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プロローグ
しおりを挟むトーレ王国は海と緑を有する美しい王国であり、魔術や武力に秀でている。
主に貴族の子供達が通う学園は、早ければ六歳から十八歳まで学問や魔術を学び、この国をより良く発展させるよう努力することが貴族の勤めとも言われている。
学園は制服制で、男子は紺色のスラックスにウィングド・カフスの白いシャツにネクタイ。
女子は紺のコルセットスカートにペザント・スリーブの白いシャツを着用している。
上には紺のジャケットを羽織り、寒くなると防寒用のコートもある。
俺は、その学園で近く卒業を迎える一人である。
名前はギル・ジャメル。
帝国との国境付近を治める辺境伯爵家の三男で今年十八になる。
自慢ではないが、この世界では魔力の高いとされている黒髪と黒目を持ち、そこそこ強い魔力を使える。
容姿はまぁまぁ。
家族ほどではないが整ってはいる。
黒い髪は中央分けにし、耳が出る長さに切り揃えてある。
貴族は髪を伸ばす人も多いが、俺は長いのは面倒なので短くしている。
剣術等は趣味ではないので、ムキムキではないが。
辺境伯爵家の三男ではあるが、実は前世の記憶があるのだ。
確か日本で大学に通う普通の男子大学生だったはずだ。
この世界は愛と平和と豊作を司るスイレン神を広く信仰しており、隣国には皇帝の治めるマラサッタ帝国があり、更に隣にスイレン神を信仰する宗教大国のラッカルがあり、良い関係を築いている。
他にもエルフの暮らすセイレート王国や、先の魔物戦争と呼ばれるスタンピードを起こしたと噂されている厄介なサンジカラという国もある。
この世界は階級社会であるが、男女共に子を成すことが出来るため、同性の結婚は問題にはならない。
俺は元々同性が恋愛対象だったので、ラッキーと思ったくらいだ。
名前も容姿も覚えてはいないのだが、記憶だけはあった。
思い出したのは三歳の頃。
両親の死のショックでのことだった。
前世の記憶を思い出した時は焦ったが、中世の様な世界なのに、魔術のおかげか水道や風呂トイレは清潔にあるし、食事も食べ慣れた洋食に近いものが多くて安心した。
俺の父ゼノンは名高い騎士であり、母コリーヌは腕の良い魔術師であった。
魔物の増殖により戦に出向いた両親は帰らぬ人となり、両親に変わり父の弟である今の父が爵位と自分達三兄弟を引き取り育ててくれた。
今の父の名はレス・ジャメル。
元は王宮騎士であり、亡くなった父と同じ真っ赤な髪と優しい茶色の瞳を持つ、ダンディで長身でマッチョなイケおじである。
辺境伯爵ということもあり、武術に長け、ドラゴンをも飼い慣らす破天荒に強い男である。
自分たち兄弟を引き取った時は二十五だったのにも関わらず、しっかりと領地を治め領民の信頼も得、国にも認められるように努力を続ける立派な人だ。
次兄の病気を治すためと薬草の研究にも精を出し、効果のある薬草を今も研究し続けている。
近年少しお腹が出てきたのを王都住まいの貴族に笑われたと聞き、得意のおねだりお願い攻撃をしてダイエットさせたのは記憶に新しい。
俺の推しその一である父様を笑ったという貴族は、俺の抹殺リストに載せてある。
少しばがり手を回し、帝国からの商品を手に入り辛くしてやった。
そう。
俺には前世の記憶のせいか、推しという概念がある。
グループアイドルを箱推ししていたようで、推しが沢山いることが普通と思っているタイプでもある。
まず家族は皆推しである。
父もだが、長兄のホセもまた推しだ。
辺境伯爵を継ぐ予定の兄は、赤髪短髪で瞳は黒く、切長のアーモンドアイと綺麗に通った鼻筋等、顔はかなりのイケメンで、鍛え上げられた体はセクシーでこれまた滅茶苦茶強い。
年は俺より十上である。
王都の貴族達には田舎者と馬鹿にされていたのを知っていたので、ダンスやマナーやエスコートなどを徹底的に身につけさせた。
武力も見た目もマナーも完璧な兄は、今やどの貴族令嬢令息にも引けを取らないと自負している。
そして次兄のジェレミー。
亡くなった母の容姿そっくりで、美しく長い金髪と黒い瞳を持った儚げな美人である。
次兄はこの世界でも治療法が無いとされる、魔力拒否症という魔力の高さに体がついてこない病気を患っており、学園へは通わず屋敷で長年静養していた。
この病は厄介で、年々体を蝕み歩く事もままならず、この国の成人である十八の前に亡くなる事が多い。
しかし、父の薬草の研究により驚くべき回復を見せ、今現在は二十。
そして領地内なら自由に出歩けるようになったのだ。
俺は末っ子という事もあり、家族から沢山の愛情を貰ってきた。
その為俺にとって家族は、生涯幸せを願う推しになったのだ。
家族だけではない。
俺には他にも推しが存在する。
学園へ通うようになりこちらの寮に入った俺は、田舎者と馬鹿にされる事がよくあった。
しかし昔ながらの負けん気と優秀さと腹黒さと魔力の高さで、ことごとく踏み潰してきた。
入学からずっと成績最優秀者のクラスだし、ご自慢の魔力たっぷりの黒髪をキラッキラサラッサラに保ち、家族におねだりするよりも可愛く甘える術も持っている俺は、教師からの受けも良いのだ。
そんな俺を敵に回す者は殆ど居なくなったが、親しくしようとする者も少なかった。
そんな中、初めから優しく分け隔てなく接してくれたリーナイト公爵家のフロル様は、家族の次の推しである。
美しく長い金髪を三つ編みでひとつ結びにし、宝石のように美しい碧眼はとても柔らかく優しい。
恋ではないか、推しである。
十歳になってから学園へ入学したのだが、田舎者と言われ負けるかと肩肘を張っていた俺に、優しく王都の事や学園の事を教えてくれたのはフロル様だった。
リーナイト家は、先代の王女が降下された家柄であり三大公爵とも呼ばれ、手広く商いをしている商家でもある。
先代の公爵夫夫は俺の両親と同じように戦で亡くなっており、現父と同級であった弟のシャル様が跡を継いでいる。
リーナイト家も俺たち兄弟と同じ様に両親を亡くし、叔父に育てられており、勝手に親近感を覚えていた。
本日トーレ王国は空は突き抜けるような晴天である。
草花は競うように咲き誇る素晴らしい今日という日。
そんなフロル様を最近困らせている問題がある。
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