24 / 143
初めての……
しおりを挟む現在確認中歩行物体発見。
流石に漢字をこれだけ並べると分かり難いな。深夜なだけに、こっちもそれなりに分かり難い。
あれはまさかと思ったが、時折街灯に照らし出される小柄で全身緑色の肌。そして汚ならしい腰布。間違いなくあればゴブリンだろう。
1匹か? いや。1人か?
その様だな。俺も1人だし。
それにしても弱そうだな。猫背で動きもどんくさそうだし、手にはなんか持ってるけど、棒だよな。棍棒じゃなくて、只の木の枝っぽい感じの細い棒っ切れ。
うん。弱そうだ。最近のガキは発育がいいから、勇気があれば雄でも雌でも簡単に倒せそうだな。それを勇者と言うのか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
ここは喜ぶ所とそうじゃない所が混じった笑いだったんだが、まあいいだろう。発育って言葉だけでもエロく感じられる俺は下品かな。今更か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
俺も最初の時は、後ろから見たらあんな感じだったんだろうか。なんか悲しくなって来たぜ。馬鹿野郎。
それにしても、深夜とは言え、田舎道とは言え、あんなに堂々と道の真ん中を歩くとはな。流石ゴブリン、恐るべし。
辺りを警戒しながら近付き、なるべく優しくを心掛けて声を掛けてみる事にした。
俺にとっての第1発見ゴブリン。仲間になるかもしれない相手。雌じゃなかったのは残念過ぎてぶっ殺してやりたくもなるが、【ゴブリン魔物特性】に『同族同士戦闘禁止』とある。
だから多分大丈夫。いきなり喧嘩になったり戦闘に発展する事はないはず。だよな。
背は俺より少し低いみたいだ。だからより安心して話し掛けられそうだ。なんだろうな。このちょっとだけ優越感。やっぱり身長ってあった方がいいな。適度にな。
「おい。こんな所を堂々と1人で歩いて何やってるんだ。不意打ち食らって殺されるぞ」
「ぐぎゃっ! な、なんだ突然!」
くっ。大声出してんじゃねえよ。くそゴブリンが。俺もか。
「おいっ。大声出すな。突然話し掛けたのは悪かったが、場所を移動しよう。人間に見付かったら終わりだぞ」
俺も被せて大声出しそうになってしまったが、なんとか堪えて話を続けた。さっき出しといた甲斐があったか? それは違う出汁か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
これでダメなら見捨てるつもり満々で待ってるんだが、まんまんもない馬鹿な奴に用はない。まだ驚いて目を見開いてるようだが、早く何か言え。きったねえなあ。
「な、なんだ同族だったのかぐぎゃあ。全然気が付かなかったし、変なの着てるから余計に分からなかったぐぎゃあ。びびらせるんじゃねよ。まったく。ぐぎゃぐぎゃ」
いきなりフランクか。これがゴブリン仕様か? 気を使う方が馬鹿っぽいな。時間が掛かったのは俺のせいでもあったのか。気配遮断とジャージ姿だったな。
「お、おお。悪かったな。とにかく移動するぞ。ここじゃあ不味い」
「お、おお。不味いってんなら不味いのか。分かったぜ」
少々強引に話を進め、近くにある公園を目指す。言葉が通じて良かったぜ。グギャグギャ言われるだけならどうしようかと思ったぜ。
しっかり付いて来てくれるようだな。良かったのか残念なのか。それはこれから分かるだろう。
公園と言ってもただ遊具があるだけの小さな公園じゃない。緑地公園ってやつだ。地図で見た限りでも面積は広く、ここに来るまでにも木々が生い茂っているのは確認できた。
やや広過ぎる気もするが、逃げ込むには丁度いいだろう。
それ程馬鹿そうでなくて良かった。ここで更に騒ぎ出したら放っておこうと思ってたからな。
それに、俺は気配を殺したままだったから。それで驚かせてしまったのもあるようだ。気配遮断:LV5。なかなかやるじゃないか。匂いも消せるのか? ゴブリン同士だからか。今はいいか。
それにこのジャージもよくないか。こいつらから逆に襲われる可能性すらあるかもな。仲間を集めたいなら脱いどくか。
それに今は夜って言うか深夜だ。公園に紛れるなら脱いだ方が迷彩になるな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
おっ。異次元収納、超便利~。着たままでも収納できちゃうじゃん。あっと言う間に腰布1枚ゴブリンの登場でーす。
今更だけに、ちょっと恥ずいな。だが仕方ない。本来の姿はこっちだな。
でも、これがあれば速攻真っ裸戦士の登場が出来ちゃうじゃん。ル◯ンダイブ出来ちゃうね。パっと脱いじゃって。まあ、そんな相手が見付かるといいな。
この姿ならそんなひと手間も要らねえか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる