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襲撃者 2
しおりを挟む魔法による攻撃を受けたようだった。
直ぐに頭を覚醒させて外を確認したから分かった。見えたのは2人。2つの影がマンションから離れた場所で動き、そこから魔法が発動されていた。
早速、スカウトの『遠目』がいい仕事をしてくれた。俺の選択は間違ってなかったと思ったのは後からだったけど。
先ずは1階から順に狙っているようだ。ベランダ側の窓ガラスが割れ、大きな音と共にマンションを揺らしていたのだと分かった。延焼も視野に入れた魔法攻撃のようだった。
こん畜生。家具とか回収しておいて良かったぜ。燃える物は極力少なく。これ、延焼を最小限に抑える基本だ。
構造によってその後の違いは出るが、基本は基本。やはりマンションを選んでおいて良かった。まんとションは別物だしな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
って。
【皆! また敵襲だ! だがまだ動くなよ! あの攻撃はヤバイ! 当たれば1撃で死ぬぞ! 窓際から離れてくれ! 俺が対処するから暫く待機だ! いいな!】
一斉念話で指示を出し、俺だけ動こうとしたのだが。
「ガウガウッ、ガウウッ!」
コボチャンも一緒に行きたいようだった。流石にさっきの振動でびっくりして起きたようだ。そんなコボチャンも可愛いぜ。
コボチャンに念話は伝わらないはずなのに、俺の気持ちまで伝わってしまうとは。愛犬万歳。
さっきは先にイっちゃったからな。俺の方が早かったけど、結果としては俺は落ちてない。ゴブリン優越感。数は力だ。
「分かった。コボチャン。今回も頼むぞ」
「ガウガウッ!」
よし。寝起きもふもふも堪らんちん。次はファイチクンだな。
【ファイチクン! 出るぞ! 今回は俺と一緒に出撃だ!】
【はっ! 御意!】
やはり起きてたか。ソルジャーになったファイチクンは更に頼れる戦士。あっ。へいって呼ぶのを忘れてた。ちっ。
【よし。扉を開ける時には特に注意してくれ。前面の敵だけじゃないかもしれないからな。俺も直ぐに出る。それまでは待っていろ】
【はっ! 御意!】
うん。めっちゃやる気になる返答をありがとう。やるな。ファイチクン。やってただろうに。この対応の早さ。流石に学んだか。回数制限いっぱいまで出しちゃダメってな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
【スイチクン! 今回はスイチクンも出動だ! 前面の敵以外の索敵を頼むぞ! 出来るな?!】
【は、はいっ! 兄様。頑張ります!】
よし。こっちも起きてたな。当然か。こんだけ騒がしけりゃな。
【そんなに緊張しなくて大丈夫だ。いくら強力な攻撃でも当たらなければどうということはない! スイチクンなら出来る! 愛する雌の為にも集中して動くんだ!】
【は、はいっ! 頑張ります!】
【よし。俺が合図をしたら出動だ】
【はいっ!】
よし。何の根拠もない激励。これを焚き付けとも言う。1度言ってみたい台詞も言えたし、俺は満足だ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
ん?
「ご、ご主人様! ラナは、ラナは、……。い、いえ。ご主人様の言い付け通りに致します。ご武運を」
くっ。少し震えてるのか。それも天使過ぎ。ラナ、超天使。そんな目で見ちゃいやん。
ガバッ ぎゅっ
「ラナ。ありがとう。気持ちは伝わった。心配するな。まだまだラナには俺の子を産んでもらうつもりだ。安心しろ。俺は簡単には死なない。ラナの為にも、皆の為にも、俺はやらなきゃならない。行ってくるぞ」
「あっ。は、はいっ。ありがとうございます。ご主人様」
ぎゅう~っ
くうぅっ。堪らんちん! この態勢でもぶち込める自信はあるが、今は止めておこう。後のお楽しみ。
「ガウガウッ。ガウッ!」
ガバッ
「おっと。コボチャンもありがとう。嬉しいぞ」
ぎゅう~っ、もふっ
「ガウウ」
いつまでもこうして居られる自信もあるが、それは愚者の選択。ゴブリンにはぴったりだが、俺は違う。
ぴったりフィットのちんことまんこは気持ちいいけど、それは落ち着いてから。お膣射てから。それじゃあ既にやってるな。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
よし。やはりこの思考は落ち着ける。
さあ! 盛り上がった所で一斉念話だ。ドガン、ドゴンうるせえが、まだ下の階層っぽい。もうちょっとくらいは大丈夫だろう。
【皆聞け! さっきの殲滅で皆のレベルも上がってるだろうが、この攻撃は段違いでヤバい!
だが、あれを倒せば皆のレベルはもっと上がるはずだ。その後の戦闘では皆を頼りにするだろうから、今回までは堪えてくれ。
今回は、俺とコボチャン。1番隊の隊長ファイチクン、斥候のスイチクンだけで対処する!
いいな。これは命令だ。俺がいいと言うまで動くなよ】
一斉念話だから皆からの返答はないが、ラナの表情で分かる。惚れてるな。俺もだぞ。後でしっかりやろうな。股落ちるまで。ぎゃっぎゃっぎゃっ。
「コボチャン! 行くぞ!
敵は2人だけとは限らない。コボチャンとスイチクンで前面の敵以外の索敵を。俺とファイチクンで前面の敵を迎え撃つつもりだ。殺れそうなら殺ってくれていいが、くれぐれも無理だけはしないようにな」
「ガウガウッ!」
「よし! ゴーだ!」
「ガウッ!」
◇ ◇ ◇
「おい。本当にまだあのマンションの中に魔物が居るんだろうな。これで無駄撃ちなら許さないぞ」
「はっ。俺の索敵能力を舐めるなよ。スキルレベルは上げてある。大きな反応があるからまだ数十匹は残ってるはずだ。間違いない。どの部屋に居るかまでは分からないが、あのマンション内に居るってのは分かる」
「はんっ。ならいいが、数匹程度なら大した経験値にならないからな。2人で割ったら更に少なくなるってんだから、勘弁して欲しいぜ」
「ふん。仕方ないだろうが。これだけの事態を招いた魔物が居た場所だ。それなりのレベルの奴が混ざっててもおかしくないと考えるのが普通だろう。俺はまだ死にたくないからな。だからお前を呼んだんだ」
「ふっ。そうだったな。俺だってまだ死にたくはないが、こんだけ外から撃ってちゃ効くものも効かないだろうによ。
それに、全然燃えてねえじゃねえか。古いマンションならそれなりに燃えるはずたとか言ってなかったか? ああん?」
「あ、ああ。確かに言ったが、人が住んでりゃ燃える物もあるだろうから燃えるはずだと言ったんだ。変に変換するじゃねえよ。だが、確かに思った程燃えてないかもな」
「ちっ。使えねえ。入居者が少なけりゃ物もないだろうがよ。それくらい分かるだろうが」
「ああ。だから分かったはずだがな。ほとんどの部屋にカーテンが付いてるんだ。1番上の部屋だけだろうが、空き部屋っぽいのは」
「ちっ。しゃーねえか。古いマンションだ。なかなか燃え広がらないのかもしれねえな。よく分からんけど」
「まあいいじゃないか。これで2階部分まで全て撃ち込んだ事になる。既に焼け死んでるのも居るかもしれないが、そろそろ出て来てもおかしくないだろう。無駄話は止めて集中するぞ」
「はっ。分かったよ。折角ここまでやったんだ。確実に全滅させてやるぜ。くそ魔物どもめ。いつまでもいい気にさせねえぞ」
「その通りだ。俺達が来たからには魔物なんて1匹も逃さない。確実に殺ってやる」
「ああ。この魔道士の俺が入れば楽勝だろうがな」
「ああ。頼りにしてるぞ。魔道士様。俺はまだまだマジシャンだからな」
「ふっ。分かってるじゃないか。その、なんだ。俺も頼りにしてるぞ。その索敵スキルのお陰でいつも楽させてもらってるからな」
「ふっ。そうだな。お互いに命あってこそだ。これからもよろしくな」
「あ、ああ。そうだな。よろしくな」
「っ! なっ!? 火の手が弱まった?」
「何っ! た、確かに、下層の火の手がなくなって行く?」
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「ちっ。大した設備もなさそうなマンションなのにな。スプリンクラーならしょうがねえか」
「ああ。だが、警報のベルの音はしてないよな? これだけ周りに人気もなければ聞こえてきそうだが」
「あ、ああ。確かにそうだな。さっきまでは俺達の攻撃音で気付けなかったが、そんな音はしてないな」
「なら、……、あれは魔物が、 」
「っ! 何か出て来たぞ!」
「はっ! な、何いっ! あ、あれは、……、盾?」
「はあっ?!」
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