普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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7章 すべてを終わらせる

129.聖女の祈り

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 私達はチョピ達の案内で、祭壇所に連れてこられた。
 そこはリリアンさんの村周辺で見つけた神秘的な泉と似ていて、入った途端清らかな空気に変わり軽くなり気持ちいい。
 そんな中チョピは黄金に光り輝き、毛が見る見るうちに伸び黄金の綿あめとなった。
 尊き存在……。

【セイカは中央に座って、聖女を護りし戦士達はボクのイメージを送るから同じ位置に立ってくれる?】
「チョピがイメージを送るから、そこに立って欲しいんだって」

 中身はいつもの元気いっぱいのチョピ。私の頭上に飛び乗り意味深な指示をする。
 何だろうと思いながらも、私はそのままを伝える。

 イメージを送るって何?
 どういう風に?

「本当だ。映像が頭に浮かんで来る」
「オレにも。何をすれば良いのか分かるぜ?」
「さすが聖霊達」

 私以外にはこれからの映像が送られているらしく、おっかなびっくりしつつも迷わず場所移動。魔法陣のように、私を中心にして☆を作る。

【セイカは心を込めて、洗脳を解けるよう祈りを捧げてね。ボクとフェイリルも精一杯歌うから】
「チョピとフェイリルが歌うの?」
【そうだよ。私達の奏でた歌で聖女の祈りを世界中に届けるんだよ】

 さすがなのかなんなのか、スケールが大きすぎて開いた口がふさがらず。でもよく考えたら世界中に祈りを届けるには、こうでもしないとダメなのかもしれない。

 改めて聖女と聖霊達は凄いな。

【セイカ、リラックスだよ。ボクをギュッとしてみて】
「うん、そうだね」

 緊張はご法度なんだろう。
 チョピの言う通りにぎゅっと抱きしめると、いつも以上にフカフカで抱き心地が最高。ホッとできる懐かしい匂いで、徐々に緊張がほぐれていく。


【もう大丈夫だね。それじゃぁ行くよ!!】
「うん。みんな、始まるよ」
『おう(うん)』

 チョピと私の掛け声で全員張り切り声をハモらせると、地面に私達を基準に魔方陣を描き出す。


「ルルルル」


 チョピとフィリルの息のあった美しいハーモニー。
 私はひざまつき祈る。

 魔族は敵じゃない。
 人間と同じ心を持って意志疎通出来る生命。話し合えば大半は分かり合えるはず。分かり合えないとしても、敵対しないで距離を取ればいいだけ。
 トゥーランは世界中の全生命の物だから。

 聖女としてではなく、あえて私の願いを祈る。
 ベレニーさんと約束したのもあるけれど、どうしてもマヒナのような魔族やαような人間とは関わりたくない。
 聖女の癖に、祈ってることと行動が違うなんて言われたくないから。
 身体が不思議と軽くなりフワフワと浮かんでいる感じがして、思わず目を開けるとみんなが下にいる。

 私今浮かんでいる?

【セイカはトゥーランが好き?】
「うん。だけど地球の方が大好き。ひょっとしてチョピとはお別れしないといけないの?」

 頭の中でチョピが聞いてくるから何も考えず返答するけれど、不意に嫌な予感が過ぎり真っ青な顔で聞き返す。
 聖女の祈りを世界中に届けるため力を使い果たしたから、一緒にはいられず再びこの地で眠りにつく。
 突然のお別れ?

【違うよ。ボクとセイカは、セイカが死ぬまでずーと一緒だよ。約束したでしょ?】
「だったらどうして?」

 またしても私の早とちりでした。

【セイカがトゥーランも好きなら、チキュウと行き交えばいいと思ったの。ねぇフェイリリル】
【うん。セイカんちの地下に、行き交う扉を私達が作ってあげる】
「…………」

 フェイリルまで加わり、あまりにも簡単に言い出す。あまりのことに驚きすぎて、なんて反応すれば分からなくなる。

 そんなこと出来るんなら最初に……今だから出来るようになったとか?

【そうだよ。セイカはトゥーランの聖女だって、今正式に認められたの。だから】

 無邪気に答えるチョピ。
 それはそれである意味大変なこと。

 ようやくこれでどこにでもいる普通の女子高校生に戻れると思っていたのに、これからも聖女としてやっていかないといかなくなる。何をやるかは分からないけれど。
 しかも私って確か魔王の後継者。トゥーランに行き交うことが出来るんなら、女魔王となって魔族を導いていく。


「オーマイガ~!!」


 考えたこともなかった未来はワクワクするよりも不安の方が大きくて、ムンクのポーズで声の限り大絶叫。
 祭壇中に響き渡るのは言うまでもなく、何か勘違いしたパパは顔を青ざめ、私を見上げる。

「星歌、行くな~!! 戻ってこい」
「は?」
【セイカ、どっか行っちゃうの? セイカのパパ泣き出しそうだよ】
【セイヤはきっとセイカが神様の元に行くと思ってるんでしょ? 早く行かないと何をしでかすか分からないわ】

 必死に私を呼び手を差しのべる。
 真に受けたチョピまでもが泣き出しそうになるも、フェイリルは呆れ誤解を見抜いた上物騒なことも付け加えた。

 それはまずい。
 私のためならきっとパパは、神見殺しも厭わない。


「パパ、私はどこにも行かないよ」

 パパの元にゆっくり下降して手を掴み、微笑みながら安心させる。
 するとグーと引き寄せ抱き締められた。

「おかえり星歌。地球へ戻ろう」

 勘違いだと分かっても、大粒の涙を流すパパ。身体が震えている。

 地球へ帰ろう。
 そうだ。私は地球へ帰る。
 ただこれから始まる二重生活が不安で仕方がない。

「あのね。パパ、実は……」

 ネタバレは早い内にしておいた方がいいと思い、私はゆっくりとこれからのことを話す。それを聞いたパパの涙はピタリと止まりなんとも言えない表情を浮かべる。


 そうそうガーレットは飛んでもない音痴で歌は御法度らしく、もしものために祭壇所の扉前で見張っていたとか。

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