153 / 252
148 推し達の活躍
しおりを挟むフロル様とジェレミー兄様は、オール殿下に頭を下げると、ココンの前に立つ。
「今から治癒を行います」
フロル様がそう宣言すると、観衆はワッと湧く。
俺はホセ兄様と一歩下がり、ここからは二人の勇姿を引き立てる番だ。
「さ、ココン殿。こちらへ」
そう言ってジェレミー兄様がココンを手招くと、ココンは二人に近付き両膝を付いて祈りを捧げる姿勢を取った。
フロル様が静かにココンの額に両手をかざすと、美しい光がココンを包み込む。
「なんて美しいのかしら…」
「お、俺もああやってフロル様にケガを治して頂いたんだ。こんな平民にもとても優しくてな…」
ザワザワと風の様に、感嘆の声が溢れてくる。
「額から鼻まで結構な傷だったな」
「ええ。早く治癒院へ向かえたらキレイに治せたでしょうに」
「アンルカ嬢は、何だってあんな酷い仕打ちを」
傷は時間が経つと治癒院でもキレイに治りづらい事を、皆が知っているのでそんな声もチラホラ聞こえる。
フロル様に続き、ジェレミー兄様も額に手をかざすと、更にヒカリが美しく輝き出す。
「リーナイト公爵夫人よね?病で長く伏せていたらしいけど、素晴らしい治癒力だわ」
「お二人なら、彼女の傷もキレイに治るんじゃないかしら」
その内光が大きくなると、ココンを大きく包み込み一層輝いて弾けた。
「…さ、終わりましたよ」
「もう大丈夫」
額に汗を浮かべながら、フロル様とジェレミー兄様が花が咲く様に笑うと、ココンは立ち上がり、周りを見渡す。
「凄い…!傷がキレイに無くなっているぞ!!」
「素晴らしい治癒だわ!!」
そう声があがり、ワッと拍手が巻き起こる。
ホセ兄様はすぐにフロル様に駆け寄り、抱き上げる。
セルジオ様もジェレミー兄様を慈しむ様に肩を抱いた。
「ココン!あぁ、良かった…!!」
「ユータル…!!」
美しい二人が熱く抱擁すると、拍手と歓声は更に大きくなった。
その時、おれは花吹雪を一斉に舞わす。
そして、こっそり話をしておいた、参加していた音楽隊の人々が音楽を演奏し始める。
「見て!!レッドドラゴンも飛んでる!!」
「素敵!!」
カーリンがグルグルしている間に、俺はゴードン一家を連れて舞台を降りて、今日参加した踊り子達が勢揃いで踊りを披露し始める。
「こんなにキレイに治るなんて…っ!ありがとうございます」
ゴードンの妻は涙ながらに礼を言い、ゴードンも目に涙を浮かべていた。
「アンルカ嬢はオール殿下がしっかりと裁いてくださいますよ。どうか、花祭りを楽しんで帰ってくださいね」
俺がそう言うと、一家とユータルは深く頭を下げて外へと出て行く。
「ギル。さすがだったな」
「テオ」
そこにテオが現れ、俺を優しく抱き寄せた。
ホセ兄様とフロル様はホストだから、舞台の上で皆に手を振っていて、ジェレミー兄様とセルジオ様はオール殿下達とおしゃべりをしている。
「ごめんねテオ。一人にして」
「寂しかったぞ?ふふ。それにしても、あの令嬢は何がしたかったのだろうな」
テオとイチャイチャしながら、俺も事後処理の為にオール殿下達の元へ向かう。
アンルカは王都で厳しく取り調べがあるだろうし、シンプラー伯爵家は爵位返上で間違い無いだろう。
「…アンルカ嬢は、間違った形だけどあのユータル殿を思っていたんだろうね」
「随分と平民を下に見ていたが、そのせいでその思いも自分自身が受け止められなかったのか」
テオとそんな話をしながら、オール殿下達に合流し、今日の出来事について感謝する。
そのまま踊りと音楽を楽しんでお開きになったのだが、父様とシェル様が帰り際にトロン子爵に礼を言われたと告げられた。
「トロン子爵はパーラ伯爵とは兄弟の様に仲が良く、剣術の師事も受けていてな。今回ユータルを養子にと選んだのも、ユータルの実力もだがココン嬢が婚約者だった事も大きいんだそうだ。ゴードンの食堂は実子である娘夫婦が現在は切り盛りしている事もあり、ココンごと子爵が面倒を見ると決めたのだとか」
つまり、ココンが婚約者だから貴族へ養子が決まっていたのだ。
それなら一層、ココンに婚約破棄を迫ったアンルカは考えが甘かったなと思う。
「ココン嬢のケガを聞き、動こうとした所、シンプラー伯爵家に圧力をかけられていたそうだ。それでも諦めきれずに水面下で色々動いていたそうだ。…ギルもそこに接触したんろう?」
ふふふ~バレてるぅ。
ココンの話を聞き、何か出来ないかと色々探っていたら、俺が色々裏の情報を貰っている所から子爵の話が来たのだ。
そこに接触しつつ、アンルカの情報も貰いつつ、ココン達を利用させて貰う事にして、今回に至る。
「現在ココン嬢は平民ではあるが、それでもケガをさせた事は問題だ。今後はトロン子爵家も後ろ盾になるし、私とシェルも名前を出して後ろ盾になる事にした。後は上の判断を待とう」
「分かりました。ありがとうございます」
そのまま、父様とシェル様はリネー領の自宅へ帰って行く。
俺とテオは、ジャメル家の離れを用意して貰ってるから、今日はゆっくり休めそうだな。
317
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる