2 / 76
1章
1.終わりと始まり
しおりを挟む
どうも、こんにちは。名も無きモブ、男子高校生Cです。
つってもモブであることに特に不満はない。主人公になれるような、波瀾万丈な人生ではないが、それってつまりは、平凡で、平穏な人生な訳で。
いいと思うけどな。俺は。今日も平和に下校中だ。
とは言え、主人公に憧れない訳でもない。俺だって男子だぞ。小さい頃の夢はヒーローだったし。
あ、でも最近RPGのジョブで気に入ってんのは魔法使いだな。剣士とかもかっこいいよなぁ。素手で戦えて、剣も魔法も使えたら最高なんだけど、そんなのは一周回ってクソゲーだ。
なんて考えながら電車から降り……くそ。おっさん邪魔だよ。降りようとしてんのわかんだろ。ドアの前陣取るな。退け。
「すいません、降りたいんですけど」
「……チッ」
おーい。今舌打ちしたなコラ。聞こえてんぞボケ。
という心の内は隠して、会釈をして電車を降りる。俺はオトナだからな。オマエと違ってなぁ!
今日は体育もあったし、国語の小テストは満点だったし、部活オフだからゲームしよう、と折角気分良かったのに、おっさんめ。
と、ぶつくさ言いながら改札を出て歩く。
駅前の交差点の横断歩道に差し掛かった時、左の方から車が来る音が聞こえてふとそっちを見る。「ちゃんと止まるよな?」みたいな確認をしたくなっちゃうんだよなぁ。
……止まるよな?信号、赤だぞ?
「っ!クソが!」
よく見りゃ寝てんじゃねぇか!目が良くてここまで感謝したのは初めてだ。
これは突っ込んで来る。だけならまだしも、このままだと俺の少し先を歩いている小学生に激突だ。
これを見逃せるほどクズになったつもりはない。
「おい、逃げろ!」
とりあえず叫ぶが、咄嗟に避ける、なんてのを小学校中学年(?)の女の子に求めるのはちょっと無理があるだろう。
間に合えよ、と思いながら叫ぶと同時にバッグを捨てて走り出す。短距離選手舐めんなよ。……ぶっちゃけ言う程速くないが。
怪我させたくねぇ、と思いながらも死ぬよりマシだろうと、女の子を突き飛ばす。顔に怪我とかしなきゃいいけd
「!」
身体に衝撃が走ると同時に景色がグルッと動いた。
その瞬間、自分が吹っ飛ばされたこと、これだけ飛んだら多分助からないだろうこと、を理解した。
かろうじて感じる身体の感覚からして、大きく前に出していた右腕と頭は、多分トラックにぶつかってない。ぶつかったのは下半身だろう。多分ね。多分。
頭が無事なら生きていられる様な気もする、というか、そう思いたくなるが、内臓が一部無事ではない気がする。さらに、大分飛んでるっぽいから、地面に叩きつけられて死ぬだろう。上下左右が分からん上に、受け身の技術は持ち合わせていない。
受け身が取れたとて、無事では済まないだろうし、そのまま真っ直ぐ走って来たトラックに潰される可能性もある。
……こりゃ死ぬな。
女の子を突き飛ばした俺の右腕が本当に無事なら、あの子は生きてる、よな?
助けて死ぬなら、まぁ、良いか?……良くはねぇな。
しかしまぁ、人間の脳みそってすげぇなぁ。一瞬でこんな量の思考をするんだもんなぁ。走馬灯じゃなかったし、目が覚めたら病院のベッドの上でしたとか、ないかなぁ。
ほら、よくあるじゃん。可愛い彼女が目に涙を浮かべてこっち見て、『よかったぁ』って言ってくれるやつ。
……ま、彼女いねぇけど。
ほんとに最期だったらどうすんだよ。こんなアホな事考えて死ぬのかよ。
父さん、母さん、ごめんな。でも、女の子助けたから褒め……て…………
…………
気が付くと俺は、
「おぎゃー、ふぇっ、ふえ、おぎゃーんぎゃー」
泣いていた。
え?は?はぁぁ⁉︎
ちょ、何?どうなってんの⁉︎
『よかったぁ』は⁉︎……あ、違う。彼女はいない。じゃあ、あれだ、白衣の天使の微笑み!『目が覚めたんですね』って!笑顔で!言ってくれるだろ⁉︎
軽くパニックになりながら、手足をバタバタと動かして……
ん?なんか、こう、違和感。
「ふえっ、ふっ、う」
俺が少し冷静になってくると、俺も泣き止んで……ええい紛らわしい!
さっきの違和感、手足が短い感じがしたんだよな。それから、今気付いたが、目が見えん。耳……は、聞こえる、でいいんだと思うが、いかんせん、何を言っているかわからん。人間の声だろう、ということしか分からないのだ。……『人間』の声だよな?
と、冷静に考えて、ある一つの仮説が立った。
『転生』したのでは?と。
これは多分、赤ん坊からやり直しパターンだ。手足が短いのもそうだし、生まれたばかりの時は目が見えないと聞いたことがある。……先天性の病気でないことを祈ろう。今のところ判断しようもないな。
となれば、疑問が一つ。
神様って、いないの?
いや、神様の使いとかでいいんだけどさ、なんか説明ないの?最近の転生系の小説はちゃんと説明あるだろ?ほら、『死んじゃったのは可哀想なので転生させてあげましょう』って。……無し?
というか、待って。わかってたけど、死んだの?助からないって思ったよ?思ったけどさ、本当に死んじゃったの?
……まぁ、なんにせよ、こうなっちまったもんはしょうがねぇ。夢でした、でない限りは戻れないだろう。
幸か不幸か、生まれたばかり(だろうと思われる)で自我がある。多少生きやすい部分もあるだろう。
今だって、精神と身体がなんとなく別々だ。どちらも俺であることに変わりはないんだが、なんというか、チグハグな感じがあるんだよな。しっかりと思考してるが、身体は未だにべそかいてる状態だ。生まれたばかりの赤ん坊に難しい顔で考え事されても困るからな。これは、良かったと思う。そのうち馴染む、と思いたい。
逆に、大変な部分もあるかもしれんが、なるようになるとしか言えんな。
そもそも、人間に転生した体で考えているが、人間じゃない可能性もあるんだよな。そうするとまた、考えないといけないことが増える、なぁ。……はぁ。
……眠くなってきたな。生まれたばかりの赤ん坊(仮)なんて、そう体力のあるもんじゃない。しょうがないか。
とりあえず俺は新たな生を満喫するってことで。
おやすみぃ。
つってもモブであることに特に不満はない。主人公になれるような、波瀾万丈な人生ではないが、それってつまりは、平凡で、平穏な人生な訳で。
いいと思うけどな。俺は。今日も平和に下校中だ。
とは言え、主人公に憧れない訳でもない。俺だって男子だぞ。小さい頃の夢はヒーローだったし。
あ、でも最近RPGのジョブで気に入ってんのは魔法使いだな。剣士とかもかっこいいよなぁ。素手で戦えて、剣も魔法も使えたら最高なんだけど、そんなのは一周回ってクソゲーだ。
なんて考えながら電車から降り……くそ。おっさん邪魔だよ。降りようとしてんのわかんだろ。ドアの前陣取るな。退け。
「すいません、降りたいんですけど」
「……チッ」
おーい。今舌打ちしたなコラ。聞こえてんぞボケ。
という心の内は隠して、会釈をして電車を降りる。俺はオトナだからな。オマエと違ってなぁ!
今日は体育もあったし、国語の小テストは満点だったし、部活オフだからゲームしよう、と折角気分良かったのに、おっさんめ。
と、ぶつくさ言いながら改札を出て歩く。
駅前の交差点の横断歩道に差し掛かった時、左の方から車が来る音が聞こえてふとそっちを見る。「ちゃんと止まるよな?」みたいな確認をしたくなっちゃうんだよなぁ。
……止まるよな?信号、赤だぞ?
「っ!クソが!」
よく見りゃ寝てんじゃねぇか!目が良くてここまで感謝したのは初めてだ。
これは突っ込んで来る。だけならまだしも、このままだと俺の少し先を歩いている小学生に激突だ。
これを見逃せるほどクズになったつもりはない。
「おい、逃げろ!」
とりあえず叫ぶが、咄嗟に避ける、なんてのを小学校中学年(?)の女の子に求めるのはちょっと無理があるだろう。
間に合えよ、と思いながら叫ぶと同時にバッグを捨てて走り出す。短距離選手舐めんなよ。……ぶっちゃけ言う程速くないが。
怪我させたくねぇ、と思いながらも死ぬよりマシだろうと、女の子を突き飛ばす。顔に怪我とかしなきゃいいけd
「!」
身体に衝撃が走ると同時に景色がグルッと動いた。
その瞬間、自分が吹っ飛ばされたこと、これだけ飛んだら多分助からないだろうこと、を理解した。
かろうじて感じる身体の感覚からして、大きく前に出していた右腕と頭は、多分トラックにぶつかってない。ぶつかったのは下半身だろう。多分ね。多分。
頭が無事なら生きていられる様な気もする、というか、そう思いたくなるが、内臓が一部無事ではない気がする。さらに、大分飛んでるっぽいから、地面に叩きつけられて死ぬだろう。上下左右が分からん上に、受け身の技術は持ち合わせていない。
受け身が取れたとて、無事では済まないだろうし、そのまま真っ直ぐ走って来たトラックに潰される可能性もある。
……こりゃ死ぬな。
女の子を突き飛ばした俺の右腕が本当に無事なら、あの子は生きてる、よな?
助けて死ぬなら、まぁ、良いか?……良くはねぇな。
しかしまぁ、人間の脳みそってすげぇなぁ。一瞬でこんな量の思考をするんだもんなぁ。走馬灯じゃなかったし、目が覚めたら病院のベッドの上でしたとか、ないかなぁ。
ほら、よくあるじゃん。可愛い彼女が目に涙を浮かべてこっち見て、『よかったぁ』って言ってくれるやつ。
……ま、彼女いねぇけど。
ほんとに最期だったらどうすんだよ。こんなアホな事考えて死ぬのかよ。
父さん、母さん、ごめんな。でも、女の子助けたから褒め……て…………
…………
気が付くと俺は、
「おぎゃー、ふぇっ、ふえ、おぎゃーんぎゃー」
泣いていた。
え?は?はぁぁ⁉︎
ちょ、何?どうなってんの⁉︎
『よかったぁ』は⁉︎……あ、違う。彼女はいない。じゃあ、あれだ、白衣の天使の微笑み!『目が覚めたんですね』って!笑顔で!言ってくれるだろ⁉︎
軽くパニックになりながら、手足をバタバタと動かして……
ん?なんか、こう、違和感。
「ふえっ、ふっ、う」
俺が少し冷静になってくると、俺も泣き止んで……ええい紛らわしい!
さっきの違和感、手足が短い感じがしたんだよな。それから、今気付いたが、目が見えん。耳……は、聞こえる、でいいんだと思うが、いかんせん、何を言っているかわからん。人間の声だろう、ということしか分からないのだ。……『人間』の声だよな?
と、冷静に考えて、ある一つの仮説が立った。
『転生』したのでは?と。
これは多分、赤ん坊からやり直しパターンだ。手足が短いのもそうだし、生まれたばかりの時は目が見えないと聞いたことがある。……先天性の病気でないことを祈ろう。今のところ判断しようもないな。
となれば、疑問が一つ。
神様って、いないの?
いや、神様の使いとかでいいんだけどさ、なんか説明ないの?最近の転生系の小説はちゃんと説明あるだろ?ほら、『死んじゃったのは可哀想なので転生させてあげましょう』って。……無し?
というか、待って。わかってたけど、死んだの?助からないって思ったよ?思ったけどさ、本当に死んじゃったの?
……まぁ、なんにせよ、こうなっちまったもんはしょうがねぇ。夢でした、でない限りは戻れないだろう。
幸か不幸か、生まれたばかり(だろうと思われる)で自我がある。多少生きやすい部分もあるだろう。
今だって、精神と身体がなんとなく別々だ。どちらも俺であることに変わりはないんだが、なんというか、チグハグな感じがあるんだよな。しっかりと思考してるが、身体は未だにべそかいてる状態だ。生まれたばかりの赤ん坊に難しい顔で考え事されても困るからな。これは、良かったと思う。そのうち馴染む、と思いたい。
逆に、大変な部分もあるかもしれんが、なるようになるとしか言えんな。
そもそも、人間に転生した体で考えているが、人間じゃない可能性もあるんだよな。そうするとまた、考えないといけないことが増える、なぁ。……はぁ。
……眠くなってきたな。生まれたばかりの赤ん坊(仮)なんて、そう体力のあるもんじゃない。しょうがないか。
とりあえず俺は新たな生を満喫するってことで。
おやすみぃ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
116
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる