マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

文字の大きさ
33 / 46
新たなる仲間と深淵の影

第三十三話  英雄の代償、沈黙した相棒

しおりを挟む
意識が浮上すると窓から差し込む朝日がやけに目に染みた。
6月18日水曜日。あの日、異世界の厄災を鎮めてから三日目の朝だった。
俺は自室のベッドの上でゆっくりと体を起こした。脇腹と肩の傷は学園の最高水準の医療技術のおかげで、驚異的な速さで回復しつつあった。だが問題は肉体ではなかった。

左手首に巻かれた銀色のブレスレット。
かつては俺の思考に応え、温もりすら感じさせてくれた最高の相棒。今はただの冷たい金属の塊となって沈黙を続けている。
(シュタ……)
心の中で何度呼びかけても返事はない。
あの壮絶な戦いの結末と引き換えに失ったものの大きさを、この静寂が何よりも雄弁に物語っていた。

俺はランキング戦の優勝者に与えられた「特別休暇」という名の謹慎期間をただ無為に過ごしていた。
窓の外には初夏の穏やかな日差しを浴びる最峰学園都市の平和な日常が広がっている。北海道・北見市をモデルに設計されたこの都市は空気が澄んでいて、この季節は特に過ごしやすい。だがその平和な風景を見ても俺の心は晴れなかった。
もうこの窓が、あの雄大な大森林に繋がることはない。
この穏やかな日常は、俺があの世界から、仲間たちから完全に断絶されたことの残酷な証明でもあった。

「……じっとしていても始まらない」

俺は自らを奮い立たせるようにベッドから立ち上がった。
やるべきことは分かっている。シュタを取り戻す。
そのための最初の一歩を踏み出さなければならない。

シュタを救う道を探して
俺は学園のネットワークにアクセスし自室の端末でひたすらに情報を検索し始めた。
キーワードは「智慧武器」「魂核(ソウル・コア)」「エネルギー過負荷」「次元干渉による機能不全」。
瀧が隣にいればもっと効率的に的確な情報を引き出せたかもしれない。だがいないからこそ俺はあいつのやり方を真似て、自らの頭で活路を探さなければならなかった。

数時間の検索の末、俺は一つの名前にたどり着いた。
第三学園、機巧(きこう)院。智慧武器工学の権威、アリステア・クロウリー教授。
彼は智慧武器の根幹をなす「魂核」とマスターとの精神同調(ソウル・リンク)システムの、学園都市における第一人者だった。だが同時に極度の研究好きで、外部の人間、特に自分の研究に関係のない学生とは一切会わないという偏屈な天才としても有名だった。

正規のルートで最峰学園を通して面会を申し込んでも、間違いなく数週間、いや数ヶ月は待たされるだろう。そんな時間はない。
俺は直接、機巧院へ向かうことを決めた。

微かな希望の光
俺は工房に籠り、シュタの状態を必死に分析し始めた。冷たい金属のブレスレットをただひたすらに見つめる。自分の氣をゆっくりと注ぎ込んでみる。だがまるで乾いた砂に水を撒くように、俺のエネルギーは吸い込まれていくだけで何の反応も返ってこない。

もうダメなのかもしれない。
そんな諦めの気持ちが心をよぎったその時だった。
俺がブレスレットにそっと額を当て、彼女の名前を呟いたその瞬間。

――チリッ。

ほんの、ほんの僅か。
まるで静電気のような小さな小さな反応が、俺の氣に応えるようにブレスレットの奥深くから返ってきた。
それは風前の灯火よりも、さらにか細く儚い光の欠片。
だがそれは確かにそこに存在していた。

「……シュタ……」

俺の頬を一筋の熱い涙が伝った。その涙が冷たい金属のブレスレットの上にぽつりと落ちる。
相棒はまだ死んではいなかった。
ただ深い深い眠りについているだけだ。
ならば俺がやるべきことは決まっている。

俺は顔を上げた。その瞳にもはや絶望の色はなかった。
どんな困難が待ち受けていようと、どんな不可能が目の前に立ちはだかろうと。
俺は必ずお前をもう一度この腕の中に、取り戻してみせる。

俺の本当の戦いはまだ始まったばかりなのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった! 「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」 主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

処理中です...