普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
121 / 157
6章 ラスボスへの道のり

102.幼馴染みのお姉ちゃん

しおりを挟む
「事情はすべてわかりました。魔族代表に関して、私の玄孫であるルルと考古学者のロレンスが適任かと思います。姫様もよくご存じですよね?」
「もちろん。ロレンスは確かに適任かも知れないな。ルルはベレニの意志を継いだんだ? なんかあたしも嬉しいよ」
「はい。今でもルルは人間が大好きで、私の良き後継者です」

 ベレニさん家に招かれパパと龍くんが中心となり今までのことをざっと話した。そして適任と思われる人物の二人の名前が上がる。
 その瞬間お母さんの顔が微笑み言葉を返すと、ベレニさんも嬉しそうな笑顔で頷く。

「星歌、ルルちゃんは星歌より三つ年上で、姉妹のように仲が良かったんだぞ?」
「え、そうなの?」

 初めて聞くまさかの友達の存在に興味津々で、身を乗り出して大きな声で反応してしまう。
 もちろんまったく覚えてないけれど、姉妹のように仲が良かったんならまた仲良くなれるはず。義姉のマヒナには残念だっただけに、こっちは期待大だ。

「さっきルルにお嬢も来ていると連絡したら、すぐに帰ると言っていたよ。ロレンスにはひと段落したら、来るように伝えました。なのでぜひ今夜は泊って下さい。盛大な宴会をしましょう」

 ありがたいことに向こうも私と会いたいと思っているらしく、ますます楽しみになってきた。
 そして盛大な宴会はご馳走の予感。

「それはいい。久しぶりに酒にありつける」
「そうね。この街の地酒は格別なのよね」
「ワインも美味しい」

 大人達はご馳走よりもお酒のことしか頭になくすでに盛り上がっていたが、パパだけは冷静に三人を見ている。

「パパは宴会楽しみじゃないの?」
「楽しみだよ。でも酒は嗜む程度だけだから、あそこまで盛り上がれないんだ」

 絶対に私が誘拐されたことを根に持っている回答。
 しかも本人例のごとく我慢している様子もないから、これ以上気にする必要はない。
 それにすべてが終わって地球に戻れば、また龍くんとたまに夜通し吞むようになってくれるよね?

「そうなんだ。所で黒崎はどうしよう?」
「後でオレが話してくるよ。嫌ならご馳走だけ持っていけばいいし、参加したいのであればあんまりススメたくないんだが、数時間臭いをすべて消す方法がある」
「すべてって……まさか匂いと言う匂いも?」
「ああ。だからススメたくない」

 これまたすごい魔術と思いきや使い勝手が悪いポンコツだから、龍くんは言葉を渋らせ乗り気ではない様子。私も聞いてそれはダメじゃないかと思いつつ、決めるのは黒崎だから提案するだけすればいいとも思った。

 そこまでしても魔族と関わりたいって思ってくれたら、私としてはありがたいんだよね。だってそれってつまり魔族と人間の共存の可能性があると言うことだから。
 仲良くしなくてもいいからいざって言う時は、協力できる体制を取って欲しい。

「……シノブを倒して洗脳を解いた後に魔族と人間の大宴会を開催すれば、お互い腹を割って話し合えるのかな?」
「確かにそれはいいかも知れない。和平会議はもちろん必要だが、民達にも互いの種族のわだかまりを取り除く必要がある。問題はマヒナのような人間を憎む魔族をどう説得し、人間と関わらないようにするかだな」
「本当にそれ。嫌いだったら関わらなければ良いだけなのに、そう言う奴らは過激派が多いんだよ」

 マヒナの話になりお母さんとベレニさんは、頭を抱え大きなため息をつく。
 和平会議よりも問題なのは、仲間内なのかも知れない。
 私も嫌いなら関わらなければ良いと思うんだけれど、そう言う訳にはいかないんだろうな? その人達の言い分を聞いた上で、落としどころを見つけるしかないのかも?

 和平会議をするには、思っている以上に大変な道のりだ。


 ダッダッダッダッ

 乱暴な足音がこちらにやってくる。

 バタン

 乱暴に扉が開かれて現れたのは、ベレニさん似のロングヘアが似合う二十代ぐらいの女性。急いで来たのか息が荒い。そして扉はガタンと壊れた。
 突然のしかも衝撃的な登場に、私達は一斉に彼女を注目する。

 この人がルルさん?

「曾おじいちゃん、セイちゃんが来ているって本当?」
「ルル、お前はなんでいつもそうなんだ? いい加減に落ち着きある行動を取りなさいと、いつも言ってるだろう?」

 挨拶よりも先に目を輝かせ私を問う女性はやっぱりルルさんで、ベレニさんはさっきよりも大きなため息をつき愚痴をこぼす。

 台詞からしてこう言うことは日曜茶飯事?

「すみません。それでセイちゃんは?」
「はい。私が星歌です」

 謝罪するも反省の色はなく私を捜し続けるから、自ら手を上げ席を立ちルルさんを見つめた。するとルルさんの表情が和らいだと思えば涙を流し、一私の元へやって来てギュッと抱きしめる。

「セイちゃん、会いたかった。ある日曾おじいちゃんから突然、セイちゃんとはもう二度と会えないって言われたの。その後一年も経たないうちに、人間はおかしくなって魔族は敵だと言いだしてもう訳が分からなくって」

 私との再会を心の底から喜んでくれていて、当時の子供の無力で悲痛な思いがここぞとばかりに伝わってくる。
 これがもし私だと思うときっと大泣きして暴れて、パパと龍くんを困らしたんだろうな。
 ルルさんとの記憶は何一つないのは残念だけれど、再会出来て良かったんだとと思う。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

最強お嬢様、王族転生!面倒事は即回避!自由気ままに爆走しますけど何か?

幸之丞
ファンタジー
結衣は来年大学進学を決めた高校生。 父親が幼いころに行方不明になり、母を助けるために幼いころから、祖父が営む古武道の道場のお手伝いをしていました。道場でお手伝いが出来たのは、幼い頃より、流鏑馬や剣術を祖父と父親が結衣に教えていたことが起因である。 結衣の腕前は、弓道で全国大会を制覇するほどである。  そんな、結衣は卒業旅行に仲の良い陽菜と卒業旅行に行くために、もう一つの飲食店でのアルバイトをしていた。 その帰り道、事故に合い転生してしまう。 転生先では、女王太子の長女、エリーゼとして生まれます。 女性が元首を継ぐことが多いこの国は、国を守るために防御結界があり、それは、精霊や妖精達が結界を張っています。 精霊や妖精が結界を張る条件として、聖女と呼ばれる女性たちが、聖なる湖という聖域でお祈りをして、祈りの力を精霊や妖精に捧げるのです。 その為、エリーゼは、聖女をまとめる筆頭、巫女の代表の斎王になり、女王になることを期待されるのです。 しかし、結衣は自分が国を治める能力はないと考え、どうにか女王にならないようにいろいろと考え行動に移すのですが… このお話しは、異世界転生・王族・聖女・精霊・恋愛・領地改革などの要素が絡み合う、女性主人公による成長と自立の物語です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...