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行動
しおりを挟む今日中に1発。そう決心して家を出たはいいが、物色も出来てないから、まずはそこから始めないといけない。
なんでもかんでも構わず無鉄砲に突入するなんてナンセンス。俺はそんな愚か者じゃない。突入させるのも甘噛みされるのも大好きだけど。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
俺、弱々ゴブリン。少しの油断で直ぐに殺される自信はある。
だから少しでも安全に、確実に、なるべく有利な状況に持ち込み、どんな卑怯な手段を使ってでも目標を達成する。
そして立っして達するのだあ!
面倒だなって思ったけど、色々考えて、音の響きが少なそうなマンション暮らしの1人者を狙ってみる事にした。普通の思考だな。
オートロックなんてもんに安心してる奴は相変わらず多かったし、上の階だからって油断してる奴もまだ居るはずだ。
流石に女の1人暮らしで無施錠はないと思うが、トイレとか、風呂場とか、換気の為に開けてる奴も居るはず。格子なんてもんを過信し過ぎてな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
あんなもんは専用の対策したやつとか鉄格子でもない限り簡単に外せるからな。そういう仕組みだし、子供の力でも案外パキッと壊せるんだぜ。知ってたかい?
試すと色々怒られるだけじゃ済まなくなるだろうから、絶対にやっちゃダメだぞ。俺は誰に言ってんだ?
ゴブリン分からない。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
物陰になってる窓の下とかに、丈夫な鉢植えとか、物置ボックスとか、エアコンの室外機なんかがあったら最高だ。いい足場になる。
おっと。俺は泥棒の経験はなかったぞ。守る側の立場に居た事はあったが、自宅警備員でもなくて、そういう機材を扱ってたから、こういう話はよく聞いたし、研究もさせてもらってた。
それだけの事だ。そんな俺を敵に回すとはな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
早く殺した方がいいぞ。出来ればだがな。出来ればまだ殺されたくはないが。
……
……
はっけ~ん。発見、八件、発見?
ないない。そんなにない。
マンションなんて、下の郵便受けスペースを見れば、大概の状況は掴める。詳しくは秘密だ。こういう知識もアドバンテージでありメリットだ。人間側に少しでも情報が漏れるのは避けたい。
お互いに言える事だからな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
監視カメラもないマンション。ダミーっぽいのは付いてるが、あんなの見れば1発だ。これから1発やる妨げにもならん。
抑止にはなるだろうが、結局、防犯カメラじゃ実害は防げないぜ。事後処理用だ。常に監視してれば別だがな。
こんな賃貸マンションじゃ管理人も居ないだろうし、管理会社が見るにしたって、事が済んでからだ。もう遅いってな。守る為には自ら問題意識を持って考えて対策するのが基本だ。
さて。
エレベーターはない低層タイプだが、マンションだけあって共用部は蛍光灯で照らされている。
これは厄介だが、幸いな事に俺は背が低い。言っても、どうだろう、150~160って所かな。だから少し身を屈めれば、ほらこの通り。
外からは死角になって見えないだろう。所々にある格子部分ではまる見えだろうが、そんなのは早歩きで通過すればいいだけだ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
突然ドアが開かない事を願うぜ。速攻ナイフで刺してやるがな。毒付きの。騒がれると厄介だから御免被りたいぜ。
ザッ
とうちゃ~く。到着、等着、到着。
単身者向けの間取りかどうかは外からでも直ぐに分かる。
しかもベランダには若干見え隠れして見えた家庭菜園らしきプランター。電気は点いてなかったからカーテンの柄までは分からなかったが、扉の横に置かれた女物と思われる柄の傘。
角部屋だからある程度は邪魔にならずに使えてしまう共用スペース。それが仇となったな。
これでこの部屋の住人はかなりの確率で女性だと分かる。雌だった。あくまでも確率だ。柄だけでは年齢層は判断できないが、そこまで年配者ではないと思いたい。あくまでも願望だ。
数日前にこの地方で雨が降ったのかまでは知らないが、傘も床も、ここに来るまでも地面は濡れていなかった。
という事は、それなりに不用心なのか、がさつなか、めんどくさがりか。逆にありがたい。チェーンロックとかU字ロックなんかもしていない可能性もある。
よしよし。
プロファイリングの真似事は楽しいな。全く当たってない事も多かったがな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
おいおい。いいのかよ。
今どきこんな古くさい鍵使ってる賃貸物件があるなんてな。これは益々俺に襲って欲しいって言ってるようなもんじゃねえか。
こりゃあ、このマンション1棟制圧してやろうかな。ベランダからでもいいが、これなら簡単にピッキング出来そうだぞ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
工具があればな。
ぐぎゃあ~
カパッ
くんくんくん くんくんくん
気を取り直して更に中の状況を少しでも把握したい。
流石に中は見えないが、ドアポスト、郵便物投函口を押し開けて匂いを確認。
ここで役に立つのが【ゴブリン固有特殊スキル】の『雌感知嗅覚』。匂いを嗅げば分かるのだ。この部屋に雌が居るか居ないかが。ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ。
おう。多分これは雌の匂いだ。仄かに香ってくる淫靡な香り。やはり俺のプロファイリングは正しかったか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
待ってろよ。直ぐに気持ち良くしてやるからな。
俺が。俺も。ゴブ棒も。
ぎゃっぎゃっぎゃっぎゃっ。
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