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3.憑き物
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原因はあなたにある――
その言葉を聞いためぐみはまるで、真綿で首を絞めらている気分になった。気がつくと膝の上で握った手に汗がじわりと滲む。
「わたしに――原因」
ようやく絞り出した声は蚊の鳴くような、頼りないものだ。
めぐみは控えめで、優しい性格だ。誰に聞いても同じ感想を抱かれる、そんな娘だった。小さな頃から殆ど喧嘩もしたこともないし、悪事と言えば、せいぜい母の作る料理をつまみ食いした事くらいしか思いつかないほど、人畜無害な人間だ。
気付かないうちに、誰かを傷つけたことはあるだろう。しかし、呪い殺されるほどの恨みを買った覚えは全くといっていいほど無い。
めぐみは自然と非難めいた口調となる。
「私は誰かに――ここまでの恨みを買うような事はしてないよ! だって、そうでしょ。死んじゃうところだったんだよ!」
取り乱すめぐみに対して月原はやはり完璧な無表情だ。感情はどこかに置いてきたらしい。
「島岡さん。気持ちは分かるけど落ち着いて」
「でも――」
「憑き物になる理屈は憑き物にしか分からない。時には逆恨みや思い違いでそうなる事もある。でも確実にあなたか、あなたの近くに原因があるはずなの」
月原はあくまで冷静だ。そんな姿を見ていると、めぐみも少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。
「月原さん……わたしはどうなっちゃうの」
原因なんて考えても分からない。それより肝心なのは先のことだ。また同じように、首を吊りたいと、死に場所を求め彷徨うかと思うと、背筋が凍る思いだ。
めぐみは期待のまなざしを月原に向けるが、その表情からはどうにも、事はそう簡単に済まないような、そんな雰囲気を感じた。
「――お祓いをしておいたからひとまずは大丈夫。だけど根本は何も解決していないから、また時間が経てば同じ事の繰り返しになるわ」
「そ、その時は、またお祓いしてくれるの?」
「するのは構わないけど、効果があるのかは分からないわ」
月原は実にあっさりと言った。
「ど、どうして? 今はお祓いしてくれたんだよね。あれだけ死にたいって思ってたのに、今はもう、すっかり……さっぱりだし」
月原は相変わらずの無表情のまま続けた。
「もう少し早かったら、どうにかなっていたかも知れないけど…… 憑き物はね、想いが、目的が果たせないと、どんどん強くなるものなの」
――強くなる
すでに自殺寸前にまで追い込まれためぐみとっては最早死刑宣告と同じだった。
「人を死に誘う程の力を持っているんだったら尚の事ね。もう簡単には祓えないわ」
「そんな――」
月原の言葉が容赦なくめぐみの心を抉り、思わず涙が零れる。どうして自分が――まだ死にたくない、怖い――
嗚咽を漏らすめぐみをよそに、月原は話を続けた。
「たとえ神様だとしても、簡単に人を死なせることなんて出来ないわ。それをやってしまえるなんて、余程強い恨みをかってしまったんでしょうね。あなたの身近な誰かが」
――神様でも簡単には出来ない事をしてしまえるほどの強い恨み。
普段から、誰にでも優しく、恨みを買わないように生きてきた。それなのに、なぜ、こんな仕打ちを。叫びだしたい気持ちになりながらも、ふと、最後の一言が耳に残った。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、月原を見つめるが、何も間違った事は言っていない。そんな表情だ。無表情に変わりは無いが。
「身近な誰か――って事は私じゃないの?」
「あなたからは憑き物の気配は漂っているけど、憑き物自体は憑いていないわ。憑き物の本体は一番強く恨んでいるものや、強い因果のある者にとり憑くわ。恐らくあなたの身近にいるとは思うけど」
自分の身近な人間で、自分と同じように自殺をさせられそうになっている――そんな人、一人しかいない。
「もしかして――」
めぐみが答える前に、月原の口が動いた。
「――これは推測だけど、憑き物が憑いているのはあなたのお母さんね。」
――神や妖怪はいたるところに存在するが、人間とは住む世界、次元が違う為に普段は見ることもふれる事も出来ない。不可侵であり、互いに干渉する事はできないが、人や動物、霊。または物質の強い想いを依り代に具現化してしまうことがある。
神や妖怪を具現化させてしまう、想いをもったものを『依り代』、具現化した神や妖怪が人間にとり憑くと『憑き物』と呼ぶ。
憑き物はその『依り代』の想いを叶えるが、やりかたはあくまで、その神や妖怪の基準であり、人に危害を加える事も多い。
想いが果たされないと、その想いは次第に強大になり、周囲の者にも影響を及ぼすようになる。
帰り道の途中、めぐみは自転車を押しながら、月原から説明してもらった憑き物の事を思い出していた。
普段ならこの手の話しをされても苦笑いでやり過ごし、まず記憶には残らないだろう。しかし、今のめぐみにとっては、文字通り命に関わる話だ。
並んで歩く月原に視線を向けると、まるで教科書に乗っているような綺麗な姿勢で歩いている。その様子はもはや不気味ですらあった。
月原芹は成績優秀でおまけに恐ろしいほどの美人だが、変わり者で普段は殆ど人と関わりを持たないし、よく学校も休む。めぐみの中での月原像はその程度のものしかなかった。
謎に包まれたこのクラスメイトが自分の命を救ってくれる――筈なのだが、まだ何とも信用しきれていなかった。
今まで全く知らなかった世界に放り込まれ、人生観の揺らぎすら覚えているめぐみだが、月原はそれがさも当然と言わんばかりだ。
慰めるでも、励ますでも無い。普通こういう状況なら、もう少し優しくするものではないか、と思いも巡るが、それはきっと我侭なのであろうと、ひっそりと胸にしまった。
そもそもまともに話したことも無い月原の考えなど分かるはずも無いのだ。そう、急にめぐみの家に着いていくと言った真意もさっぱり分からない。しかし、ただ黙って歩いているのも決まりが悪いので、めぐみは勇気を振り絞ってみることにした。
「あのー、月原さん。本当に今から私の家に来るの?」
隣を歩く月原に話しかけるが、月原は歩みを止めずに口を開く。
「ええそうよ。多分あなたのお母さんに憑いているから、色々と調べないと」
「でも、どうしてそう思うの? 私にも憑いていたんだよね」
足が長いからか月原の歩くスピードは早い。そもそもめぐみの家を知らないはずなので、リードするのはめぐみのはずなのだが、なぜか追いかける形になっていた。
「そうよ。確かに島岡さんには良くないものが憑いていたわ。でもそれは、憑き物の…… 思念、分身とでも言えば分かり易いかしら。憑き物自体ではないの。それに人を死なせようとするほど強大な憑き物の本体だったら、あの程度では祓えないわ」
「分身だったから祓えたって、こと?」
「憑き物自身だったら、島岡さん今頃生きていないか……お母さんと同じように病院に入っていると思うわ」
「ぶ、分身で良かった……」
安堵するめぐみに月原は釘を刺した。
「分身や思念は憑き物自身とくらべると力は劣るわ。それでも自殺一歩手前まで追い込んだのだから、かなり強い憑き物ね」
怖い事をさらりと告げる月原に、めぐみは寒気を覚えた。
「でも、どうしてそんなに強くなっているのかな」
「憑き物はね、『依り代』の想いを叶える為に存在するの。その想いが果たせないと、次第に想いは強く、深くなっていくの。多分、いま憑き物は想いを果たせない状態が続いているんでしょうね」
「じゃあ、これからもっと強く」
「なるでしょうね」
無表情で言い放つが、めぐみもどこか予想できていた事だった。
「なるんだ……」
めぐみは歩きながら肩を落とした。
「――神様や妖怪は人間とは比べ物にならないような……人智を越えた力、とでもいうのかしら。そんな力を持っているわ。それだけ大きな力を持ってはいるのだけど、その力しか持っていない、とも言えるの」
「えっと、たとえば?」
「そうね……河童っているじゃない?」
「か、河童ってあの、頭にお皿があって、キュウリが好きな緑色の?」
めぐみの河童像はその程度のものだ。実際に存在するなんて思ってもいないので、考えた事もなかった。
「まあ、大体当たっているわ。地方によって肌の色とか好物は変わるけど」
「その河童だけど、人や動物を殺すときは水の中に引きずり込むの。その時の力は凄くて、たとえ横綱でも、牛や象でも簡単に引きずり込むから、一度襲われたらひとたまりもないわ」
「か、河童って強いんだね」
めぐみの中で、可愛らしい河童のキャラクター像がガラガラと音を立てて崩れていった。月原の口ぶりからすると結構怖い妖怪のようだ。
「そう。基本的には人間がどうこうできる相手ではないわ。でもね、河童ってその方法以外は使わないの」
「なんで? それだけの力があれば、殴っちゃうとか、石を投げるとか」
めぐみは河童の真似をしながら空に拳を突き出す。どう考えても、水に引きずり込むよりは手っ取り早そうだ。
「そうね、そうした方が早いわね。でもやらない。それが河童という妖怪だから」
「神様や妖怪でも、何でも出来るって訳じゃないんだね」
めぐみはよく分かったような、分からないような中途半端な位置にいたが、とりあえずはそれらしい答えを口にした。
「むしろ、いざとなったら手段を選ばない人間のほうが恐ろしいわね」
その後は沈黙が続いた。
まだまだ聞きたいこともあったが、情報の処理が追いつかない。
しかし、ひとつだけ聞いておかなければならない事がある。
「あ、あの。月原さん一つ聞きたいことがあるんだけど」
そういうと、月原はその場に立ち止まった。どうぞ、聞いてください、と言うことだろうか。そう解釈しめぐみは意を決した。
「月原さんって、何者なの?」
めぐみは言い終わった後、ありきたりで、陳腐な漫画のような台詞だと思った。
月原はその問いに振り向きもせずに答えた。
「普通の女子高生よ――。ただ少し、人より多くのものが見えるだけの」
そういうと、またさっさと歩き出してしまった。
その言葉を聞いためぐみはまるで、真綿で首を絞めらている気分になった。気がつくと膝の上で握った手に汗がじわりと滲む。
「わたしに――原因」
ようやく絞り出した声は蚊の鳴くような、頼りないものだ。
めぐみは控えめで、優しい性格だ。誰に聞いても同じ感想を抱かれる、そんな娘だった。小さな頃から殆ど喧嘩もしたこともないし、悪事と言えば、せいぜい母の作る料理をつまみ食いした事くらいしか思いつかないほど、人畜無害な人間だ。
気付かないうちに、誰かを傷つけたことはあるだろう。しかし、呪い殺されるほどの恨みを買った覚えは全くといっていいほど無い。
めぐみは自然と非難めいた口調となる。
「私は誰かに――ここまでの恨みを買うような事はしてないよ! だって、そうでしょ。死んじゃうところだったんだよ!」
取り乱すめぐみに対して月原はやはり完璧な無表情だ。感情はどこかに置いてきたらしい。
「島岡さん。気持ちは分かるけど落ち着いて」
「でも――」
「憑き物になる理屈は憑き物にしか分からない。時には逆恨みや思い違いでそうなる事もある。でも確実にあなたか、あなたの近くに原因があるはずなの」
月原はあくまで冷静だ。そんな姿を見ていると、めぐみも少しずつ冷静さを取り戻しつつあった。
「月原さん……わたしはどうなっちゃうの」
原因なんて考えても分からない。それより肝心なのは先のことだ。また同じように、首を吊りたいと、死に場所を求め彷徨うかと思うと、背筋が凍る思いだ。
めぐみは期待のまなざしを月原に向けるが、その表情からはどうにも、事はそう簡単に済まないような、そんな雰囲気を感じた。
「――お祓いをしておいたからひとまずは大丈夫。だけど根本は何も解決していないから、また時間が経てば同じ事の繰り返しになるわ」
「そ、その時は、またお祓いしてくれるの?」
「するのは構わないけど、効果があるのかは分からないわ」
月原は実にあっさりと言った。
「ど、どうして? 今はお祓いしてくれたんだよね。あれだけ死にたいって思ってたのに、今はもう、すっかり……さっぱりだし」
月原は相変わらずの無表情のまま続けた。
「もう少し早かったら、どうにかなっていたかも知れないけど…… 憑き物はね、想いが、目的が果たせないと、どんどん強くなるものなの」
――強くなる
すでに自殺寸前にまで追い込まれためぐみとっては最早死刑宣告と同じだった。
「人を死に誘う程の力を持っているんだったら尚の事ね。もう簡単には祓えないわ」
「そんな――」
月原の言葉が容赦なくめぐみの心を抉り、思わず涙が零れる。どうして自分が――まだ死にたくない、怖い――
嗚咽を漏らすめぐみをよそに、月原は話を続けた。
「たとえ神様だとしても、簡単に人を死なせることなんて出来ないわ。それをやってしまえるなんて、余程強い恨みをかってしまったんでしょうね。あなたの身近な誰かが」
――神様でも簡単には出来ない事をしてしまえるほどの強い恨み。
普段から、誰にでも優しく、恨みを買わないように生きてきた。それなのに、なぜ、こんな仕打ちを。叫びだしたい気持ちになりながらも、ふと、最後の一言が耳に残った。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げ、月原を見つめるが、何も間違った事は言っていない。そんな表情だ。無表情に変わりは無いが。
「身近な誰か――って事は私じゃないの?」
「あなたからは憑き物の気配は漂っているけど、憑き物自体は憑いていないわ。憑き物の本体は一番強く恨んでいるものや、強い因果のある者にとり憑くわ。恐らくあなたの身近にいるとは思うけど」
自分の身近な人間で、自分と同じように自殺をさせられそうになっている――そんな人、一人しかいない。
「もしかして――」
めぐみが答える前に、月原の口が動いた。
「――これは推測だけど、憑き物が憑いているのはあなたのお母さんね。」
――神や妖怪はいたるところに存在するが、人間とは住む世界、次元が違う為に普段は見ることもふれる事も出来ない。不可侵であり、互いに干渉する事はできないが、人や動物、霊。または物質の強い想いを依り代に具現化してしまうことがある。
神や妖怪を具現化させてしまう、想いをもったものを『依り代』、具現化した神や妖怪が人間にとり憑くと『憑き物』と呼ぶ。
憑き物はその『依り代』の想いを叶えるが、やりかたはあくまで、その神や妖怪の基準であり、人に危害を加える事も多い。
想いが果たされないと、その想いは次第に強大になり、周囲の者にも影響を及ぼすようになる。
帰り道の途中、めぐみは自転車を押しながら、月原から説明してもらった憑き物の事を思い出していた。
普段ならこの手の話しをされても苦笑いでやり過ごし、まず記憶には残らないだろう。しかし、今のめぐみにとっては、文字通り命に関わる話だ。
並んで歩く月原に視線を向けると、まるで教科書に乗っているような綺麗な姿勢で歩いている。その様子はもはや不気味ですらあった。
月原芹は成績優秀でおまけに恐ろしいほどの美人だが、変わり者で普段は殆ど人と関わりを持たないし、よく学校も休む。めぐみの中での月原像はその程度のものしかなかった。
謎に包まれたこのクラスメイトが自分の命を救ってくれる――筈なのだが、まだ何とも信用しきれていなかった。
今まで全く知らなかった世界に放り込まれ、人生観の揺らぎすら覚えているめぐみだが、月原はそれがさも当然と言わんばかりだ。
慰めるでも、励ますでも無い。普通こういう状況なら、もう少し優しくするものではないか、と思いも巡るが、それはきっと我侭なのであろうと、ひっそりと胸にしまった。
そもそもまともに話したことも無い月原の考えなど分かるはずも無いのだ。そう、急にめぐみの家に着いていくと言った真意もさっぱり分からない。しかし、ただ黙って歩いているのも決まりが悪いので、めぐみは勇気を振り絞ってみることにした。
「あのー、月原さん。本当に今から私の家に来るの?」
隣を歩く月原に話しかけるが、月原は歩みを止めずに口を開く。
「ええそうよ。多分あなたのお母さんに憑いているから、色々と調べないと」
「でも、どうしてそう思うの? 私にも憑いていたんだよね」
足が長いからか月原の歩くスピードは早い。そもそもめぐみの家を知らないはずなので、リードするのはめぐみのはずなのだが、なぜか追いかける形になっていた。
「そうよ。確かに島岡さんには良くないものが憑いていたわ。でもそれは、憑き物の…… 思念、分身とでも言えば分かり易いかしら。憑き物自体ではないの。それに人を死なせようとするほど強大な憑き物の本体だったら、あの程度では祓えないわ」
「分身だったから祓えたって、こと?」
「憑き物自身だったら、島岡さん今頃生きていないか……お母さんと同じように病院に入っていると思うわ」
「ぶ、分身で良かった……」
安堵するめぐみに月原は釘を刺した。
「分身や思念は憑き物自身とくらべると力は劣るわ。それでも自殺一歩手前まで追い込んだのだから、かなり強い憑き物ね」
怖い事をさらりと告げる月原に、めぐみは寒気を覚えた。
「でも、どうしてそんなに強くなっているのかな」
「憑き物はね、『依り代』の想いを叶える為に存在するの。その想いが果たせないと、次第に想いは強く、深くなっていくの。多分、いま憑き物は想いを果たせない状態が続いているんでしょうね」
「じゃあ、これからもっと強く」
「なるでしょうね」
無表情で言い放つが、めぐみもどこか予想できていた事だった。
「なるんだ……」
めぐみは歩きながら肩を落とした。
「――神様や妖怪は人間とは比べ物にならないような……人智を越えた力、とでもいうのかしら。そんな力を持っているわ。それだけ大きな力を持ってはいるのだけど、その力しか持っていない、とも言えるの」
「えっと、たとえば?」
「そうね……河童っているじゃない?」
「か、河童ってあの、頭にお皿があって、キュウリが好きな緑色の?」
めぐみの河童像はその程度のものだ。実際に存在するなんて思ってもいないので、考えた事もなかった。
「まあ、大体当たっているわ。地方によって肌の色とか好物は変わるけど」
「その河童だけど、人や動物を殺すときは水の中に引きずり込むの。その時の力は凄くて、たとえ横綱でも、牛や象でも簡単に引きずり込むから、一度襲われたらひとたまりもないわ」
「か、河童って強いんだね」
めぐみの中で、可愛らしい河童のキャラクター像がガラガラと音を立てて崩れていった。月原の口ぶりからすると結構怖い妖怪のようだ。
「そう。基本的には人間がどうこうできる相手ではないわ。でもね、河童ってその方法以外は使わないの」
「なんで? それだけの力があれば、殴っちゃうとか、石を投げるとか」
めぐみは河童の真似をしながら空に拳を突き出す。どう考えても、水に引きずり込むよりは手っ取り早そうだ。
「そうね、そうした方が早いわね。でもやらない。それが河童という妖怪だから」
「神様や妖怪でも、何でも出来るって訳じゃないんだね」
めぐみはよく分かったような、分からないような中途半端な位置にいたが、とりあえずはそれらしい答えを口にした。
「むしろ、いざとなったら手段を選ばない人間のほうが恐ろしいわね」
その後は沈黙が続いた。
まだまだ聞きたいこともあったが、情報の処理が追いつかない。
しかし、ひとつだけ聞いておかなければならない事がある。
「あ、あの。月原さん一つ聞きたいことがあるんだけど」
そういうと、月原はその場に立ち止まった。どうぞ、聞いてください、と言うことだろうか。そう解釈しめぐみは意を決した。
「月原さんって、何者なの?」
めぐみは言い終わった後、ありきたりで、陳腐な漫画のような台詞だと思った。
月原はその問いに振り向きもせずに答えた。
「普通の女子高生よ――。ただ少し、人より多くのものが見えるだけの」
そういうと、またさっさと歩き出してしまった。
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