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10 推しの訪問その①
しおりを挟む父様の首元に仕込んだ魔術は、言うなれば隠しカメラだ。
俺の魔力は中々高く、力をコントロールできる。
ジェレミー兄様に俺が魔力で悪影響を出さない様にと、地道に習得した。
唯一気が付いたお祖父様には、悪用されてはいけないからと、黙っている様に言われている。
その為家族にも内緒である。
内緒である事をいいことに、ジェレミー兄様に影響の出なそうな所に魔術を仕込んで、離れて暮らしている家族を見てたりもする。
頻繁に実家まで帰ってきているけど、やっぱり推しは気になるもんね。
そんな事を考えながら、ジェレミー兄様と応接間でお茶の準備を見守りつつ父様の胸元に意識を集中する。
すると、早馬でこちらにいらしたセルジオ様を迎える所だった。
『セルジオ・リーナイト様。ようこそいらっしゃいました。当主のレス・ジャメルです。こちらは長兄のホセです。学園でお会いしたこともあるとは思いますが』
父の声を聞きつつ、セルジオ様を観察する。
長く黒い髪を後ろで一結びにし、金のシンプルなヘアカフスを着けている。
白のシルクシャツとクラヴァット。
クラヴァットには黄色の大きな宝石が付いていて、周りには黒曜石が散りばめられている。
黒のスラックスの上に、金糸で刺繍のされた黒のウエストコートとロングコートを着ている。
この国の正装は黒が主流で、貴族の当主や次期当主は黒地の物を良く着用している。
それにしてもセルジオ様は、我が父兄に引けを取らない程男前だ。
背はホセ兄様が一番高いが、父よりは高く体型も鍛えているのかしっかりしている。
国有数の公爵家ともなれば、ヨハンの様にチャラヒョロが多いのに。
『この度はお招き頂きましてありがとうございます。ホセ殿には学園時代に大変お世話になりました』
『セルジオ様は本当に筋が良くて、私も教え甲斐がありましたよ』
ホセ兄様がちゃんと帰属してる!
ちゃんと爵位の高いセルジオ様を立ててる!!
そんな事に感動しながら、俺はお茶のいい香りを楽しむ。
メイド達が大きな銀のポットにお茶を注いでいる。
魔道具で、暖かさがキープされるのだ。
「うーん。良い香りだねえ。木苺のような甘さがある」
「本当に。俺この匂い大好き!」
レジェミー兄様も好きなお茶。
これが商談の鍵になるのだ。
『さて、他の家族も中で待っています。どうぞ中へ』
『はい』
軽く談笑を終えると、父上が促してこちらへ向かってくる。
コンコンとドアを軽くノックされる。
外で控えているララによる合図だ。
ジェレミー兄様と頷きあって、立ち上がる。
そのまま応接間のソファ横に二人で並んで立つ。
コンコンと力強いノックが鳴り、執事のドーツがドアを開いて横にずれる。
「さ、どうぞ」
「失礼する」
父に促され中に入ってきたセルジオ様に、二人でお辞儀をする。
顔を上げると、セルジオ様は足を止め、少し目を見開いて凝視していた。
俺の隣のジェレミー兄様を!!
「セルジオ様。次男のジェレミーと、末息子のギルです。ジェレミーは初めてお会いすると思います」
「お初にお目にかかりますセルジオ様。ジェレミー・ジュメルと申します」
父上の紹介の後にジェレミー兄様が、フワッと花が咲くように微笑んで挨拶をすると、セルジオ様は止まった時が動き出したようだ。
「ああ。私はセルジオ・リーナイトだ。お招きありがとう」
それ以上言葉が出てこず、ジェレミー兄様を見つめ続ける様子のセルジオ様に、ジェレミー兄様は少し戸惑った顔になる。
おや?
おやおやおや?
セルジオ様ったら、隣の俺の事見えてますぅ?
これってもしや、レッドフルーツがパァンしましたかねえ。
ヤダァ、俺の大好きな兄様に春来ちゃった?しかも特大!!
「セルジオ様、こちらへどうぞ」
「あ、ああ」
荒ぶる感情の赴くまま心の中で高速タップダンスを踊りながら、俺はいつものポーカーフェイスでセルジオ様をソファへ誘導する。
セルジオ様を上座に座らせ、右に父上とジェレミー兄様が座り、左側にホセ兄様と俺が座る。
先程ジェレミー兄様に見惚れた自覚があるのか、セルジオ様は軽く咳払いをした。
「コホン。ジャメル伯爵。お招きありがとうございます。明日には父と弟が到着する手筈になっています。ギルに聞いた、王都で売り出したいモノについて、一足先に私が伺っても構いませんか」
公爵家次期当主として、セルジオ様が先に聞く形になるのは自然の流れだろう。
「分かりました。その前に、口外しないようギルによる魔術を掛ける許可を頂きたい」
我が領地にとって最大のモノになる為。
そしてこの世界にとっても重要になるであろうモノになる為。
色々な危険が伴う為に、国王の御前で発表するまではどこにも口外することの無い様にしたい。
その気持ちが伝わったようで、セルジオ様はもちろんだと頷いた。
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