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マフォトス
しおりを挟むAは惑星探査用のスーツを着て窓から故郷の銀河を眺めていた。
ふと窓に映る異様な姿の恐らく雄であろう人型に目をやった。
まただ、いつも慣れない。惑星探査用のスーツを着ると約72時間かけて目標の惑星の知的生命体に似せた外見とその惑星で適応できる機能を得ることができる。
この窓に映った異星人は他でもない私なのだ。
それにしても酷い見た目だ。数々の惑星探査をしてきたがその中でも惑星アモーレ以来の酷い見た目の異星人と言っていいだろう。まず私達と体が逆になっている。どういうことかというと私たちが足と呼んでいるものが上に手と呼んでいるものが下になっていて頭部も一番上についている。まるで逆なのだ。
幸いスーツのおかげで感覚に違和感はないが
しかしスーツが適応するということはある程度調査が進んでいるという事なのになぜ今更こんな辺境な惑星の探査をしなればならないのか甚だ疑問である。
私の身につけいるタイマーからアラーム音が鳴った。おっと!もうこんな時間だマフォトス達に餌をやらなくては!
マフォトスとは私達の星アポイドやその近辺の星々で大流行しているペットである。
もともとは同業者達が惑星探査中に偶然発見しあまりの美しさと気品の高さにアポイドに持ち帰り、繁殖のしやすさとその見た目で人気に火が付き大流行した。
彼らは本当に気高い。どこをどう見ても清潔で汚れをしらないのである。大きさはスーツを着た私の背丈の約三倍ほどであろうか?かなり大きい。私の船には19匹のマフォトスが乗っている。よく食べる彼らの餌代は毎月バカにならないが全く惜しい気はしない。この仕事を引退後セカンドライフとしてマフォトスのブリーダーになるのが密かな夢だ。マフォトスの凄さは気品や見た目だけではない。どんな環境にも適応し大繁殖できる。
グチャグチャと気高い音と共に餌を食べるマフォトスの姿は癒しそのものだ。仕事の疲れなどすぐに吹き飛ぶ。1匹のマフォトスの頭部を撫でると嬉しそうにキューっと鳴いた。
あと約2時間で探査目標の惑星に着く。念のため資料を読見直しておくとするか。
2時間後、私は探査目標の惑星に降り立った。私の宇宙船は大きいので目立つため、内蔵された小型宇宙船で着陸した。
どうやらあまり文明は進んでいないらしかった。街から少し離れたところに宇宙船を隠し街に向かった。
成る程私の見た目にそっくりの異星人達が沢山歩いている。今回の惑星探査の目的はこの星の知的生命体の文化や美意識の調査になっている。なぜそんなものを調べればならないのかなんて疑問に思う必要はない。どんな組織も大体幾つかは意味のない事をするものだ。
それにしてもなんて汚くて酷いデザインの建物だ。全くイかれていやがる。
街に入るとすぐに屋台のような物のついた乗り物を見かけた。どんなものが売っているのか見てみる事にする。
近くに寄ってみると物凄い悪臭だ!まるでエイテスの排泄物を300年発酵させたゲテモノ料理そっくりだ!私は鼻が引きつるどころか思わずその場で吐いた。
あわてて店主らしき人物が声をかけた。
「おいおい!お兄さん大丈夫か!?」
店主らしき人物は私の肩を抱きかかえ背中をさすった。
彼の体に染みついているその謎の料理の臭いで私は再び吐きかけたが、彼にこの屋台の料理は何だと尋ねた。
「何って、あんたこりゃただのポップコーンだ!うちの特性キャラメルソースを染み込ませてある」
ガハハハと下品な笑いをして得意げに話す彼に怒りを覚えながら、もういいと言い私は早足で立ち去った。ポップコーン、恐ろしい料理だ。この星の奴らはみんなあんなものを平気で食っているのだろうか?
少し歩いた先からさっきとは違う異臭を感じた。何だこの例えようのない独特の悪臭!
臭いを辿るとこの酷いデザインの店からのようだ。大きな窓から店内を覗くとマフォトスの色にそっくりな真っ黒な液体を飲んでいる異星人達が見えた。
この悪臭漂う店内に入ると店員に注文を尋ねられた。
私はメニューから異星人達が飲んでいる飲み物を指差した。
席に着き少し待つと真っ黒な液体が運ばれてきた。
間違いない!先ほどからの悪臭はこの飲み物から漂ってきている!
飲みたくない!本気で思ったがこれも仕事だと自分に言い聞かせて恐る恐る口にした。
そこでわたしの記憶は一時途切れた。目覚めた時私は大の字でベットの上に横たわっていた。
「店長!目覚めました!」
少し年老いて肥えた異星人が慌てて走ってきた。
「お客様!大丈夫ですか!?突然お倒れになられて私共もビックリいたしまして、その、」
話の途中で私は液体を飲んで倒れた事を思い出した。
そして本日2度目となる嘔吐をした。
「お客様!!今救急車をお呼びいたしますから!」
ひそひそ声でやっぱりコーヒーに何か入っていたのかしらと店員が話しているのが聞こえた。
大丈夫だ、私に構わないでくれと言いいそいで店の外に出た。
その後私は多くの食べ物を食べてみたが何度嘔吐したかわからないそれ程までにどれも酷い味だっだ。
建物もどこをみてもありえないデザインばかりで、凄まじしく汚い。
最悪だ。断言する。私が今まで探査したどの惑星よりと最悪の惑星だ、と。
最悪の臭いのする食べ物、最悪な外観の建物、気色の悪い色をした空、どこを取っても最低で最悪の惑星だ。
もうこれ以上ここにはいられない。精神が狂ってしまいそうだ。まだマラニィスの胃袋に住んだ方がマシだ。
しかし、足早に宇宙船に向かう途中私はふとある物に目が止まった。
それはこの街の隅のに置いてあった。それは青色の樽のような形をしていた。なぜか無性に私はその物体に惹かれ、思わず近づいてその樽の上に乗った蓋を開けた。
まず私が感じたのはその素晴らしい香りだった。樽の中にはビニールが敷いてありその中に恐らく何かの食べ残しや何かの過程で出た廃棄物が入っている。それらが混ざり合い何とも優雅で気品に満ちた香りが漂っている。
思わず私はそのビニールの中身を少しつまみパクリと食べた。
これはとんでもないご馳走だ!!私の故郷アポイドにもこれ程のご馳走は簡単には食べれないだろう!
同時に私は疑問に思った。これ程のご馳走をなぜ平然と街の隅に置き、彼らは恐ろしくまずい食べ物をたべているのか、と。
色々な仮説を立ててみたが納得いく説は出てこなかった。しかし突然納得のいく説が見つかることとなる。
この青い樽の下から私はとんでもないものを見つけた。
マフォトスだ!!
いや正確にはとても小さなマフォトスが大量に現れたのだ!
これはマフォトスの新種か!?それともただの子供か!?
いや子供にしても小さすぎる。普通のマフォトスの子供でも最低この10倍の大きさはある。
となるとまだ見つかっていなかった新種だろう。
ここでようやくは私は合点がいった。
この青い樽に入ったご馳走の正体はこの小さなマフォトスの餌であり、この樽は住み家だ。
異星人達は自分達が不味いものを食べてでもこの小さなマフォトス達にたらふくご馳走を食べさせたかったのだ。自分達が汚い住み家に住もうとも、小さなマフォトス達に美しい場所に住んでもらいたかったのだ。
私は思わず涙が出た。私はなんて愚かだ。彼らを見下していた。彼らのマフォトスへの愛は私は勿論どのアポイド星人達よりも遥かに上だ。
私はこの小さなマフォトスを30匹ほど採取するといそいで小型船に乗り、母艦に戻った。そして今度は母船で先ほどまでいた惑星に戻ると私は自分の船からマフォトスを2匹降ろした。
これは彼らへのプレゼントだ。マフォトスの首輪を外すとマフォトスは早速卵を産みつけた。
私達のマフォトスはあまりに繁殖能力が高いため、普段特殊な周波数の出る首輪をしていてこれによって産卵できないようにしている。
一回の産卵で2万匹程子供を産み何と彼らは卵から15分で成虫になる。勿論私達より遥かにマフォトスを愛するここの星の住人なら当然産卵を止める方法を熟知しているだろうしわざわざ私が教える必要はないだろう。いや、そんな失礼なことはできないというべきか。私は今彼らを尊敬していてやまない。
おっと早速私のプレゼント達が羽化始めたみたいだ。
私は母艦にのりこの星を去った。
母艦を運転しながら私は今回の調査レポートのタイトルを考えついた。
「惑星・地球の素晴らしいマフォトスへの愛について」
これにしよう。採取した小さなマフォトスもきっと大流行してくれること間違いなしだろう。
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