ハツカソダチ

夕暮

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昔々

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ーあぁ、忌々しい!

  ある農村の裕福な家庭に双子の姉妹が産まれた。その双子には、それぞれ花から名前をつけられた。双子の姉は"椿"とつけられ、妹には"柊"とつけられた。双子は大変可愛らしく大切に育てられた。また、仲も大変良く、何をするにもいつも二人一緒だった。

「椿姉ちゃん!雨上がったよ!」
柊が裸足のまま外へ駆けていく。まだ、地面はぬかるんでいて、柊の足はみるみるうちに泥まみれになっていった。父や母に見つかったら大目玉をくらうだろう。だけど、好奇心に勝つことはできなかった。後のことは後で考えればいいや。私も妹と一緒になって裸足で駆けていった。泥に足が沈んで走りにくかったが、少しも気にならなかった。昔から、田んぼで農作業を手伝うことが多かったからだろう。むしろ、ひんやりと足裏から伝わる感覚を心地良く感じていた。特に行く宛も、目的もなくしばらくの間、雨上がりを堪能していた。

ーあぁ、穢らわしい!

  空は次第に茜色に染まり、烏の鳴き声がもう家に帰る時刻であることを告げた。私達は泥まみれになったことなどとうに忘れ家に帰った。案の定、家に帰ると父と母に叱られた。罰として、夕飯抜きとなった。夜中、二人揃って空腹でお腹が鳴った。私達は顔を見合わせて笑った。結局、その日はお腹がすきすぎて寝れず、朝になるまで柊とお話しをしていた。こんな時間が永遠に続けばいいと思った。

ーこれは、全部、貴女達のせい...醜くて、傲慢な貴女達のせいなのよ...!

  季節は流れ、明日は年に一度の夏祭り。村人総出で準備にあたっていた。もちろん、私達も例外ではなく、祭壇の準備を手伝っていた。この祭りはこの地を守る神様のために行われているので、祭壇を用意しなければならないのだが、その準備がとてつもなく大変なのだ。普通であれば、大人がやるべきだ。だが、なぜかこの村では、私達の一族が祭壇の準備をする決まりがあるのだ。子供、ましてや女であるのに、大荷物を運ばなければならないのは、どうしても納得がいかなかった。夜には、全身筋肉痛になり、私達はいつもより大分早く寝た。

ー皆、おかしくなっちゃったねぇ...クスクス

  夜が明け、今日はいよいよ祭りの日。なんだか、ドキドキする。せっかくの祭りだし、良いことがあるといいなぁ...。

この日、私達の歯車は狂い始めた。



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