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走馬灯は、そう、魔塔

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「よ~し、よしよしよし。よくやったぞ。コボチャン」

「ガウ~~」

 わしゃわしゃムツゴロ○さんタイム。ウ?

 これもいいもふもふだあ。ゴブリン感動。どさくさに紛れて撫で撫でからもふもふにグレードアップした。

 これぞご褒美タイム。互いにとってのな。勿論、傍から見れば二足歩行の魔物がじゃれ合ってる様に見えるだろう。違うかな。まあいいや。俺は気にしない。

 これも飼い主とペットの大切なコミュニケーション。これを嫌いなゴブリンが居て?


 コボチャンが何か食べてたようだけど、拾い食いしたのかな。俺は何も与えてないけどな。まさかとは思うけど、さっきの噛み千切ったやつだったりするのかな。

 俺は気にしない? 気になる年頃なんですが。どうしましょう。今後の食事やおやつタイムは冷えた肉塊って事になったりするのかなあ?

 ゴブリンも雑食だから行けるかもしれないけど、コボルトも犬だから行けるのかな。そういうの。俺は嫌だけど。

 ……

 遺体だけに、痛い?

 ん? なんか痛い?

『トスッ』って聞こえた気がするんですが、気のせいじゃないみたい?


「ぐぎゃあーっ! なんじゃこりゃーっ!」

 俺もうるせえなっ!

 俺の胸から棒が突き出てる?

 あっ。これ、矢じゃね? 嫌じゃね?

 あれ? 結構ヤバそうなのに、全然痛くない?

 あれ? これって、死ぬ前のやつ?

 死ぬ時には脳内物質、ドーパミンだっけ? が出て痛みを感じないって聞いた事があるような。ないような。和らぐんだっけ? あれ?

 死ぬのか。俺。ちょっとちくっとしたような。こんなんで死ねるのか? あれ?

 コボチャン。そんな顔して俺を見るなよ。悲しくなっちゃうぞ。って、

「コボチャン。まだ敵が居たんだ! 俺の事はいいから警戒しろ! また矢が飛んで来るぞ!」

「ガ、ガウッ!」

 ダダッ!

 あっ。コボチャン行っちゃった。分かってくれたんだろうか。イったのか。そうか。弓使いが居たんだな。俺達が感知できない遠くで警戒してたのかも。な。それかそういうスキルとか。

 くっ。

 トスッなんて聞こえたから、誰かレシーブして、俺に繋いだのかと思ったぜ。そして俺がアタックしなきゃいけなかったのに、俺がアタックされたんだな。

 ははは。笑える~。違った。ぎゃっぎゃっぎゃ~。

 俺が投擲で仕留めた奴等もこんな感覚だったんだろうな。なんて思ってしまうのは、走馬灯ってやつなんだろうか。ゴブリンにもあったんだな。そういうの。

 俺のゴブリン生、短いようで長かったなあ。いや。長いようで短かったか。

 それでもよくやったぜ。天使ともやったし、孕ませる事も出来た。成長を見届ける事が出来ないのは残念だけど、仕方ない。それもゴブリン生さ。

 ……

 あれ。でも、本当にこの惨状とは違って、全然痛くもないし、血も出てねえし、どうなっちまったんだろうか。コント道具みたいだぜ。俺の胴。胴なっちまったんだい?

 ……

 あっ!!

 これかっ!

『ゴブリン専用異臭付き防衛具:ゴブリンの魔法の腰巻き』

『全身に受けるダメージを固定化『1』にする』効果。

 こいつだ!

 初めて攻撃受けて気付いたぜ。これ、すっげーチートじゃん!

 きたきたきたーーっ!

 って、これがきたきた躍りの語源か!?

 本家は片仮名だったっけ? カタカナキタキタ。

 恥ずかしいから躍りはしないけど。飛び上がりたくなる程の衝動はある。やったぜ、ゴブリン。

 知ってたはずなのに。

 俺、ゴブリン。忘れ易い生き物です。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 助かったーっ!

 よく考えたら、こんな所で動かない俺なんていい的のはずなのに、追撃が来ないって事は、このまま絶命してるって思われてるのだろうか。こんな妄想も悪くなかったか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 流石にこりゃ遺憾。こんな事してる場合じゃなかったやい。コボチャンを追うんだ。あっちだな。

 ザッ

 どこに居やがるんだ。こん畜生。簡単に抜けたからいいようなものを。血も付いてないから良かったけど、ちょっと穴は空いてんじゃん! 大丈夫なのか、俺?

 適当に何か食っとくか。

 ボリボリボリ

 うん。うめーな。スナック菓子ってカロリー気にしたら負けだけど、発明した人天才だよな。尊敬するぜ。余計なもんが入ってなけりゃな。

 人類を不健康にするって意味では極悪非道のS級戦犯かもしれないけど、そんなの食う奴の自己責任だしな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。俺は気にしない。

 おっ。塞がったじゃん。

 やるじゃん、ゴブリン。お菓子で回復しちゃうなんて、なんて素敵な体質でございましょう。ポーション要らずじゃん。魔物万歳。

 
 それにしても、気付かぬうちに撃ち抜くなんて、なんて卑怯な奴だ。はっ! まさか秘境に居るのか!

 違うな。俺も同じ事繰り返してんだから称賛しないとな。しないけど。ぶっ殺してやるぜ。雌はら秘境にお仕置きしてからな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 どこだ! コボチャン!

 あの角を曲がった所までしか分からない。なんとなく匂いはロック・オンしてるけど、離され過ぎると追えないぞ。ゴブリンだけに。

 くっ。足が遅いのが腹が立つ。

 ならば妄想再会!

 いや~、それにしてもゴブリン命拾いだったな。

 これが頭を狙われたらどうだったんだろうか。流石に脳を破壊されたら即死だよな? それもダメージ『1』って事でなんともないのかな。そうだといいな。試したくはないけど。

 ゴブリン脳ミソ無さそうだから頭に攻撃受けても大丈夫か? ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 HPなんて概念はないようだけど、最低でも俺のHPは『2』以上って事は分かったな。実は『2』だったりして?

 ない事もないかもしれないから笑えないけど、こんな俺の脳へのダメージも『1』にして欲しいぜ。既に小数点以下だったりして? ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 あー。愉快だぜ。生きてるって素晴らしい。

「っ!」

 コボチャンの匂いが直ぐそこに。そこかっ!

 ザッ

「えっ!? こ、コボチャン!?」

 ……

 その光景を見て固まる俺。ちんこは柔らかいまま。止まった弾みでぷらんぷらん。

 生きてるって素晴らしい。死ぬとこうなっちまうんだな。魔物は消えるようだけど、人間は消えないんだもんな。そりゃそうか。ははは。違った。ぎゃぎゃぎゃ。


「ガウッ!」

 お、おう。そうか。

 そこには、やってやったぜと言わんばかりの笑顔で、口元を真っ赤に染めて、尻尾を振り振りしながら褒めて欲しそうに俺を見詰めるコボチャンが居た。

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