普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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6章 ラスボスへの道のり

103.嫉妬される

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「黒崎、大丈夫?」
「ああ。本当にもう何も匂わない。魔族とちゃんと話したいからな。そう思えたのは村瀬のおかげだ」

 ルルさんに私との思い出話をしてもらっていると、ベレニさんに用事を頼まれ呼ばれ話は一時中断。
 リビングに戻ると黒崎がいたから心配で声を掛ける。
 優しい笑顔でそう言うことじゃない答えと、なんかすごく小っ恥ずかしい台詞が返ってくる。この場合なんて反応して良いのか分からず、恥ずかしくて身体が中が熱くなった。多分頬が赤く染まっていると思う。
 もちろん黒崎に恋愛感情なんてないから、心臓の鼓動は平常運行。
 
「星歌、ちょっと付き合え」
「え、太?」

 するとどこからともなくムッとした太が現れそれだけ言い、私の腕を強く掴み強引に外に連れて行かれる。
 突然の出来事に呆然とする私。

 滅茶苦茶怒っています。
 どうしてあなたがそんなに怒ってるんですか?





「星歌にとって大地はなんなんだ?」

 私にはまったく分からない道どんどん進み街外れだろう森に辿り着く。ムッとしたまま私を強い眼差しで見つめ問う。怒っているのに瞳の奥は何かに脅えている。
 ここでようやく太が怒っている理由に察しがついて、ちょっとだけ気が抜け嬉しくてニヤついきそうになった。

 太は嫉妬してる。
 私が頬を多分染めていたから誤解して。

 可愛い。

「この前も言ったけど、黒崎はただの友達だよ。さっきは小っ恥ずかしいことをいきなり言われたから、照れて反応出来なかった」

 嫉妬だよね?

 なんてイタズラっぽく聞いてみかったけれど、嫉妬はつらいって知っているから辞めた。
            
 黒崎にまったく恋愛感情がないと分かれば嫉妬……黒崎が私に恋愛感情を抱いている限り無理? 
 だけど私黒崎をちゃんと振ったんだから、もうそんな感情微塵も持ってない。
 でももし私が太だったら……私も多分嫉妬すると思う。

「そうだったよな。すまん……ってどうして悲しげな顔をするんだ?」
「私が太と同じ立場だったら、嫉妬して不機嫌になる。私や陽以外の女の子と二人だけで話して欲しくない……」

 考えれば考える程醜い感情が溢れ出し黙っていれば良いのに、馬鹿正直にすべて暴露してしまう。

 私って結構独占欲が強い?
 太を一人いじめしたいって思っている?

 そんなこと言われたら重いと言われ……

「そうか。なんかそれを知ったらすげぇ~安心した」
「え、ドン引きしないの?」
「するわけないだろう? だってオレが最初にありえない嫉妬をしたんだからな」

 ドン引きされ嫌われたらどうしようと脅えていれば、返ってきた答えは予想外すぎる物。呆気に取られ首を傾げ聞き返せば、頬を軽く赤らめ確かにと思うことを答えらてる。ハッとする私。

 私が独占欲が強くてもおあいこさま。
  悩む必要なんてまったくなかった。

「つまり私達似たもの同士ってことだね?」
「だな。そうと分かったら帰るか」
「うん!!」

 私も真相が分かり安堵し、太と笑い合う。

 ……が

「な星歌?」
「何?」
「所でここはどこだ?」
「え、知ってて歩いてたんじゃないの?」

 間抜けすぎる問いに私はキョトンとして知らないと答えると、今度は太の顔からみるみるうちに血の気が引き震えた。
 どうやら何も考えず本能のままここまで来たらしい。
 太らしいと言えば太らしいけれど。

「すまない。誰かに聞いて帰るか。責任を持ってオレが聞くから」
「ありがとう。だけどここ人気がないから、森から出て大通りまで戻ろう。そのぐらいなら……」

 来た道を戻れば辿り着くよ。
 と言おうとして振り返るとそこは獣道で、いくつもの道が別れてる。しかもラノベによくあるように、大木が動いている。

「……この森って動くんだな」
「……そう言えば龍くん、魔族の森は動くと言ってたっけぇ?」

 今更ながら教えられたことを思い出す。
 動く大木はただ動くだけだから害はないけれど、目印にするのは御法度。
 実際目の当たりして、よく分かった。

 もうすぐ日が暮れると言うのに、ベレニさんちに戻れれなかったらどうしよう?
 指輪を使って、パパを召還する?
 でもそんなことしたら、もう一人外出が許されない。
 私の自由がなくなってしまう。
 モンスターに襲われる恐怖よりも、パパの逆鱗に触れる方がよっぽど怖い。

「──足音?」
「え?」

 大木が動く音以外の足音が聞こえてきて、しかもこちらへ近づいてくる。私が知っている足音じゃない。でも嫌な感じとか殺気がしないから、敵では……ないと思いたい。

「街の人か?」
「だと良いんだけど。もし敵じゃないとしても、人間嫌いな魔族だったらどうするの?」
「は、何物騒なことを考えてんだよ? この街の魔族はみんな人間に好意的だって、ベレニが言ってたぞ」
「え、そうなの? なら安心だ……じゃない」

 太の言葉に安心して足音の方に視線を向ければ、主を見た瞬間目ん玉が飛び出るほどびっくりした。繋いでた手を強く握ってしまい、嫌な汗がドッと流れだす。
 だってそれは忘れもしない面影。

「おい星歌どうした? 顔が真っ青だぞ? ……蛙……族?」

 愕然とする私に太は驚きすぐに心配してくれる。不思議そうに首を傾げながら、私の視線の先に合わせるなりボソリと呟く。

 蛙族。
 私と陽を襲ったすべての始まりの蛙男にそっくりだった。
 そう言えばあの蛙男の行く末を私は知らない。

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