転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

文字の大きさ
32 / 77
1章

31.探せ!魔力石!

しおりを挟む
「この辺でいいか」

 俺の失敗談の他にも、みんなの色々な話をしながら歩いていると、前を歩いていたカイさんが止まった。

「何をするんだ?」

 アレクが首を傾げると、カイさんが振り返っていった。

「何、って、魔力石探すんだろ?」

 忘れてた。

「魔力石探しって、先生は魔力感知でも、そうじゃなくてもいいって言ってましたけど、何かやり方があるんですか?」

 ルマが聞くと、カイさんはスパッと言った。

「ない」

「えぇっ?」

 ないの?

「魔力石って、ダンジョンの壁だったり、地面だったり、結構その辺にあるんだよ」

 驚く俺達に、シャオさんが説明してくれる。

「埋まってることもある、というか、そっちの方が多いかな。だからほら、今ぐるっと見ても、特に何もないでしょ?」

 そう言われて、ぐるっと一周見回すが、土や岩がゴツゴツした壁と地面しかない。

「僕ら冒険者にとって、魔力石は、魔物との戦闘だったり、ちょっとうっかり壁とか地面を壊しちゃった時に、ついでに取ってく程度の物なんだ。今じゃ、その辺の店で普通に買える物だからね。依頼もほとんど出ないし、買い取ってもらうなら魔物の素材の方が高い」

 冒険者にとっては、特にありがたい物ではないのか。
 てか、今『うっかり壁壊す』って言った?どういう状況になったらうっかり壊すの?いや、そんなことより、うっかり壊れるものなの?

「というわけで、手当たり次第に壁を壊してれば、そのうち出てくるよ」

 シャオさんは、『地面に穴掘ってもいいけど』と付け足して、にっこり笑う。

「なるほど……?」

 ネリーが納得しかけてる。
 いやいやいや。ダメでしょ。

「待て待て。それは最終手段だろ。子どもにそんなことを教えるな」

 カイさんがそう言うが、壊すこと自体はダメではないのか。

「魔力感知で探せなくもない。先にそっちを試してみろ。そのためにここに連れて来てんだから」

「?」

 カイさんとシャオさん以外が全員首を傾げて……と思ったら違った。

「……。そういうことっすか」

 え、なになに?どういうこと?
 子ども達が一斉にミゲリオさんを見る。

「あー、えっと。多分、なんすけど……。この場所、ダンジョン内で比較的魔力の薄い場所っす。しかもこの辺、魔力石だらけっす。遠足の目的を果たすには、もってこいの穴場っすね」

「正解。ダンジョンが魔力に満ちている、と言っても、このダンジョンは、場所によって魔力の濃さにムラがあるんだ。ここなら、君達でも魔力感知で探せるんじゃないかな。簡単じゃないかもしれないけど」

 ダンジョンの中が、外より魔力が多いのは俺も分かったが、場所によるムラなんて気付かなかった。

「さっさと始めようぜ。見つけても、勝手に壁とか地面掘るなよ。下手したら崩れるから。あんまり遠くに行くなよ」

「「「はーい」」」

 カイさんの言葉に返事をして、みんなそれぞれ少し離れる。
 アレクは真っ先に俺から離れた。

「ロアン、お前はもっと向こうへ行け」

 えー。ちょっと、アレクさん、酷くない?

「あれ?アレクとロアン、仲悪そうには見えなかったけど、どうした?」

 カイさんの疑問に、アレクが答える。

「あいつは魔力が馬鹿みたいに多いから、近くにいると魔力感知し辛いんだ。確か、ネリーは感知が得意ではないと言っていただろう?離れた方がいいぞ」

「え、そうなの?分かった」

 ネリーは、アレクのアドバイス通り、俺から離れて行った。
 うーん。素直。傷付いちゃう。

「あぁ、そうか。よく店に行ってるから慣れちゃってるけど、ロアンの魔力量って規格外なんだよな」

 カイさんが言うと、ルマも

「確かにな。俺も忘れかけてた。感知苦手だし、悪いけど俺もちょっと離れるよ」

 と言って離れてしまった。

「うそー……」

 一か月前くらいから、魔力抑制のチョーカーは着けなくなったから、魔力ダダ漏れなのは知ってるけど、抑えられるもんじゃないんだから、しょうがない。

「……どんまい」

 カイさんが肩をポンポン、と叩いて慰めてくれた。
 あれ、目から水が……。
 なんて冗談はさておき、俺も探し始める。
 しかし、ダンジョン自体の魔力が邪魔で、魔力石の魔力を特定出来ない。見つかるまで時間かかるかもな、と思ったら、開始十分もしないうちに、ラミの嬉しそうな声が聞こえた。

「ねぇ!ここ!ここでしょ!」

 ラミの方を見ると、壁を指差しながら叫んでた。
 早いな。……そういえば、ラミは、魔力感知が得意だって言ってたっけ。

「どれどれ……うん。あるね。ラミちゃん、一番乗りだよ」

 ラミの近くにいたシャオさんが、バッグから小さい鶴嘴つるはしを取り出した。

「はい、これ使って。魔力石、壊さないように気を付けて。……まぁ、壊したところで特に問題はないから、気負い過ぎずにね」

「はい!ありがとうございます」

 ラミは、鶴嘴を受け取って、壁を砕き始めた。

「この僕が先を越されるなんて……」

「ラミちゃん、早い。……私も、頑張らなきゃ」

 アレクも、ネリーも、もちろん、ルマと俺も。ラミが一つ目を見つけたのを見て、気合いを入れ直して魔力石さがしを再開する。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

アトハ
ファンタジー
【短いあらすじ】 普通を勘違いした魔界育ちの少女が、王都に旅立ちうっかり無双してしまう話(前世は病院少女なので、本人は「超健康な身体すごい!!」と無邪気に喜んでます) 【まじめなあらすじ】  主人公のフィアナは、前世では一生を病院で過ごした病弱少女であったが……、 「健康な身体って凄い! 神さま、ありがとう!(ドラゴンをワンパンしながら)」  転生して、超健康な身体(最強!)を手に入れてしまう。  魔界で育ったフィアナには、この世界の普通が分からない。  友達を作るため、王都の学園へと旅立つことになるのだが……、 「なるほど! 王都では、ドラゴンを狩るには許可が必要なんですね!」 「「「違う、そうじゃない!!」」」  これは魔界で育った超健康な少女が、うっかり無双してしまうお話である。 ※他サイトにも投稿中 ※旧タイトル 病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて魔境を旅立ちましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです~

処理中です...