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初めての……

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 現在確認中歩行物体発見。

 流石に漢字をこれだけ並べると分かり難いな。深夜なだけに、こっちもそれなりに分かり難い。

 あれはまさかと思ったが、時折街灯に照らし出される小柄で全身緑色の肌。そして汚ならしい腰布。間違いなくあればゴブリンだろう。

 1匹か? いや。1人か?

 その様だな。俺も1人だし。

 それにしても弱そうだな。猫背で動きもどんくさそうだし、手にはなんか持ってるけど、棒だよな。棍棒じゃなくて、只の木の枝っぽい感じの細い棒っ切れ。

 うん。弱そうだ。最近のガキは発育がいいから、勇気があれば雄でも雌でも簡単に倒せそうだな。それを勇者と言うのか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 ここは喜ぶ所とそうじゃない所が混じった笑いだったんだが、まあいいだろう。発育って言葉だけでもエロく感じられる俺は下品かな。今更か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 俺も最初の時は、後ろから見たらあんな感じだったんだろうか。なんか悲しくなって来たぜ。馬鹿野郎。

 それにしても、深夜とは言え、田舎道とは言え、あんなに堂々と道の真ん中を歩くとはな。流石ゴブリン、恐るべし。


 辺りを警戒しながら近付き、なるべく優しくを心掛けて声を掛けてみる事にした。

 俺にとっての第1発見ゴブリン。仲間になるかもしれない相手。雌じゃなかったのは残念過ぎてぶっ殺してやりたくもなるが、【ゴブリン魔物特性】に『同族同士戦闘禁止』とある。

 だから多分大丈夫。いきなり喧嘩になったり戦闘に発展する事はないはず。だよな。

 背は俺より少し低いみたいだ。だからより安心して話し掛けられそうだ。なんだろうな。このちょっとだけ優越感。やっぱり身長ってあった方がいいな。適度にな。


「おい。こんな所を堂々と1人で歩いて何やってるんだ。不意打ち食らって殺されるぞ」

「ぐぎゃっ! な、なんだ突然!」

 くっ。大声出してんじゃねえよ。くそゴブリンが。俺もか。

「おいっ。大声出すな。突然話し掛けたのは悪かったが、場所を移動しよう。人間に見付かったら終わりだぞ」

 俺も被せて大声出しそうになってしまったが、なんとか堪えて話を続けた。さっき出しといた甲斐があったか? それは違う出汁か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 これでダメなら見捨てるつもり満々で待ってるんだが、まんまんもない馬鹿な奴に用はない。まだ驚いて目を見開いてるようだが、早く何か言え。きったねえなあ。


「な、なんだ同族だったのかぐぎゃあ。全然気が付かなかったし、変なの着てるから余計に分からなかったぐぎゃあ。びびらせるんじゃねよ。まったく。ぐぎゃぐぎゃ」

 いきなりフランクか。これがゴブリン仕様か? 気を使う方が馬鹿っぽいな。時間が掛かったのは俺のせいでもあったのか。気配遮断とジャージ姿だったな。


「お、おお。悪かったな。とにかく移動するぞ。ここじゃあ不味い」

「お、おお。不味いってんなら不味いのか。分かったぜ」

 少々強引に話を進め、近くにある公園を目指す。言葉が通じて良かったぜ。グギャグギャ言われるだけならどうしようかと思ったぜ。

 しっかり付いて来てくれるようだな。良かったのか残念なのか。それはこれから分かるだろう。

 公園と言ってもただ遊具があるだけの小さな公園じゃない。緑地公園ってやつだ。地図で見た限りでも面積は広く、ここに来るまでにも木々が生い茂っているのは確認できた。

 やや広過ぎる気もするが、逃げ込むには丁度いいだろう。


 それ程馬鹿そうでなくて良かった。ここで更に騒ぎ出したら放っておこうと思ってたからな。

 それに、俺は気配を殺したままだったから。それで驚かせてしまったのもあるようだ。気配遮断:LV5。なかなかやるじゃないか。匂いも消せるのか? ゴブリン同士だからか。今はいいか。

 それにこのジャージもよくないか。こいつらから逆に襲われる可能性すらあるかもな。仲間を集めたいなら脱いどくか。

 それに今は夜って言うか深夜だ。公園に紛れるなら脱いだ方が迷彩になるな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 おっ。異次元収納、超便利~。着たままでも収納できちゃうじゃん。あっと言う間に腰布1枚ゴブリンの登場でーす。

 今更だけに、ちょっと恥ずいな。だが仕方ない。本来の姿はこっちだな。

 でも、これがあれば速攻真っ裸戦士の登場が出来ちゃうじゃん。ル◯ンダイブ出来ちゃうね。パっと脱いじゃって。まあ、そんな相手が見付かるといいな。

 この姿ならそんなひと手間も要らねえか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

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