転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

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1章

32.ネリーがいない!

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「んぁー!無い!」

 ダメ!見つかんない!……俺、センスないんかな。
 あれから一時間くらい?経ったと思うけど、俺は一個も魔力石を見つけられていない。
 アレクは一個、ラミなんか、もう一個見つけて合計二個も採取してるのに。
 グループの課題としては達成してるし、後は自由にダンジョン探索でも構わないのだが、俺だって一個くらいは見つけたい。
 感知が苦手なルマは、もう採取を諦めて、魔力感知の練習として魔力石探しをしている。
 アレクは、ラミの方が数が多いのが気に入らないらしく、『あと二つは見つけなければ……』と言っていた。ラミの方も、負けるつもりはないらしく、二人で競ってる。
 ネリーはまだもう少し頑張るって言ってたから、俺とネリーが見つけるか、白旗をあげるかすれば、ダンジョン探索になるだろう。
 ……アレクとラミの決着も、か。いつまでもやってそうだなぁ、あの二人。

「そろそろお昼にしようか。集まって、お弁当食べよう」

 お腹も減ったし、集中力も切れてたから、丁度いい。
 シャオさんの声に、みんな集まって……

「あれ?ネリーは?」

 ラミの言葉で、みんな周りを見回すが、ネリーの姿がない。

「見当たらないっすね」

「ネリー!」

 叫んでみるが、返事もない。

「ちょ、ロアン。いきなり叫ぶな……。さっきまではそこにいたんだけどなぁ」

 カイさん、ごめん。

「とりあえず、僕が周りを見てくるよ。先に食べてて」

「おぅ」

 シャオさんが、一人で歩き出す。
 俺達が今いる場所は、道としては広い方で、集まってご飯も食べれるが、少し行けば、迷路のような道が広がっている。

「シャオさん、一人で大丈夫なの?」

「それに、ネリーがいないのに呑気にご飯なんて食べられないわよ」

 俺とラミが言うが、カイさんに諭された。

「シャオなら大丈夫。俺らはこのダンジョンのマップは大体頭に入ってる。罠の場所も含めてな。それに、ネリーがいないのに、って言うが、逆だ。ネリーがいないから、早く食べた方がいい」

「どういうことだ?」

 アレクが聞いた。

「シャオがネリーを連れて帰って来ればいいが、そうじゃなければネリーは行方不明だ。危険が少ないとは言え、ここはダンジョン。魔物も出るし、罠もある。死にはしないと思いたいが、怪我はするだろう。探すのは早い方がいい」

 確かに。放っておくには危険過ぎる。

「探すとなると、一度出口に向かうにしろ、全員で探すにしろ、移動することになる……食べ損ねる可能性があるってことっすね」

「そ。飯食わないと、頭も動きも鈍る。褒められたことじゃねぇのは分かんだろ?食えるうちに少しでも食っとけ」

 カイさんは、ネリーが戻らない前提で話を進める。

「まだ帰って来ないって決まったわけじゃ……」

「そうよ!さっきまで近くにいたんでしょう?きっとすぐに帰って来るわ!」

 ルマに続いてラミも抗議する。

「……甘いっすね」

「……常に最悪の想定を、か」

 ミゲリオさんに続いて俺が呟くと、カイさんが言った。

「やっぱ賢いな、お前。その通りだ。何もないならそれでいい。だが、何かあった時に、想定外で対処出来ません、じゃ、最悪死ぬ。仲間も巻き込んでな。子どもには酷な話かもしれねぇが、これが現実だ」

「……ネリー、死んじゃうの?」

 ラミが不安そうな顔をして言う。

「いや。死ぬかもしれないって話だ。……とまぁ、散々脅した後に言うセリフじゃねぇが、心配すんな。いなくなってから、そう時間は経ってねぇ。シャオは魔力感知は得意だし、ネリーの魔力量も少なくねぇから、見つけるのも難しくないはずだ。この辺は比較的魔力が薄いしな」

 なんともまぁ……

「狙ったように探しやすい条件が揃ってるっすね」

「疑ってんのか?残念ながら、揃えたんだよ。出来るだけな」

「揃えた?」

 俺が疑問をそのまま口にすると、カイさんが説明してくれた。

「ま、発案はシャオの方だけどな。今回の話が学校側から来た時に、ある程度のマップは頭に入れておきてぇなって言ったんだよ。そしたらあいつ、『じゃあ、罠の場所とか、危険の対処法も考えておいた方がいいね』とか言って、ダンジョン潜って片っ端から罠に引っかかることになった」

 ……すげぇ。分かってて罠にかかる人って、そうそういないよな。

「あ、ちなみに、罠にかかったのは、ほぼ俺な。あのヤロー、罠がある度に俺を身代わりにしやがった」

 あぁ……。爽やかな笑顔で落とし穴に突き落とすシャオさんの姿が目に浮かぶ……。
 シャオさん、優しい顔してえげつないことするからな……。

「で、まぁ。迷子は遠足の定番だろ?魔力の薄い場所を選べば、魔力感知しやすいから、お前らも課題をこなしやすい、俺らもお前らを探しやすい。あとは、魔力感知は出来るだけ常にしておいて、五分か十分置きに、全員がいることを確認するようにしておけば、大体対処出来る。全員から常に目を離さないようにするのは物理的に無理だからな」

 途中で俺達にコツを教えてくれたり、鶴嘴貸してくれたりしたからな。……借りたの二人だけだけど。

「もちろん、この辺りに危険な罠がないことは確認済みだ」

 抜かりないな。この話が本当なら、ネリーも無事に戻ってくるだろう。

「おーい」

 シャオさんの声だ。
 みんなは顔を上げて、声の方を向くが、帰って来たのはシャオさんだけだった。
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