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遭遇
しおりを挟む町のスポーツ用品店を目指し、近道となる大きな緑地公園を横断中にそれは起こった。俺も怒った?
周りに人影はありやせんって言ってなかったか?
俺も『雌感知嗅覚(大)』は当然の事、『雄感知嗅覚(中)』でも警戒してたのだが、気付いた時には遅かった。
風向きまでは変えられないから仕方ないが、屋外だけに、これだけに頼るのは危険だと分かった。
でも分かった所で次に活かせなければ意味がない。まさか初日でこれとはな。死んだら終わりだぐぎゃあ~
「あっ。やっと発見。よしよし。今日はついてるぞ。早速経験値になってもらお」
そう言ってよく通る声と共に現れたのは、これまでだったらコスプレだと思って微笑ましくもあり、羨ましくも思える格好をした、どこからどう見ても戦闘装備の若い野郎だった。
右手にはよく切れそうな剣。左手にはよく魔法を弾きそうな光沢のある盾。体には少し重そうではあるが、革製のしっかりした鎧を纏っていた。頭だけは無防備で。
「ちっ。お前は『人類防衛軍』の人間か? まさかとは思うが、人間側にも『人類殲滅軍』が居るって事はないよな?」
つい聞いてしまった。しまったと思った時には遅かった。死を思ってしまって焦ってたんだろう。
そんな陣営の話を聞いちゃいけねわな。俺も選択者だと晒してるようなもんだ。俺アホゴブリン。見逃してくれよぐぎゃあ~
「ん? あれ。2匹居たのか。どこに隠れて居やがった。危なかったじゃん。良かったあ。でもラッキー。お前も経験値になってもらお」
「……」
違う意味でしまったぜ。まさか俺に気付いてなかったとは。俺やっぱりアホゴブリン。反省しっぱなし。
ファイチクンよりは俺のが若干背が高いから、見えなかったって事は気配遮断の効果があったって事だ。話し掛けなきゃ1撃先に入れられてたかもな。くっそー。
驚きこそしたが、直ぐに元に戻って殺る気満々の少年。いや。青年? どっちでもいいか。2人居るから少しは警戒しているようだ。じりじりとではあるが、周りも警戒しながら近付いて来る。
ヤベーな。勝てる気がしない。いや。やってみないと分からんか。やっぱり最近の子供は発育がよろしいようで、確実に俺達よりは身体能力が高そうだ。
偏見かもしれないが、これが魔物側から見る人間。選択者って事かもな。装備まで着けて殺る気になってるからかな。さっきまでの家で寝てたり寛いでたりしてた奴等とは、根本からして違う。
まだ初日だ。お互いに経験値を求めてさ迷ってたって事になるんだろう。俺は仲間と装備を求めてるんだが、それも今はいいな。どうすんべ。
・ファイチクンを生け贄にして逃げる。
・ファイチクンを囮にして隙を突く。
・2人で左右から挟撃する。
・話し合いで見逃してもらう。
・話し合いで油断させてナイフで刺す。
若干、卑怯な思考に片寄ってる気もするが、それが俺だ。
よし。多分逃がす気は無さそうだから、少しでも油断させて2人で何とかしよう。俺も男だ。ゴブリンだ。流石に初日で死にたくねえ。
1発やったけど、あんなのやったうちに入らない。入ったけど、入れたけど。もっと気持ちのいい交尾がしたい!
それが今の俺の原動力。生きる力とは、これを言う!
「お、おい。少年。未成年者がこんな時間にそんな危ない物持って何やってんだ。遊びじゃないんだぞ。出来る事なら話し合おう。どうだ?」
俺は何を言ってるのだろうか。なんて思ってない。話し合いこそ隙を作る常套手段。なんてな。初めての経験です。優しくしてね? ゲロゲロぐぎゃあ~
「ん? お前さっきから何言ってんの? グギャグキャ煩えなあ。おっ。やっと見えた。暗いと見え難いんだよな。何々、う~ん……」
「……」
どうやら俺の言葉は届いてないようだ。日本語喋ってると思ってたら、これはゴブリン語? そうかグギャグキャ煩えか。俺もそう思うかもな。そっちの立場だったらな。
ちょっと恥ずかしいぜ。話し合いなんて端から成立しないとは思ったが、まさかの言葉から通じない問題。
ファイチクンにはどう思われてるのだろうか。まあ、それもいいか。これも経験。これで最後になろうとも。
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