普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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8章(エピローグ)物語は続いていく

130.洗脳が解けたら?

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 私の祈りは暖かな光の粒となり一晩中降り注がれたと言う。その光景は神秘的で優しい気持ちになれたらしい。
 レジストの人達は洗脳されていなかったので、ここでは分からず。実感出来たのは久しぶりに戻った聖都でのこと。
 龍くんとルーナスさんの空間移動魔術のおかげで、魔方陣を通ればそこはもう聖都。

 セレス姫達はお城が気になるといい、黒崎達と共にお城へ。ステーフさんは家へ。残された私達は、街の様子を見に行くことに。

 魔族に襲撃されたと聞いて心配をしていたけれど、あれから一か月近く経っているのもあり復旧作業は結構進んでいる。
 街の賑わい活気に満ちあふれていた。
 洗脳が解けたのか気になり手当たり次第の人達に聞けば、魔族に対して嫌悪消えただけじゃなく憎しみも消えていた。これにはちょっと驚きである。

「おいら達が散々魔族を無碍に扱っていたから、仕返しされてもしょうがないかもな。喧嘩両成敗という奴?」
「そもそもよく考えて見れば、あの意志の強い英雄セイヤ様が騙されるはずがない。それなのに私達は本当にどうかしていた」
「洗脳のきっかけが、単なる失恋からの逆恨みだったとは。α、許すまじぃ~!!」

 多くの人達が洗脳を反省し、αに怒りが向けられていた。
 しかもお母さんの冤罪まで解け、少し人間は調子が良いと思うも大万歳。 
 つまり本当の意味で私の使命は、すべて終了。
 チョピ達が地球とトゥーランの行き交う扉を作ってくれるんだから、いつでも地球に帰れるんだよね?

「いつ地球へ帰ろうか?」
「は、和平会議を見届けなくてもいいのか?」

 私だけで決められるはずもなくみんなに確認すると、パパ以外からの全員に驚かれる。眉を曲げた太から、当たり前かのように問われた。

 そう言えば私まだパパ以外に、扉のことを話してなかったっけぇ?
 いろいろあり過ぎて忘れてた。

「それがチョピ達曰く、地球とトゥーランに行き交う扉を作るみたい」
『!?』

 言うまでもなく、驚かれて絶句される。

「その扉はどこに作るか決まっているのか?」
「我が家の地下室は決定だけど、もう片方は決めてない」
「だったら魔王城にして欲しい」

 なんとなくのパパの問いに漠然とした場所を答えていると、フッと我に返ったお母さんは必死になってトゥーランの場所を指定される。

 そう言われると思っていたから、それには異論はない。
 ただ魔王城に扉を作ったら、私はやっぱり女魔王確定なんだろうか?
 私には、どう考えても重荷である。
 聖女って言うのも重荷と言えば重荷ではあるけれど、そこはパパと龍くんが英雄だから三点セットでなら気が楽だ。

「そうだな。それがWin-Win関係なんだろう」
「私もそう思う。だけど女魔王になるのは嫌だから、魔族代表をそのうち選挙で決めて欲しいな」
「それならしばらくはあたしが女魔王代理をする。ひょっとしてリュウセイが継いでくれるかもしれないからな」
『…………』

 私の意志を尊重してくれるも、根本的なことは分かってなかった。まさかの自分がなる発言。
 しかもお腹をさすり弟に期待をするもんだから、私とパパは顔を見合わせ笑顔を惹きつらせた。

 お母さんのことだから弟の意思もちゃんと尊重してくれるとは思うけれど、産まれてすぐに魔王の英才教育をしだしたら嫌だな。
 そもそもカマイタチが使えることが、魔王になる証。しかもカマイタチは一人にしか使えないはず。
 私が使える以上、弟には無理。

「なんだ。その沈黙と腑に落ちない表情わ? そんなにあたしがリュウセイに魔王になることを望んじゃいけないのか?」
「強制しなければ構わないが、カマイタチは同時に二人が使うことが出来るのか?」
「え、あっ……。すまない、今のは全部忘れてくれ。姉弟で殺し合いをさせるつもりはない」

 お母さんの表情が消え、物騒なことを否定する。

 奪い合いが殺し合いに発展するんだ……。
 私には不要なものだから喜んで譲りたいけれど、その様子じゃ無理なんだね?
 否定してくれて良かった。



「じゃぁ私は一旦、ギルドに戻るわね。所長が全面的に非を認めるから、戻って来て欲しいんだって。二三日嫌みを言い続けて、渋々許すつもり。それじゃぁまたね」

 どこからか連絡を受け一通り話し終えたヨハンさんは、悪魔の笑みを浮かべながらそう言って私達と別れた。

 言葉からして修羅場になること間違えなし。
 この世界の女性は本当にたくましいな。
 ステーフさんも一件愛する人に無償の愛を注ぐ奥ゆかしい女性だと思っていたけれど、リュウさんを女手一つで立派に育てたんだからたくましいと言えるのかも?


「あ、セイヤおじちゃんだ!!」

 どっからか聞き覚えのある声が、パパを呼びこちらに近づいてくる。
 お久しぶりのミシェルちゃんだった。
 驚くべきことにオレンジの髪をなびかせ、満悦の笑みを浮かばせている。
 以前とは違いそんな彼女を、奇妙な眼差しを向ける輩は誰もいない。

「ミシェルちゃん、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「うん。みんな元気だよ。この髪色でもういいんだって」
「うん。そのオレンジの髪はミシェルちゃんにとっても似合う色だと思うよ」

 ミシェルちゃんの視線に合わせ、優しくゆっくりと話しかけるパパ。
ピョンピョン跳ねながら嬉しそうに答えるミシェルちゃんに、パパも普段見せない笑顔を浮かべ髪をなでる。
 その姿はまるで親子そのもの。
 なんだか前よりも元気そうで、私まで嬉しくなる。

「ありがとう。お母ちゃん達も会いたいって言ってたから、これから店に来てくれる?」
「そうだね。みんなもそれでいいか?」
『もちろん大丈夫』

 ミシェルちゃんの招待に、みんな異論はなく二つ返事で頷く。
 と言うより多分ミシェルちゃんに会わなくても、次の行き先は防具屋になっていたと思うんだよね?
 いくら無事だと教えてもらっていても、やっぱり心配だった。洗脳が解けたら会いに行こうとパパと話してた。
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