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九話
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「マルクスの野郎。いつか、見返してやる」
カノンは大声でそう叫んだ。
放課後職員室でこってりマルクスに絞られた帰り道。本来なら出欠席を取るだけで終わるのだが、マルクスに一時間以上もお説教されたため時刻はお昼少し前になっていた。
「大体、なんでオレの魔力はこれ以上伸びないとか言うんだ?」
マルクスの説教の最後にいつも「このままだとお前の魔力はこれ以上伸びないぞ」としつこいように言われている。
実際この数ヶ月カノンの魔力は思うように伸びていなく、カノンは余計腹が立っていた。その意味が解らないカノンは、マルクスに理由を聞いても「自分で考えろ」と言うだけで教えてくれない。
「ふざけるな」
どこからともなく聞き覚えがある少年の声が聞こえた。その声は怒っている口調だった。
カノンは辺りを見回すと、右路地の方に女と少年の姿が見える。
少年は、不良で有名な普通高等学生のルドルフだった。彼は弱い者にしか恐喝しない卑怯者である。
女の方は見かけない顔で年はカノンよりも年上だろうか、怯えた表情を浮かべていた。
「何をしてる?」
とっさにカノンが二人に近づき、ルドルフの腕をつかみ声を掛けると、
「カノン?」
ルドルフはカノンの顔を見るなり、慌てて逃げていった。どうやら恐喝をしていたのは確かなようだ。
「あ、ありがとう」
彼女は違う言葉でそうカノンにお礼を言った。
けして美人とか可愛い顔ではなかったが、幼さが残る愛くるしい顔立ちをしている。
カノンは驚き彼女を見つめ、
「お前、異界人か?」
と、彼女の言葉で訪ねる。彼女も驚いたのか、目をパチクリさせ首を縦に振る。
まさしく、チェリーのお告げの人だった。
「そうだけど。あなた日本語分かるの?」
「ああ。オレの家系はどんな言葉でもしゃべれるんだ。オレはカノン。お前は?」
「あたしは椛」
「モミジ? 変な名前だな」
「そうだ。ねぇ、あの子に今度謝っといてくれる?」
安心したのか、椛の顔は笑顔に変わる。
しかし自分が何をされたのか分かっていないのか見当はずれのお願いをカノンに頼む。
「なんでだよ? あいつモミジを恐喝しようとしたんだぞ」
「え、そうなの? あたしここの言葉分かんないし。でもやっぱり謝ってくれるかな。失礼な態度を取ったのは事実だから」
真実を聞かされたにも関わらず、少し考えた椛は明るく再度お願いする。
(変な奴。でもこいつの子守りならしてやってもいいかもしれない)
カノンは椛を見ながら、直感的にそう思った。どうしてだが自分でも分からなかったが、年上である椛のことがほっとけなく思ったのは確かである。
こうしてカノンとチェリーの使命が始まろうとしていた。
カノンは大声でそう叫んだ。
放課後職員室でこってりマルクスに絞られた帰り道。本来なら出欠席を取るだけで終わるのだが、マルクスに一時間以上もお説教されたため時刻はお昼少し前になっていた。
「大体、なんでオレの魔力はこれ以上伸びないとか言うんだ?」
マルクスの説教の最後にいつも「このままだとお前の魔力はこれ以上伸びないぞ」としつこいように言われている。
実際この数ヶ月カノンの魔力は思うように伸びていなく、カノンは余計腹が立っていた。その意味が解らないカノンは、マルクスに理由を聞いても「自分で考えろ」と言うだけで教えてくれない。
「ふざけるな」
どこからともなく聞き覚えがある少年の声が聞こえた。その声は怒っている口調だった。
カノンは辺りを見回すと、右路地の方に女と少年の姿が見える。
少年は、不良で有名な普通高等学生のルドルフだった。彼は弱い者にしか恐喝しない卑怯者である。
女の方は見かけない顔で年はカノンよりも年上だろうか、怯えた表情を浮かべていた。
「何をしてる?」
とっさにカノンが二人に近づき、ルドルフの腕をつかみ声を掛けると、
「カノン?」
ルドルフはカノンの顔を見るなり、慌てて逃げていった。どうやら恐喝をしていたのは確かなようだ。
「あ、ありがとう」
彼女は違う言葉でそうカノンにお礼を言った。
けして美人とか可愛い顔ではなかったが、幼さが残る愛くるしい顔立ちをしている。
カノンは驚き彼女を見つめ、
「お前、異界人か?」
と、彼女の言葉で訪ねる。彼女も驚いたのか、目をパチクリさせ首を縦に振る。
まさしく、チェリーのお告げの人だった。
「そうだけど。あなた日本語分かるの?」
「ああ。オレの家系はどんな言葉でもしゃべれるんだ。オレはカノン。お前は?」
「あたしは椛」
「モミジ? 変な名前だな」
「そうだ。ねぇ、あの子に今度謝っといてくれる?」
安心したのか、椛の顔は笑顔に変わる。
しかし自分が何をされたのか分かっていないのか見当はずれのお願いをカノンに頼む。
「なんでだよ? あいつモミジを恐喝しようとしたんだぞ」
「え、そうなの? あたしここの言葉分かんないし。でもやっぱり謝ってくれるかな。失礼な態度を取ったのは事実だから」
真実を聞かされたにも関わらず、少し考えた椛は明るく再度お願いする。
(変な奴。でもこいつの子守りならしてやってもいいかもしれない)
カノンは椛を見ながら、直感的にそう思った。どうしてだが自分でも分からなかったが、年上である椛のことがほっとけなく思ったのは確かである。
こうしてカノンとチェリーの使命が始まろうとしていた。
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