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検証とその後

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 対価は、聖魔法の検証って事と、どうなっても文句は言わない事。そして、やっぱり俺達に敵対しない事。

 口約束だが、雄と雄との約束だ。年齢なんて関係ない。そこにプライドがない雄なら今後相手にされないだろうし、碌な死に方も、生き方もしないだろう。って事まで話して納得させた。


 ゴブリン、口も立つ。ちんこよりは立たねえけどな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 で。で。

 バンクンの欠損してしまった左腕の治療検証は、

 ヒールじゃダメ。

 ハイヒールでもダメ。

 エクストラヒールでなんとかなりそうな気配はしたが、結局ダメ。

 最後のパーフェクトヒールですんなり回復しましたとさ。

『ゴブリン』付いてるのにな。バンパイアにも効くって面白いよな。まあ、魔物用って感じって事で受け入れた。悪い結果じゃなかったし。

 いい検証になって良かった。バンクンも腕が復活して良かった。お互いに万々歳。まんがないのが残念だっただけ。

 イケメンが、あ、ああっ。いっ、いいっ!?

 うっ、ううううっ、えっ、ええっ?!

 おっ、おおぉっ!!

 って唸ってるのは微妙だったけど。まったくゴブ棒は反応しなかった。良かったぜ。


 で、喜んでる姿も余りにも爽やかで格好よかったから、

「ちっ。イケメンはナニをやっても画になりやがるな。羨ましいぜ」

 なんて口から出てたみたいで、

「えっ? イケメン? ……。僕?」

 なんてイケた面して不思議そうに聞いて来やがったから、やっぱりアブソリュートホーリー試してやろうかとも思ったが、実はそんな気にもなれない程に見惚れてしまってたのが実情だ。ゴブリン、不覚!

 家にあった鏡を見せてやったら、あら不思議。これもバンパイアあるあるで、姿は映らなかった。

 折角、雄から見ても格好いいって素直に思ってしまえる程に整ってるのに、その自分の顔が確認できないって、どんな罰ゲームやねん。ってちょっとだけスッとした。こんな嫉妬心のあるゴブリンは普通ですよ?

 俺の姿はばっちり映ってたしな。醜いゴブリンとして。ぎゃっぎゃっぎゃっ。ぐぎゃあ~


 こりゃあ、騙される雌は多いだろうな。ナニを騙すかは知らないが、雌ならホイホイ付いて行きそうだ。やっぱ使えるかもな、バンクン。

 雌々ホイホイになってもらおうか。夜行性同士なら動きも合わせられるし、案外いいコンビかも? なんてな。ゴブリンに雌を譲る雄は居らんやろう。俺でも嫌だしな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。ちっ。


「じゃあ、そういう事で、俺は行くからな。経験値を稼ぐのに忙しいんだ。バンクンも夜になったら動けるようになるんだろ? それまではここで大人しくしておきな。じゃあな」

 って、泣く泣く別れを告げたのに、このイケメン、やはり俺に惚れたらしい。

「えっ。そ、そんなあ。悪いとは思ってますけど、ゴブリンさんの邪魔しちゃいけないって分かってますけど、確かに夜になったらもっとマシに動けるとは思いますけど、……。

 出来ればもう少し助けて頂けませんか? 必ず受けた恩は返します。僕、いじめられてた頃から思ってたんです。人が嫌がる事はしちゃいけないって。

 でも、やられた事はしっかり返したいって。それがいい事でも悪い事でも同じだと思うんです。

 だから信じて下さい。もっとレベルが上がってゴブリンさんみたいに強くなれたら、きっと役に立つバンパイアに成ります。そうしたらゴブリンさんの為に働きます。

 最低でもこの恩を返せるまではそうしたいと思ってます。良かったら仲間に入れて欲しいんですけど。でもお邪魔かもしれませんし、バンパイアって怖がられるかもしれませんし、そこまでは言っちゃダメですよね。

 でももう少し助けて下さい。お願いします。これも口約束になっちゃいますけど、なんなら真名に懸けて誓ってもいいです。ゴブリンさん。ダメですか?」


 よく理論立てて話が出来てるような、しっかり自己主張も出来てるような、舌の回る本当にしっかりした少年だった。年は聞いてないから年齢詐称って事ではないが、見た目と僕っ子、これまで話してきた内容から、そう疑ってしまうゴブリン。

 だが、惚れられた訳ではなかったらしい。利用したかったらしい。そんなの当たり前ゴブリンだった。

 全部本当の事を言ってるのかは分からない。でも、ここまで必死にすがってくるイケメンを突き放せるゴブリンが居て? ここに居る? ぎゃっぎゃっぎゃっ。


「さっきも言ったけど、口約束でも雄と雄との立派な約束だ。それを理解しながら、更にそこまで言うって事は本気なんだろう。

 バンクン。俺はバンパイアの特性は知らない。真名に懸けて誓うとナニか発動するとかなら止めておいた方がいいぞ。

 お互いに人間だったんだ。そこまで簡単に信用するもんじゃないと思うぞ。これは俺にも言い聞かせてるって事だけどな。

 そこまで深刻に考えなくても、互いに理解し合おうと思える相手なら俺は歓迎だ。その上で利害関係が成り立つのなら言う事はないけどな。


 今は確かに使えないかもしれないが、ぶっちゃけ、種族的にはバンパイアの方が優位な個体だと思うぞ。

 確かに知ってる奴には警戒されるかもしれないが、そんなの関係ないって位に強くなってやればいいだろう。逆に俺の方が頼りにさせてもらう存在だと思うけどな。

 それに、バンクン。上から目線で悪いとは思うが、俺はこんなゴブリンだ。それが嫌なら離れてくれてもいい。その時は素直に言ってくれれば何とも思わない。

 人はそれぞれだと思うし、魔物になってもそれは変わらないだろう。

 でも、俺は騙されるのは好きじゃないから、そうと分かったら徹底的に仕返しするけどな。それこそ命を懸けて。


 それを踏まえて、俺からすると、君は中々出来た人間だったようだし、好感が持てる。顔は整い過ぎてて青白くてムカつく位にイケメンだけど、それも武器になる。

 1人って言うのは心細いのも分かるけど、いくら強くなっても1人じゃやれる事に限度があるってのも分かってる。俺には既に仲間が居るからな。

 バンクン。今は俺の方が強いだろう。体力でも、物理でも、魔法でも、正直勝てる気しかしない。でも、そのうち抜かれる自身もある! それがゴブリンだ! ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 でも、それも理解した上で言うぞ。

 バンクン。仲間になろう。互いに協力しよう。最低でも人類を殲滅するまでは。争わない。邪魔しない。互いの仲間も含めてな。

 バンクンがこんなゴブリンでも気にしないって言ってくれるなら、こんな感じの俺でも良ければ、出来る事なら、一緒にいじめのない魔物社会を作ろうぜ」


 言われたら言い返す。倍返し。どころじゃねえな。よく喋るゴブリンは嫌われますよ。既にそういう存在か。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 調子に乗って、こんな真面目な恥ずい事をどんどん語っちゃうゴブリンです。あー。恥ずい。顔が緑で良かった。全身だった。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 ん? しっかり聞いてるなって思ってたのに。今はうつむいてぷるぷるしてるな。ナニか可笑しかったか?

 ゴブリンが真面目に話すと笑われるのか? そりゃあ楽でいいな。簡単に笑いの取れるゴブリンは芸人になれますか?


「ゴブリンさん! 僕、僕、感動しました!

 上から目線なんて全然思ってません!

 ゴブリンとか、バンパイアとか、そんな種族なんて関係ないですよね! 思いが同じなら、目標が一緒なら、仲間は仲間ですよね!

 僕、ゴブリンさんと一緒にそんな社会を作りたいです! いじめのない魔物社会、一緒に作らせて下さい!」


 イケメンが言うと説得力が全く違うのな。このイケメン。格好いい。それをイケてる面。イケメンと言う。

 ゴブリンの場合は、雌なら何でもイくのオッケーのイけ免だろうか。見境ねえからな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 俺ゴブリン、言っておいて何だが、正直そんな事まで出来るとは思ってない。妄想は自由だが、言うのはタダだが、実際にやるかどうかは別の話だ。雌問題じゃなくてな。


 若い頃には本気で改善とか、改革とか、そんなものにも憧れた。でも、反対勢力、既得権益を確保してる奴等の数が多過ぎて、正攻法では無理だと悟った。己の無知を思い知らされた。

 大した事はしてなかったけど、ちょっとだけ動いてみた時期はあったけど、それでも知ってしまった。やっぱり俺は無力だったと。

 だからこんなゴブリンになったんだなと思った。たった今。お似合いだろう? ってな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 だが、このイケメン。バンクンは違う。これからナニがあるか分からない。若さは力だ。こんな状況になってるのだから、俺にもやれる事はあるだろう。実際にこうして殺ってるし。まだまだ殺るつもりでは居るが。

 ゴブリンが社会生活の上で、人の上に立てるとは思ってない。雌には目がないゴブリンだしな。必ず問題になるだろう。そこは揺るぎない自信があるぜ。

 だが、このバンクンならどうだ。きっと皆から愛される立場に居られるだろう。そうだといいな。

 俺がバンクンの立場だったら御免だけど。そういうのにも向き不向きもある。俺はちんこを剥いてる方が向いている。当たり前ゴブリン。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 只のイケメンじゃなく、将来も楽しみにさせてくれる格好よさがある。久し振りに熱くなるものを感じさせてくれたぜ。戻ってラナとコボチャンとやって来ようかな。


 わくわくが止まらないのはバンクンも同じようだ。そんなに熱い目で俺を見るんじゃねえ。魅了スキルとか使ってんのか? こんちくしょう。

 そんなの必要なしで、魅了されてしまう自信もあるぜ。危ねえなあ。ちっ。

 早くこの場を離れよう。一旦仕切り直しだ。拠点に戻る所からにしようかな。がっつりやって、そこから始めよう。ゴブリンの原点はそこにある!

 この高鳴りを静めるにはそれしかねえな。やりたいばっかゴブリン、ここに在り!



 その後、興奮してるバンクンと少し話し合い、夜に合流する約束をして家を出た。

 メッセージアプリで登録したスマホを渡してある。ナニかあれば連絡するようにとは伝えて。


 俺達は、基本的には自由でいいが、人間の殲滅で協力する仲間となった。上下関係はないが、話し方は変えない。バンクンも打ち解けもらって構わない。

 って感じで終わった。

 一応、飲み物とおやつは置いてきた。スナック菓子の方のおやつな。コボチャン用は、やっぱりまだ無理らしい。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 別にいじめる為に出してやった訳じゃない。確認は必要だし、冷静にならないとな。お互いに。俺は悪くないゴブリンだよ? ぎゃっぎゃっぎゃっ。きも~

 ゴブリンに『2』のダメージ。

 血みどろの遺体と、「股あとでね」とのイケメン・スマイル挨拶によって。

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