マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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交差する世界とランキング戦

第九話 科学と魔法の夜間任務

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冒険者ギルドで「月光草の採取」依頼を受注した日の午後、俺とシュタは情報収集のため王都を奔走していた。ただ依頼をこなすだけでは三流だ。事前準備と情報分析こそが、生存率を飛躍的に高める。それは学園の戦闘訓練でも、この異世界でも変わらない鉄則のはずだ。

俺たちはまず、王都の公立図書館のような施設を訪れ、依頼に関わる情報を徹底的に調べ上げた。

「マスター。収集した情報を統合します」
シュタが俺のタブレットに、整理されたデータを表示する。
「第一に、目的地『迷いの森』。内部では強力な魔力場が発生しており、通常の方位磁石は機能しません。現地では〝方位石〟と呼ばれる魔道具が用いられています」
「第二に、ターゲットの『月光草』。月の光を魔力に変換して発光する植物で、主に湿度の高い崖や岩場に自生。根が極めてデリケートで、力任せに引き抜けば即座に魔力を失い枯死します。丁寧な採取技術が求められます」
「そして第三に、最も厄介な障害、『ナイトウルフ』。夜間に活動が活発化する狼型の魔物。単体の戦闘力はEランク冒険者相当ですが、常に十数匹の群れで行動し、〝アルファ〟と呼ばれる統率個体が存在します。知能が高く、連携による狡猾な狩りを得意とし、群れ全体の脅威度はCランクに相当。弱点は、強い光や予期せぬ大音量による混乱です」

「なるほどな。情報感謝する、シュタ。対策は立てられそうだ」

俺たちは次に道具屋へ向かい、情報にあった「方位石」と、魔物の忌避効果があるという「獣除けの匂い袋」を購入した。学園都市の科学アイテムと、この世界の魔法アイテム。両方を併用することで、どんな相乗効果が生まれるか楽しみだった。

宿屋「岩壁亭」に戻った俺は、ベッドの上に持ちうる全ての装備を広げた。
学園都市製の暗視ゴーグル、小型ドローン、高硬度カーボンワイヤー、指向性ソニックグレネード、超高輝度フラッシュバン。そしてフォルダルテで買った方位石と匂い袋。
ファンタジーとSFがごちゃ混ぜになったカオスな光景を前に、俺とシュタは入念な作戦会議を開始した。

夜間任務:迷いの森
翌日の夕刻。俺たちは王都の西門を抜け、「迷いの森」へと向かっていた。地平線に最後の太陽が沈み、入れ替わるように二つの月が空に昇り始める。森の入り口に立つと、木々の闇がまるで生き物のように、此方へと手を伸ばしてくるような錯覚に陥った。

「さて、始めようか。夜間任務(ナイトミッション)の開始だ」

俺は学園都市製のヘッドライトを点灯させ、その光を一条の道しるべとして森の奥へと足を踏み入れた。同時に、暗視ゴーグルを装着する。緑色に映し出された夜の森は、昼間とは全く違う表情を見せていた。

「マスター、方位磁石に誤差が生じ始めました。タブレットのコンパス機能は信頼できません」
「了解。方位石に切り替える」

懐から取り出した方位石は、手のひらの上でぼんやりと光りながら、正確に北を指し示している。やはり魔力には魔力で対抗するのがこの世界の理らしい。

「だが、こっちのやり方も試させてもらうぜ。シュタ、ドローンを頼む」
「イエス、マスター。偵察機スカウター、射出します」

シュタの背中から、手のひらサイズの小型ドローンが静かに発進し、音もなく夜空へと舞い上がった。俺のタブレットには、ドローンに搭載された赤外線カメラからの映像がリアルタイムで転送されてくる。

『高度50メートル。森の全体像をスキャン。北東方面に崖地帯を確認。月光草の自生ポイントの可能性が高いです』
ドローンのカメラが捉えた映像には、熱源を持つ動物――おそらくは魔物――の群れも映し出されていた。ナイトウルフの群れだろう。
『さらに、複数の熱源が我々の方向へ移動中。数は12。ナイトウルフの斥候と思われます』

「いきなりお出ましか。上等だ」

俺は笑みを浮かべ、ドローンを回収すると、作戦通りの行動に移った。「シュタ、ワイヤートラップを設置する。手伝え」

俺たちはナイトウルフの進行予測ルート上の木々に、高硬度カーボンワイヤーを張り巡らせた。月明かりの下ではほとんど見えない、死の罠だ。

設置を終えて数分後。獣の息遣いと共に、闇の中から鋭い眼光がいくつも現れた。体長2メートルはあろうかという、漆黒の毛並みを持つ狼たち。ナイトウルフだ。その中でも一際体格の大きい、額に傷のある個体が、おそらくアルファだろう。

グルルル……!

アルファの低い唸り声を合図に、群れが一斉に襲い掛かってきた。だが、その数体が、見えないワイヤーに脚を取られて盛大に転倒する。

ギャイン!と悲鳴が上がるが、ナイトウルフの群れは怯まない。アルファが吠えると、後続の数匹がワイヤーに噛みつき、力ずくで引きちぎろうとし始めた。カーボン製のワイヤーが、ミシミシと嫌な音を立てる。

「知能が高いってのは本当らしいな。だが、こっちも織り込み済みだ!」

俺は隠れていた茂みから飛び出し、ナイトウルフたちの注意を引きつける。そして懐から二つの円盤を取り出した。

「お前らの弱点は、これだろ!」

一つを群れのど真ん中に、もう一つをアルファの足元に投げつける。「シュタ、やれ!」「了解」

シュタが指を鳴らした瞬間、円盤が起動した。一つは、太陽が間近で爆発したかのような閃光を放つ、超高輝度フラッシュバン。もう一つは、人間には聞こえないが、獣の聴覚を的確に破壊する不快な高周波を発生させる、指向性ソニックグレネード。

ピカァァァッ!キィィィィン!!

閃光と不快音が夜の森を支配した。「「「ギャアアアオオォォン!!」」」ナイトウルフたちは、目と耳を押さえて狂ったように叫び、のたうち回る。完璧な連携を誇っていた群れは、完全に統制を失い、同士討ちを始める個体すらいた。

「よし、今のうちにずらかるぞ!」

混乱を極める群れを尻目に、俺たちはその場を全速力で離脱した。無駄な殺生はしない。目的はあくまで月光草の採取だ。

月光草の採取と任務完了
ナイトウルフを振り切り、ドローンが示した崖地帯にたどり着いた時、俺は思わず息を呑んだ。湿った岩肌に、無数の蒼い光が星のように瞬いている。二つの月の光を浴びて、月光草が幻想的な光を放っているのだ。まるで天の川が地上に降りてきたかのような、圧倒的な光景だった。

「……きれいだな」
「ええ。ですが、見惚れている時間はありません。採取します」

シュタに促され、俺は我に返った。そうだ、これを無事に持ち帰らなければ依頼は終わらない。「根がデリケートなんだろ?どうやって採る?」「お任せください、マスター」

シュタはそう言うと、崖に近づき、そっと月光草に手を伸ばした。そして彼女の指先が、まるで生き物のように形を変え始めた。細く、しなやかに。土の中の構造をスキャンしながら、根の一本一本を傷つけないように、ミリ単位の精度で土ごとくり抜いていく。それは最新鋭の手術用ロボットもかくやという、神業的な精密作業だった。

数分後、シュタは傷一つない、完璧な状態の月光草を10本、特殊な保湿袋に収めていた。これぞ万能型の真骨頂だ。

依頼は完了した。俺たちは夜が明けきる前に森を抜け、王都へと帰還した。ギルドのカウンターでは、ちょうど仕事を始めようとしていたメリッサさんが、俺たちの姿を見て目を丸くした。

「もう帰ってきたの!?まさか、失敗……」
「いえ、成功です。これが依頼の品です」

俺が差し出した月光草の完璧な状態を見て、彼女は言葉を失っていた。「……傷一つない、だと……?あのナイトウルフの群れをどうやって……。あなた、本当に、一体何者なの……?」

俺はその問いには答えず、報酬の金貨5枚をしっかりと受け取った。宿屋に戻り、疲れた体をベッドに投げ出す。初めての依頼は、大成功に終わった。

「なあ、シュタ。科学と魔法、両方使えば、この世界でできないことなんて、ないのかもしれないな」

確かな手応えと共に、俺の胸には次なる冒険への期待が膨らんでいく。俺たちの異世界攻略は、まだ始まったばかりだ。
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