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142 推し達の噂話の続き
しおりを挟む「あら。じゃあ、ホセ様に横恋慕してるって令嬢の話も本当かしら?」
「ああ、そう言えば王都から来た連中が話してたなぁ。何でも、自分より位の高い貴族へ婚約を迫ろうとしたり、今回もレッドドラゴンリーフで功績を上げたジャメル家に、擦り寄ろうとしてるらしいじゃないか」
ホセ兄様とフロル様の話に盛り上がっていた所に、一人がそう話題を振ると、話を知っているとまた他の人が話を広め出す。
よしよし!
こっそり平民に紛れて、話を広めておいて正解だったね。
「何でも、ホセ様以外にもフロル様のお兄様であるセルジオ様や、婚約者のいる貴族にも声を掛けていたんだって」
「えぇ~?節操がないわねぇ」
「アレだよ。王都で名ばかりの貴族なんだろうよ。それで少しでも功績のある貴族と、今後の為に繋がりたいんだろうって話だぜ?」
一人が話に加わると、更に話を知っている者が加わって、周りに広がって行く。
そろそろ名前も出て来るだろうな。
「そうそう!シンプラー伯爵家の令嬢って聞いたわよ。ホラ、後継が王都の娼館で暴れたって聞いたとこの」
「ああ、あのシンプラー伯爵家か!あそこは平民にとても偉そうに振る舞って、王都の外れの食堂で女の子にケガをさせたんだよ!俺見てたんだ!金を少しばかり多く払って謝りもしないでさぁ。あんなヤツらジャメル家の一員になって欲しくないね!!」
おっとその話は俺も最近知ったヤツだね。
「もしかして、あのフワフワ牛のスープが美味い所じゃないか?」
「そうそう!」
「やっぱり!あそこの子は可愛くて愛想が良くて評判だったのに、額をケガしたって騒ぎになってたんだよ!」
「まぁ!なんて事!!」
何でも、王都外れの美味しいと評判の大衆食堂で、シンプラー家は平民を出入りさせずに、貸切にさせろといきなり言ってきたんだと。
昼時の繁盛時だったし、そんな申し出は貴族相手でも聞かなくて良いから断ったそうなんだけど、怒ったアンルカ嬢は給仕の女性にコップを投げつけてケガをさせたらしい。
しかも、少しばかり金を払って黙らせたんだからタチが悪い。
兄がダメなら妹って話も、これが広がれば危うくなるだろう。
「その子は治癒院に行けたのかい?」
「それがさ、自分達の悪さがバレない様にと治癒院にも行かせて貰えなかったそうでさ。平民上がりだが腕の良い騎士と結婚が決まってるって言うのに、顔に傷を付けられて塞ぎ込んでしまってるんだと」
「ひどい話だねぇ。フロル様とは大違いだ」
ヒソヒソと、空気の様にアンルカ嬢の悪評が広がるのを感じつつ、俺はケガをした女性の事を思い出す。
確認の為にこっそり調べたのだが、平民上がりだが腕が良く、子供のいない貴族へと養子になる事が決まっている騎士の婚約者だった。
子爵家だが、そこも王都の騎士として有名な家系でありそこに嫁ぐ予定なのだ。
それなのに、今回の件でその話も危うくなって来ていると聞いて、さすがに俺も憤慨した。
ケガをした女性はココンと言う二十歳くらいの、茶色いボブが良く似合う笑顔の可愛らしい女性で、魔物戦争で伯爵家であった両親を亡くし親族も多くが亡くなってしまった為、巡り巡って母親の幼馴染であった食堂の店主の養子になっていた。
ケガなどは治癒院で早ければ早い程、キレイにキズが治るのだが、時間が経つとやはり多くの力が必要になるので、力の強い人に頼まないといけない。
そうなると、キレイに傷を治すって平民は中々難しいんだよね。
現在は塞ぎ込んでしまって、部屋に篭っていると聞き、俺は花祭りの話をそれとなく流して、彼女がこちらに遊びに行く様に促しておいた。
「そういやぁ、明日は貴族が音楽隊や踊り子を披露するんだろう?そいつらも来るのかね」
「どうだろうなぁ。催し物のリストには書いてなかったが…」
会場入り口には催し物のリストが貼り出されているので、皆それぞれ何を見に行くかを決めやすくなっている。
「俺さ、王都に音楽隊の知り合いが居るんだけど、シンプラー家のアンルカ嬢は音楽隊を雇おうと必死だったみたいだぜ?」
「祭りと言ったら飛び入りもあり得るからな。もしその令嬢が来たら、俺達が糾弾してやろうじゃないか」
「そうだそうだ!オール殿下も婚約者といらっしゃるみたいだからな。俺達の声を聞いてくださるはずさ」
わいわいと一致団結している人々を、俺は上手く言って欲しいと見守る。
一人、とても真剣な顔で頷いている男に目が留まる。
何かを決意した顔だな。
平民が貴族を糾弾なんて、花祭りにも相応しくないけれど、今回は話が別だ。
もし誰かが罰せられるのなら、俺は全力で守ろうと思う。
「そういや、王都で悪さを働いていたサンジカラの令嬢を、ダイヤ公爵家の元後継に引き寄せたのはシンプラー家の問題児らしいぜ?」
「ああ、俺もその話を聞いたよ。何でもダイヤ公爵家の後継は優秀な弟に代わったそうなんだけどさ、令嬢と関係を持っていた他の奴らはお咎め無しらしい」
「そりゃダイヤ公爵家のご子息も悪かったけどよ、その令嬢と深い関係にはなってなかったそうじゃないか」
「フロル様の元婚約者だろう?ホセ様と縁が結ばれたから良かったが、ダイヤ公爵家の子息も被害者じゃないか」
やっぱり平民の方が話が伝わるのが早いなと、俺は感心した。
ヨハンの汚名を晴らす為に、デラス侯爵は結構話を広げている様だね。
「ふむ。ホセ殿に懸想する令嬢の悪評も、随分広がっているな。明日の音楽祭はギルの事だから、何か考えがあるんだろう?」
テオが、俺の腰を抱きながら聞いてくるので、俺はテオの胸に甘えながら彼を見上げる。
「ふふふ。もちろんだよ。悪い貴族にお灸を据えてやりたいし、ケガをした女性を助けたいし、花祭りは盛り上げたいし、ホセ兄様とフロル様がお似合いの夫婦だってしっかり周知したいからね!」
「ギルは周りの幸せに欲張りだな。そう言う所が愛おしいよ」
そう言って、テオは俺の頬にキスをくれる。
くすぐったい様な甘い空気だが、目眩しの魔術を掛けてあるので周りには気付かれていない。
俺もテオの頬にキスを返し、また手を繋いで花祭りを楽しむのだった。
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