65 / 143
進行と出会い
しおりを挟む施設のスタッフは皆事務所に居たようで、その他の入居者に関しては、相手が相手だけにフロアを制圧するのにそんなに時間は掛からなかった。
言っちゃ悪いが、それも今更だ。子供のゴブリン程度の身体能力って感じだろうか。所詮は足腰の弱ったじじいとばばあって事だった。
姿形も、色さえ塗り替えれば俺達と見分けが付かないんじゃないかって個体が居たかもしれない。よく見れば違うだろうが、しっかり見ないと分かり難いレベルではあったと思う。
誰がとは言わないが、どれだけ居たのかも言えないが、雄雌の判別も難しい年頃だけに、それも仕方がないのかもしれない。俺も長生きしてたらああなったのかもな。
……
微妙だな。
ゴブリンは端からそんな姿形してんだからな。すげーだろ。ん? 嬉しくねえな。取り敢えず笑っとくか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。ぐぎゃあ~
本当に今更失礼だとは思うが、人生の大先輩方に対して申し訳ないとも思うが、人生には引き際も肝腎だと思い知らされたよ。ありがとうございます。
お礼にその引き際をプレゼントさせて頂きました。お返しは要りません。ゆっくりあの世で過ごして欲しい。天国か地獄か。それはあなた方次第です。ってな。
間違ってもゴブリン退治には来ないで欲しい。元じじばば勇者とか勘弁して欲しいぜ。ゴブリン特化型のスキル持ちとか出て来たりしてな。対ゴブリン補正特大とか。臭い耐性極大とか。
……
そんなん無くても余裕か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
耳が遠いっていうのもあったかもしれないが、外の様子に関心すらなかったのかもしれないが、特に騒ぎにもならずに着々と殲滅を進められた。
ビバ、老人ホーム。他のこういった施設も率先して襲撃しよう。他の魔物に取られる前に。ゴブリンのレベル上げには最適かも。同じ様な感じだし、途中で見分けが付かなくなったりしてな。夜なら特に。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
俺が3階に上がった時には、コボチャンは4階へと続く階段を駆け上がって行こうとしていた。スピード・スターの称号をあげたくなった。
俺に気付いたコボチャンが立ち止まり、俺を見詰めてこちらの状況を窺っているようだったから言っておいた。
「俺は大丈夫だ。コボチャンも大丈夫そうだな。そのまま上へ行ってくれ。俺はこのフロアの制圧を確認してから上がるから、上は全部任せるぞ。出来るか?」
「ガウッ!」
「分かった。任せたぞ。コボチャン」
「ガウッ!」
マジ有能。コボチャン最高かよ。全身真っ赤になってるから、更にスピードが上がったようだ。
それは血じゃない。そういうカラーリングだ。そう言い聞かせる事で笑顔で居られた気がする。ゴブリンそういう知識があって良かった。
全く問題ないって感じで嬉しそうにして行ってしまった。そんな顔してイってくれるといいよな。って感じだった。
尻尾もふりふりで駆けて行った。走ったら揺れるのは当然か。俺も揺れながらラナに掛けてやりたいぜ。なんてな。
称号も、赤い彗犬のコボチャンにしよう。きっと分かってくれるよね。そうだといいな。また会えるかな。
いかんいかん。今はここの制圧だ。
おっと。
しっかりこっち側の獲物は残してくれていた様だ。やるな。血の痕で分かるっていうのもすげーよな。あっちは大惨事。こっちは綺麗なまま。これ大事件。
そんな気を使わなくてもいいのに。律儀なのかお前もしっかり働けと言われているのか。まあ、後者だろうな。ゴブリン遅いしな。それは仕方ない。あと少し。気は抜かずに頑張るか。
戦闘の興奮もあるからか、出来れば1発抜きてえが、ばばあ相手にそりゃねえか。ん? それもやってみないとか? ……。
ないな。
いや。あった。会ってしまった。
年齢なんて関係ないんだな。美しいものは美しいと言えるゴブリン。それが俺。
どんな年の取り方をすればこんな笑顔で居られるのだろうか。その辺しっかり聞きたい所だが、難しいか。俺ゴブリンだしな。
出す事は出来ても意思の疎通は出来ないか。残念だ。
そこは車椅子が置いてある部屋だった。他でもあったけど、すっきりと整えられた個室は、どこかいい香りすらして来そうな雰囲気に包まれていた。
そんなセレブが入居するような施設じゃないのにな。外観も、内装も。
だが。おっとりとしていて品がある。こんなお姉さんは好きですよ。以前はそんな趣味はまだなかったが、これは大お姉さん? 大々お姉さんか。
いや。色んな所が縮んでるから小々お姉さん? まあいいや。客観的にはばばあだな。間違いない。
だが!
俺は一瞬で思ったね。
こりゃやれる。
これならやってみる価値はある。
ゴブリンに言われたくないだろうが、そう思ってしまったのだからしまったぜ。既に生殖能力はないだろうにな。そんなおかしな感覚を持ったゴブリンは嫌いですか?
そもそもゴブリン好きは居らんやろう。ぎゃっぎゃっぎゃっ。ぐぎゃあ~
ちっ。
ジャージなんか着て来なけりゃ良かったぜ。脱ぐのが面倒だからな。このひと手間がもどかしい。
それでも一瞬で脱げるけど、爪には注意しないと危ねえからゆっくりと。入れる前にダメージ入れたら笑えない。それでも俺は笑うがな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
そんな事を妄想してて固まってる俺に告げられた。
「あら。なんですか。可愛い生き物ですね。少し顔色は悪いようですけど。それに、そんなに汚れてしまって大変でしょうに。こっちへいらっしゃい。おばあちゃんが綺麗にしてあげますよ」
「……」
俺は思ったね。
こいつイカれてるのか? ボケてんの? 逝ってんの?
言葉が通じると思ってるのだろうか。俺ゴブリンだぜ?
はっ。そう言えば、話し掛けちゃうのは俺もだった。他にも掛けるけど。
ファイチクンの時も、選択者の時も、コボチャンの時もやってたな。同じ様に話し掛けてたわ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。同類か?
だが!
あっしは血みどろの不法侵入者でやんすよ? 兄貴。それはファイチクン。元気してるかな。
ゴブリン見てそれか?
まさか知らないのか。ゴブリンを。ふっ。すっかりアイドル気取りだったようだぜ。ゴブリンもまだままだだったようだ。もっと頑張らないとな。
でも、嫌じゃないんだろうか。この淑女。なんて優しいんだろうか。初対面のはずなのに。早く人間になりたい。なんて風貌してる自覚はあるのにさ。
はっ。思わず、雌じゃなくて淑女なんて思ってしまったぜ。言っても淑雌だったぜ。しまったあ! だだボケてるだけもしれないのに。
どうやらナニも分かんねえらしいから、和姦希望者なんだろう。そう思う事にした。
そして、長考の末、つい、足が出てしまった。ちんこはまだだ。
ふらふらと、ペタペタと、誘われるままに歩いて近付くゴブリン。それは俺。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる