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更に拾いもの
しおりを挟む一時拠点のマンションにたどり着くまでにそれは起こった。
遠くの方で消防車のサイレンが聞こえて来たが、既に大分離れていたので俺達が気付かれた事はなかったと思いたい。
それよりも、殺られ役は殺られ役らしく、弱々ゴブリンは同じような場所でリポップするらしい。多分だが。さっきは居なかったはずだから。
「兄様。同族です。森の中でぽつんと立っていました」
スカウトのスイチクンからの報告でそれはもたらされた。出来ればスカウトらしく、雌ゴブリンだけをスカウトして来て欲しい。今後はそっちの能力を高めて欲しいとも思った。勿論、言ってない。
それと、森じゃなくて公園な。勿論、面倒だからそれも言ってない。
「兄貴。奴もまだ若いようで直ぐには使い物にならないと思いやすが、職業によっては化けるかもしれやせん。兄貴の望むままに扱ってやって下せえ」
ファイターなのにそんな事まで分かっちゃうの? ファイチクン。俺よりもゴブリンを見る目はあったりして。
「……。私は特にございません。ご主人様の望むままに。……」
ちょっと見ただけなのに、欲情してガン見してた訳じゃないのに、俺の視線を感じたラナがそう言った。
望むままなら今すぐラナと交わりたい。特にないならやりたい放題じゃん。勿論これも言ってない。
「あっ、ど、どうもです。僕はどうしたらいいですか?」
俺はまだ何も言ってなかったのに、スイチクンよりは年上で、ファイチクンよりは年下っぽい雰囲気の雄ゴブリンが、躊躇いながらも言って来た。
ぽつんと立ってたらしいが、ちんこは立ってなくて良かった。
聞き取りによれば、特に何かをやってた訳じゃない。少し前にぽつんと1人で公園内に現れて、どうしていいか分からなくて突っ立ってたらしい。それより前の記憶はないそうだ。
本当にリポップしたとするならば、手ぶらで気弱、礼儀正しくもあるっぽいけど、学習は出来ないって事になる。
殺される気満々の経験値用ゴブリンじゃん。こんなんばっかなら、それこそゴブリンは雑魚キャラ確定しちゃうじゃん。これは不味いと思ったね。
ゴブリンだけに大した経験値じゃないかもしれないけど、経験値は経験値だ。逆にそれを利用するって手もあるけど、やりようによっては囮に使えるけど、今は純粋に戦力を増やしたい。
早速このパーティーに必要そうな役職、職業を与える事にした。勿論、本人も同意の上で。
「では、マイチクン。言いたい事はあるかもしれないが細かい話は拠点でする。取り敢えず付いて来てくれ」
「は、はいっ。分かりました。ありがとうございますっ。兄貴っ」
そんなに緊張しなくていいのにな。若いっていいな。
俺に並んで拠点まで戻る事になった『ゴブリンマイチクン』。比較対象として俺と同じマジシャンにしてやった。手品師の方じゃない。魔法も手品みたいなもんだけど。
使える魔法は、ゴブリンファイヤーのみ。1日3回。
早くも俺との違いが現れた。初っ端から使える魔法の数が1つ違った。俺は2つだったから、1つだけとは言え、なんか優遇されてるようで嬉しかった。
レベルが上がって更に使える魔法が増えてたし、その辺の比較も出来ると思っている。
俺、ファーストネームドゴブリン。やはりそれなりには能力も高いようだ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。素直に嬉しいぜ。ゴブリンとは言え上位種って感じがビンビンする。
これはビンビンにガンガンでズコズコやるしかねえな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
マイチクンは大人しい性格のようで、これと言って初期能力も感じてなかったようだった。
色々あってそれでいい。ゴブリン、能力では差別しない。雄は雄。みんな一緒だ。雌だけは別格かもしれないが。
アーチャーも良かったが、弓がない。流石に町のスポーツ用品店には置いてなかった。残念。
普通の弓ではサイズ的にどうかと思ってたけど、ないものは仕方ない。弓矢の数とか消耗品なだけに懸念事項もある。後衛なら大した装備は要らないって事もある。
弓はサービスで付いて来て、弓矢はマジシャンみたいに制限はあるけど湧いて来るとかだったらいいのだが、それも職業に就けてみないと分からない。
恐らくそんな都合のいい仕様ではないだろう。今の時点でそんな冒険は冒したくない。俺達は冒険者じゃないからな。犯したくはあるけれど。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
遠距離攻撃は多くて困る事はないだろう。1日3回しか撃てないけど、レベルが上がれば増えるのは確認済みだ。俺でだが。増える度合いも比較できるだろう。楽しみだ。
ちんこの比較はしないがな。誰得にもならねえし、変な所でダメージは受けたくない。ちんこだけに変な所。でもねえか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
拠点に無事たどり着いた時には、俺はレベルは『3』になっていた。
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