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1章
31.探せ!魔力石!
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「この辺でいいか」
俺の失敗談の他にも、みんなの色々な話をしながら歩いていると、前を歩いていたカイさんが止まった。
「何をするんだ?」
アレクが首を傾げると、カイさんが振り返っていった。
「何、って、魔力石探すんだろ?」
忘れてた。
「魔力石探しって、先生は魔力感知でも、そうじゃなくてもいいって言ってましたけど、何かやり方があるんですか?」
ルマが聞くと、カイさんはスパッと言った。
「ない」
「えぇっ?」
ないの?
「魔力石って、ダンジョンの壁だったり、地面だったり、結構その辺にあるんだよ」
驚く俺達に、シャオさんが説明してくれる。
「埋まってることもある、というか、そっちの方が多いかな。だからほら、今ぐるっと見ても、特に何もないでしょ?」
そう言われて、ぐるっと一周見回すが、土や岩がゴツゴツした壁と地面しかない。
「僕ら冒険者にとって、魔力石は、魔物との戦闘だったり、ちょっとうっかり壁とか地面を壊しちゃった時に、ついでに取ってく程度の物なんだ。今じゃ、その辺の店で普通に買える物だからね。依頼もほとんど出ないし、買い取ってもらうなら魔物の素材の方が高い」
冒険者にとっては、特にありがたい物ではないのか。
てか、今『うっかり壁壊す』って言った?どういう状況になったらうっかり壊すの?いや、そんなことより、うっかり壊れるものなの?
「というわけで、手当たり次第に壁を壊してれば、そのうち出てくるよ」
シャオさんは、『地面に穴掘ってもいいけど』と付け足して、にっこり笑う。
「なるほど……?」
ネリーが納得しかけてる。
いやいやいや。ダメでしょ。
「待て待て。それは最終手段だろ。子どもにそんなことを教えるな」
カイさんがそう言うが、壊すこと自体はダメではないのか。
「魔力感知で探せなくもない。先にそっちを試してみろ。そのためにここに連れて来てんだから」
「?」
カイさんとシャオさん以外が全員首を傾げて……と思ったら違った。
「……。そういうことっすか」
え、なになに?どういうこと?
子ども達が一斉にミゲリオさんを見る。
「あー、えっと。多分、なんすけど……。この場所、ダンジョン内で比較的魔力の薄い場所っす。しかもこの辺、魔力石だらけっす。遠足の目的を果たすには、もってこいの穴場っすね」
「正解。ダンジョンが魔力に満ちている、と言っても、このダンジョンは、場所によって魔力の濃さにムラがあるんだ。ここなら、君達でも魔力感知で探せるんじゃないかな。簡単じゃないかもしれないけど」
ダンジョンの中が、外より魔力が多いのは俺も分かったが、場所によるムラなんて気付かなかった。
「さっさと始めようぜ。見つけても、勝手に壁とか地面掘るなよ。下手したら崩れるから。あんまり遠くに行くなよ」
「「「はーい」」」
カイさんの言葉に返事をして、みんなそれぞれ少し離れる。
アレクは真っ先に俺から離れた。
「ロアン、お前はもっと向こうへ行け」
えー。ちょっと、アレクさん、酷くない?
「あれ?アレクとロアン、仲悪そうには見えなかったけど、どうした?」
カイさんの疑問に、アレクが答える。
「あいつは魔力が馬鹿みたいに多いから、近くにいると魔力感知し辛いんだ。確か、ネリーは感知が得意ではないと言っていただろう?離れた方がいいぞ」
「え、そうなの?分かった」
ネリーは、アレクのアドバイス通り、俺から離れて行った。
うーん。素直。傷付いちゃう。
「あぁ、そうか。よく店に行ってるから慣れちゃってるけど、ロアンの魔力量って規格外なんだよな」
カイさんが言うと、ルマも
「確かにな。俺も忘れかけてた。感知苦手だし、悪いけど俺もちょっと離れるよ」
と言って離れてしまった。
「うそー……」
一か月前くらいから、魔力抑制のチョーカーは着けなくなったから、魔力ダダ漏れなのは知ってるけど、抑えられるもんじゃないんだから、しょうがない。
「……どんまい」
カイさんが肩をポンポン、と叩いて慰めてくれた。
あれ、目から水が……。
なんて冗談はさておき、俺も探し始める。
しかし、ダンジョン自体の魔力が邪魔で、魔力石の魔力を特定出来ない。見つかるまで時間かかるかもな、と思ったら、開始十分もしないうちに、ラミの嬉しそうな声が聞こえた。
「ねぇ!ここ!ここでしょ!」
ラミの方を見ると、壁を指差しながら叫んでた。
早いな。……そういえば、ラミは、魔力感知が得意だって言ってたっけ。
「どれどれ……うん。あるね。ラミちゃん、一番乗りだよ」
ラミの近くにいたシャオさんが、バッグから小さい鶴嘴を取り出した。
「はい、これ使って。魔力石、壊さないように気を付けて。……まぁ、壊したところで特に問題はないから、気負い過ぎずにね」
「はい!ありがとうございます」
ラミは、鶴嘴を受け取って、壁を砕き始めた。
「この僕が先を越されるなんて……」
「ラミちゃん、早い。……私も、頑張らなきゃ」
アレクも、ネリーも、もちろん、ルマと俺も。ラミが一つ目を見つけたのを見て、気合いを入れ直して魔力石さがしを再開する。
俺の失敗談の他にも、みんなの色々な話をしながら歩いていると、前を歩いていたカイさんが止まった。
「何をするんだ?」
アレクが首を傾げると、カイさんが振り返っていった。
「何、って、魔力石探すんだろ?」
忘れてた。
「魔力石探しって、先生は魔力感知でも、そうじゃなくてもいいって言ってましたけど、何かやり方があるんですか?」
ルマが聞くと、カイさんはスパッと言った。
「ない」
「えぇっ?」
ないの?
「魔力石って、ダンジョンの壁だったり、地面だったり、結構その辺にあるんだよ」
驚く俺達に、シャオさんが説明してくれる。
「埋まってることもある、というか、そっちの方が多いかな。だからほら、今ぐるっと見ても、特に何もないでしょ?」
そう言われて、ぐるっと一周見回すが、土や岩がゴツゴツした壁と地面しかない。
「僕ら冒険者にとって、魔力石は、魔物との戦闘だったり、ちょっとうっかり壁とか地面を壊しちゃった時に、ついでに取ってく程度の物なんだ。今じゃ、その辺の店で普通に買える物だからね。依頼もほとんど出ないし、買い取ってもらうなら魔物の素材の方が高い」
冒険者にとっては、特にありがたい物ではないのか。
てか、今『うっかり壁壊す』って言った?どういう状況になったらうっかり壊すの?いや、そんなことより、うっかり壊れるものなの?
「というわけで、手当たり次第に壁を壊してれば、そのうち出てくるよ」
シャオさんは、『地面に穴掘ってもいいけど』と付け足して、にっこり笑う。
「なるほど……?」
ネリーが納得しかけてる。
いやいやいや。ダメでしょ。
「待て待て。それは最終手段だろ。子どもにそんなことを教えるな」
カイさんがそう言うが、壊すこと自体はダメではないのか。
「魔力感知で探せなくもない。先にそっちを試してみろ。そのためにここに連れて来てんだから」
「?」
カイさんとシャオさん以外が全員首を傾げて……と思ったら違った。
「……。そういうことっすか」
え、なになに?どういうこと?
子ども達が一斉にミゲリオさんを見る。
「あー、えっと。多分、なんすけど……。この場所、ダンジョン内で比較的魔力の薄い場所っす。しかもこの辺、魔力石だらけっす。遠足の目的を果たすには、もってこいの穴場っすね」
「正解。ダンジョンが魔力に満ちている、と言っても、このダンジョンは、場所によって魔力の濃さにムラがあるんだ。ここなら、君達でも魔力感知で探せるんじゃないかな。簡単じゃないかもしれないけど」
ダンジョンの中が、外より魔力が多いのは俺も分かったが、場所によるムラなんて気付かなかった。
「さっさと始めようぜ。見つけても、勝手に壁とか地面掘るなよ。下手したら崩れるから。あんまり遠くに行くなよ」
「「「はーい」」」
カイさんの言葉に返事をして、みんなそれぞれ少し離れる。
アレクは真っ先に俺から離れた。
「ロアン、お前はもっと向こうへ行け」
えー。ちょっと、アレクさん、酷くない?
「あれ?アレクとロアン、仲悪そうには見えなかったけど、どうした?」
カイさんの疑問に、アレクが答える。
「あいつは魔力が馬鹿みたいに多いから、近くにいると魔力感知し辛いんだ。確か、ネリーは感知が得意ではないと言っていただろう?離れた方がいいぞ」
「え、そうなの?分かった」
ネリーは、アレクのアドバイス通り、俺から離れて行った。
うーん。素直。傷付いちゃう。
「あぁ、そうか。よく店に行ってるから慣れちゃってるけど、ロアンの魔力量って規格外なんだよな」
カイさんが言うと、ルマも
「確かにな。俺も忘れかけてた。感知苦手だし、悪いけど俺もちょっと離れるよ」
と言って離れてしまった。
「うそー……」
一か月前くらいから、魔力抑制のチョーカーは着けなくなったから、魔力ダダ漏れなのは知ってるけど、抑えられるもんじゃないんだから、しょうがない。
「……どんまい」
カイさんが肩をポンポン、と叩いて慰めてくれた。
あれ、目から水が……。
なんて冗談はさておき、俺も探し始める。
しかし、ダンジョン自体の魔力が邪魔で、魔力石の魔力を特定出来ない。見つかるまで時間かかるかもな、と思ったら、開始十分もしないうちに、ラミの嬉しそうな声が聞こえた。
「ねぇ!ここ!ここでしょ!」
ラミの方を見ると、壁を指差しながら叫んでた。
早いな。……そういえば、ラミは、魔力感知が得意だって言ってたっけ。
「どれどれ……うん。あるね。ラミちゃん、一番乗りだよ」
ラミの近くにいたシャオさんが、バッグから小さい鶴嘴を取り出した。
「はい、これ使って。魔力石、壊さないように気を付けて。……まぁ、壊したところで特に問題はないから、気負い過ぎずにね」
「はい!ありがとうございます」
ラミは、鶴嘴を受け取って、壁を砕き始めた。
「この僕が先を越されるなんて……」
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