をきっぱり振ると今度は分かってくれたようで、ショックを受ける黒崎をリュウさん呆気に取られながら援護するから迷わず答える。
 そしたらお腹を抱えて笑われてしまう。

 訳が分からない。

「だったら聖女様はツヨシを諦められる?」
「……分かりません。冷静になって考えると、あれは太の本心じゃないと思うんです。だから」
「そうだな。父さんもあれはつよしくんの本心ではないと思う」

 痛い所を指摘されうっと思いながらも、自分なりの解釈を自信なく答えてみる。随分都合の良い身勝手な解釈だと思われると思っていると、パパは私を抱き寄せ自信を持って同意してくれた。

「なるほどね。オレにはツヨシをよく知らないからそれに対しては何も言わないが、確かにリュウノスケ様が調べているとこを見ると可能性は高いだろうね?」
「え、そうなんですか?」

 それは初耳で驚き声をあげる。パパには分かっていたらしく、無言のまま頷く。

 本当に龍くんがつよしに拷問すると思ったから心配していたけれど、本当は拷問なんかしないでその理由を調べるだけ?
 魔術で調べられるの?

 でもだとしたら鵜呑みにしてしまった自分が恥ずかしい。
 陽も真相が分かったら恥ずかしい思いをしてるんだろうな? それとも紛らわしいと言って怒る?

【セイカ、良かったね。そう言えばツヨシの気があの時少しだけ穢れていたかも知れない】
「え、そうなの? パパ、リュウさん。チョピがツヨシの気が穢れていたかも知れないって言っているよ」
「良かったな星歌」
「うん!!」

 チョピの台詞で私の願望は確信に変わり少し興奮気味で三人に伝えると、パパも笑顔になり喜び私の頭をなぜる。

 ガーロットの時とは違って私には穢れを読み取れなかったけれど、聖霊であるチョピがそう言うのなら間違えはない。

 そしたら早くつよしの穢れ払って元通りの関係に……告白してしまおうか?
 こんな思いをするんなら自分の想いを告げて、つよしの気持ちを知りたい。もしそれでも振られるかもだけど、素の状態で振られた方がさっきより何百倍もまし。

「私、つよしに告白する」
『お~!!』
「…………」
【だったらボクがツヨシの穢れの原因を調べてくるね】

 勢い余って言葉に出してしまいハッとなり、慌てて口を塞ぐけれどそれはすでに遅し。
 パパとリュウさんは感嘆の声を上げ、チョピは嬉しそうにそう言ってリビングを飛び出していく。






「あのバカ洗脳の実を噛っていたことを隠していた。少しだったから遅れて発症したんだな」
『え?』

 しばらくしてチョピを連れ怒った龍くんが戻ってくるなり、怪訝敷く言って私達を驚かせる。

 洗脳の実を噛ったから、太は魔族が敵と思うようになった。

「星夜、太に根性論を叩き込んでないだろうな?」
「いいや。でもどう言うことだ?」
「ヨハンが指輪を貸すと言うにも関わらず、気合いで打ち消すと言って聞かないんだよ」
『………』

 理由が阿保過ぎで何も言えない。 
 でもまぁ太らしいと言えば太らしいかも?。
 それにしても最近のパパは筋肉こそすべてとか言いそうな勢いではあるけれど、パパのせいにするのは失礼きわまりない。
 元々つよしはスポ根・熱血漫画が好きで影響されやすいからそのせいだ。

「今度は俺が少しつよしくんと話してくるよ。リュウ、一緒に来てくれるか? 洗脳の実について太くんに話して欲しい」
「はい、分かりました」

 ってパパは言って、今度はパパとリュウさんがリビングから出ていった。
 私も行きたかったけれど、まだ何も解決していない以上会わない方がいい。私はしばらくつよしと会えないんだろうか?

「聖女の力でなんとか出来ないのかな?」
【セイカが今使える浄化の力は人に使えば、すべて浄化されてしまう。ガーロットだから穢れだけを浄化できたんだ】
「そうなんだ。だったら人でも大丈夫な浄化の力はあるの?」
【あるよ。審判の花に行って祈りを捧げフェイリルに加護をもらえばいい】

 一筋の光はすぐにへし折られ、ガックンと肩を落とす。

 審判の花は魔王城の近くに咲いているらしく、今のパパと龍くんでさえ行くには困難だと言ってた。だから私と太陽が一緒とならば更に難易度は上がる。
 一体どのぐらいレベルアップをすれば行け……どのぐらいの月日が掛かる?

「星歌、どうした?」
「……洗脳の実の効果を浄化するには、審判の花に祈りを捧げて、そこの聖獣の加護をもらえば良いんだって」

 まだ少し龍くんのわだかまりが少しだけ残っているので、龍くんとは視線を合わせず素っ気なく返答してしまう。

「よりにもよって審判の花か。あそこに行くとなったら、全員で強化合宿でもするか?」

 そんな私を龍くんはまったく気にする様子もなく、真面目な声でやらなきゃいけない現現実を突きつける。

 強化合宿。
 さすがにそこまでは考えていなかったけれど、言われてみれば確かに強くなるにはそこまでしないと駄目なんだよね?
 私が洗脳の実の効果を浄化する力を身につければ、つよしは元に戻るし人間と魔族の関係は修復されてお母さんの冤罪を晴らせる。 

「うん、私がんばって強くなる。つよしのこともあるけれど、洗脳の実の浄化が出来れば人間と魔族の仲は今より修復されるはず」

 強い決意を言葉して、私はその場に立ち上がった。

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