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撃退者

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「っ!」

 ファイチクン登場か! ここからでは見えないが、多分そうだろう。現場が緊張感を持ってざわついた。

 恐らく、『魔法返しの盾』を持ったファイチクンが格好よく登場したのだろう。いいな。あれ。かっきーんって魔法を跳ね返してみたかった。銃を跳ね返せるかは知らんがな。

 って、今はそこじゃない!

 今だ! ざわついた集団に魔道士の魔法の雨を!


「ファイヤーランス! ×6!」

 ブバッシュン! ×6

 …… ズボッシュッ! ブボッバアンッ! チュドーンッ!

 ブッボワッ! バッキャーン! ドッガーン!

「ぬうわっ!」
「突然なんだあっ!」
「ぎゃあああ~っ!」

「うっげえっ!」
「いいぃやああっ!」
「うっうわああああーっ!」


 ちっ。うるせえなあ。やっぱりこうなるか。威力があり過ぎる。人間は1人くらなら貫通し、車に当たった炎の槍がガソリンに引火したのだろう、見事な花火を上げ、更に延焼を広げている。

 そこに更なる追撃だ。仕方なかろうて。突撃、背後から放たれた複数の高威力魔法。俺でも騒ぐ自信があるぜ。こりゃやべえ。

 大した連射は出来ないが、それでも連続で放たれた炎の槍。俺も格好いいと思う。ゴブリンじゃなきゃな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 だが、まだだ! まだ終わらんのだよ!

 ゴブリン、気配を殺して速やかに移動。遅いけど。


 そして放たれる更なる魔法。

 次は!

 目には見えないだろう風の刃!

「デュアルカッター! ×8!」

 スッシャシャンッ!! ×8

 ズッパッ スッパンッ! ザッシュッ! ブッシィー!

 ザグッ! グブッ! ドムッ! シャッスーンッ!

「きゃああっ!」
「ぐっわああっ!」
「はうっ!」
「い、いやだああっ!」
「今度は切れてるう~っ!」


 ぐっぎゃあ~。これもやべえな。色んな意味で。

 固い物に当たろうともナニかしらの傷は付けて行く。そんな変な音もしたようだ。深い意味はないだろう。

 雄でも雌でも近くに居た奴等は一刀両断。2つずつ放たれるのに、一刀って。防具もなければ、薄着であれば斬れるのな。こりゃすげえ。

 ただの切り傷じゃねえレベルで深く斬れてるのが分かる。中には文字通り真っ二つになった雄も居たようだ。走りながらスマホは危えぞ。既に遅いけど。


 そして!

「ファイヤーアロー! ×10!」

 ドッシュンッ! ×10

 …… ザックッ! ドシュッ! パッキャーン! ……

 ボンッ! バンッ! ボッバッン! ……

 ブワッ ボワッ ズババババン! ……


「ぎぃやああ~~っ!」
「まだ来るぞ~~っ!」
「に、逃げろ~~っ!」
「撤退だああ~~っ!」

「キャーッ!」
「ぐっわーっ!」
「また炎があっ!」
「あ、足があぁっ!」
「い、いやああぁっ!」


 更に追い撃ち! 俺に向かって来る奴も含めて狙い撃つ!

 これなら動きながらも発動可能な攻撃魔法。

 ザッ

「ファイヤー! ×18!」

 バッシュン! ×18

 ドンッ! ガンッ! ゴンッ! …………

 バッシャ! ボッゴン! パッキャ! …………


 うらうらうらうらうら~~っ!

 べっかん、こーっ!!

 ぎゃっぎゃっぎゃっ~~~っ!

 しねしねしねしねしねえ~っ!

 乗り乗りで撃ちまくるぜえっ!

 俺達を襲おうなんて甘いぜっ!

 ちょっとだけ遅かったなあっ!

 危ねえ危ねえ。危機一髪だぜ!

 1発違いで死にさらせやあっ!


 ゴブリン、愛する者を守る為、容赦はしねえ!

 そして時折、毒ナイフ投擲も織り交ぜつつ、ゴブリン怒りの棍棒も火を吹いた。後で拭いとこう。ぎゃっぎゃっぎゃっ。



 ふい~。

 よし。そろそろいいか。既に現場はボロボロ。まとまった動きをする人間は居ないようだ。指揮官は殺ったかもな。

 ちらほらと動く物体もあるようだが、所々で火が着いてるから、それもしっかりとは把握できないか。

 それでも上出来ゴブリン。満足だ。

 あとは、各個撃破だな。魔法攻撃を一旦止めれば、コボチャンが動き出すだろう。頼んだぞ。俺以外の雄にやられるなよ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


【ファイチクン! 目の前の敵は凪ぎ払った! 前面に出て押し立てろ! まだ生き残りも居るようだが、確実に止めを刺すんだ! 行けいっ!】

【はっ! 御意っ!】

 本当は別の者に指示を出して伝えたかったのだが、今は仕方ない。ファイチクンの魔法返しの盾を前面に押し立てさせいっ!

 って言いたかった。分かる人にだけ伝わればいい。足もあるしな。ちょっと分かり難いかも。


 俺も更に愛の棍棒とゴブリン魔法で各個撃破だ。魔道士の魔法もまだまだって、……。

 レベルが上がれば使用回数も回復。更に新魔法あり。

 こりゃあ、俺のゴブリン無双は止まらねえな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 今撃てる数、全部大放出だ! そしてやるっ! 殺るだった。使い切れるかな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 まだあれだけの警察官が居た事も驚いたけど、未だに銃火器を率先して使わない姿勢はどうなんだろうかと思ってしまったが、既に組織のトップの者達は、殺されたか逃げたかしたのだろうか。

 それなら尚更に自分達の身を守る為にもその力を使えばいいのにな。警察官なんて、中には偏見に満ちた上から目線野郎も居たりしたが、それ以外なら尊敬しかなかったからな。不祥事起こしてた連中は勿論除くけど。

 こんな世の中になっても、市民を守る為に出動して来るだけでも大したもんだ。御愁傷様でした。

 逝った奴等は、また人類防衛軍を選ぶのだろうか。厄介な相手になると思うけど、願わくば、これまでの体制に反抗すべく、殲滅軍を選んで欲しいぜ。

 ストレス凄いって聞いてたからな。下もそうだし、中間層は尚更に。ああ。お疲れ様でございました。武器や装備はしっかり活用させてもらうから安心して逝ってくれ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。



 その後も、魔道士の魔法は凄かった。やっぱりこれぞ魔法使いって感じ? 基準はそれぞれ。ゴブリン魔法よりは凄いのは間違いない。当然、使い切るなんて事は出来なかった。残念。

 水魔法のウォーター、フロー、プールも威力があって、広範囲に効果を発揮して、足留めとか、嫌がらせには抜群だった。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 ウォーターウォールなんて、俺の方がビックしたぜ。これなら漏らしてもまるっと誤魔化せるだろうが、そもそもゴブリン排泄要らずだから漏らせない。出るのは精子だけってな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


 風魔法のブラストも、土魔法のサンディング、ピットフォールも抜群の効果を発揮してくれた。

 風を起こしてふっ飛ばしたり、進行を妨げたり。広範囲に砂を撒いて目潰ししたり、突然落とし穴を作っちゃうゴブリンは嫌われますか? ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 俺なら真っ先にぶっ殺すな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。既に殺してやったがな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。笑い過ぎて疲れたゴブリン。今日1番疲れたかも。ぎゃっぎゃっぎゃっ。あー。早く1発やりてえぜ。

 だってよ。途中で覚えた大魔法。名前も格好良かったけど、エフェクトも文字通りでかっけーって叫びそうになったし、威力も凄かった。


 その名も、『ファイヤーバード』『ウォーターバード』だぜ。『1号』『2号』とか名前付けたくなったぜ。年代がバレるから付けないけど。

 ちょー燃えた。俺も対象も。そしてちょー水ってた。懺悔レベルを超えて大ダメージ与えてた。

 まあ、どっちも死んだんだけど。診断するまでもなく即死だったろうな。あれも食らいたくねえな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。家まで逝ってたし。

 あれはヤバ過ぎ大魔法。サンダーも欲しいと強く願う。


 今回は、まさに大勝。大勝利! 俺はやってやったぜ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


【皆聞け! 周囲の危険は去った! 俺達の勝利だ!】

【……】


 ナニも返らない。それが一斉念話の欠点。俺は寂しくなんかない。俺にはコボチャンが居る。そして、ファイチクンも居たんだった。

 ザザッ

「御意っ! 流石でございます!」

 結構早い動きが出来るんだな。ファイターって。スカウトには劣るだろうが、その姿は格好いいじゃないか。そこまで急いで来てひざまずかなくてもいいのに。

 だが、無傷とはいかなかったようだが、そこまでの深い傷はなさそうだ。流石だぜ。半分くらいは俺のせいかもしれないが。聞く訳にはいかないぜ。

 あっ。ファイチクンは『ソルジャー』に転職したんだった。名前はそのままだったら忘れてた。忘れ易いゴブリンでごめんな。それも言わないが。


「ファイチクンもよくやってくれた。ありがとう。お陰で時間が短縮できたぞ」

「はっ! ありがたきお言葉!」

「うん。ファイチクンは『1番隊の隊長』な。これからもよろしく!」

「はっ、ははあっ! ありがたきお言葉。このファイチクン、身命を賭して拝命致します!」

 ん? なんか受け取り方が違うような? 俺との温度差か? まあいいか。それに、すのは拝命じゃねえだろう。って思ってしまうゴブリンは無知なのか?

 まあ、気持ちは伝わればいいのか。そんなの気にしちゃいけねえな。ゴブリンだしな。お互いに。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


「コボチャンもありがとう。見事な活躍だったぞ」

「ガウガウッ!」

 ふっ。可愛いのにな。本当なら。でも今のコボチャンは、真っ赤っ赤。これでまっかっか。あっちもこっちも真っ赤っ赤。ぎゃっぎゃっぎゃっ。ぐぎゃあ~

 ファイチクンに軽い乗りで役職を与えたつもりだったが、そう言えば『二つ名』っぽいな。1番隊隊長って。色んなもん読み過ぎか。

 なら!

「コボチャンには、『赤い彗星』の二つ名を付けちゃうぞ。これからは『赤い彗星のコボチャン』として活躍を期待するぞ」

「ガウガウガウッ!! ハッハッハッ」

「はっはっはっ。そうか。そんなに嬉しいか。俺も嬉しいぞ」

 もふもふタイムに突入か? そしてばこばこタイムに突入ってか。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 でもその前に。これはもふもふじゃない。べとべとだ。これは嫌。しっかりシャワーは浴びないとな。そこでもやる事にはなるんだろうが。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 俺だけじゃなく、皆興奮してるだろうし、ゴブリン、これから股やりまくりパーティーだな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。各個にな。


 コボチャンの二つ名は、分かる奴にだけ分かればいい。誰に言うでも、誰が呼ぶでもないだろうが、普段は赤くないしな。茶色だし。定着する事はないだろう。おっ。上手いな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。

 そこがまた良かったりして。股もいいし。戦果を上げた時だけ理解される姿と二つ名。うん。分かる奴だけ分かって欲しい。俺はそれでいい。


 そして、コボチャンにはゴブリンパーフェクトヒールを掛けちゃうゴブリン。ファイチクンにはゴブリンヒールな。

 それでも喜んでくれたのだから、いいだろう。コボチャンは広範囲を走り回って大変そうだったし、俺の雌だしな。それは仕方ないんだぞ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。


「さあ。凱旋だ!」

「ガウッ!」

「御意!」




 この日、愛知県豊○市のとある賃貸マンション付近では、十数人の警察官が姿を消しただけでなく、一帯の住人の姿も消えた。



 ~ ~ ~
 魔道士:レベル23 ※()内は1日の使用回数
 火魔法:ファイヤー(26)
     フレイム(22)
     ファイヤーアロー(18)
     ファイヤーランス(14)
     ファイアーウォール(10)
     ファイヤーバード(6)

 水魔法:ウォーター(25)
     フロー(21)
     プール(17)
     ウォーターウォール(13)
     ジェットウォーター(9)
     ウォーターバード(5)

 風魔法:ブラスト(24)
     カッター(20)
     デュアルカッター(16)
     エアーウォール(12)
     トリプルカッター(8)

 土魔法:サンディング(23)
     クレイバレット(19)
     ピットフォール(15)
     クレイウォール(11)
     ストーンバレット(7)

 マジシャン:レベル12
 火魔法:ゴブリンファイヤー(39)
     ゴブリンフレイム(39)
     ゴブリンファイヤーアロー(35)
     ゴブリンファイヤーランス(31)

 水魔法:ゴブリンウォーター(38)
     ゴブリンフロー(38)
     ゴブリンプール(34)
     ゴブリンウォーターウォール(30)

 風魔法:ゴブリンブラスト(37)
     ゴブリンカッター(37)
     ゴブリンデュアルカッター(33)
     ゴブリンエアーウォール(29)

 土魔法:ゴブリンサンディング(36)
     ゴブリンクレイバレット(36)
     ゴブリンピットフォール(32)
     ゴブリンクレイウォール(28)

 ヒーラー:レベル12
 聖魔法:ゴブリンヒール(39)
     ゴブリンキュア(39)
     ゴブリンホーリー(38)
     ゴブリンハイヒール(37)
     ゴブリンハイキュア(36)
     ゴブリンハイホーリー(35)
     ゴブリンエクストラヒール(34)
     ゴブリンエクストラキュア(33)
     ゴブリンエクストラホーリー(32)
     ゴブリンパーフェクトヒール(31)
     ゴブリンパーフェクトキュア(30)
     ゴブリンアブソリュートホーリー(29)

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