待望異世界でネタスキルを選んで屁理屈と妄想でチート野郎になって思うまま好き放題に楽しく過ごして行きます(略)

復活のおたけさん

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1. 異世界デビュー

ファウステンシステンの町

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 案内図には、この町の簡略化された地図に、よく使われる施設、よく尋ねられるであろう場所が手書きで書き込まれていた。地図の精度は、……。

 善意で掲示してくれているのだ。重要拠点は意図的に大雑把にしているのかもしれないし、特にコメントをするのは控えようかな。

 ただ、統一されたカラフルな地図を見慣れていたからか、これに慣れるには時間が掛かりそうだ。

 それよりも、今更当たり前なんだけど、文字が読めて良かった。ありがとう。


 海外に行くと、見慣れない文字が並んでいるだけでも怖くなる時がある。それが初めて行く地域とか、雰囲気が暗い場所なんかだと尚更に。

 愛想の良い人の笑顔ですら悪巧みしているように見えちゃったりして。日本人は狙われ易いから。被害妄想爆発で。

 いや。実際に危ない目にも遭ったから、独り歩きは危険な国が多かった。特に日が暮れてからは要注意。日本と同じ感覚で過ごしちゃダメダメ。俺は何を言っているのだろう。

 そうだった。案内図だった。


 町並みに関しても、流石に碁盤の目のように綺麗に一直線に区画整理されているようではないみたいだが、それなりに合理的に造られているようだ。

 この地図の上を『北』とするならば、東西に出入り口用の門があり、

 北には、一般人立ち入り制限付き区域が設けられており、領主の館や軍関連施設、一部に居住区があるらしい。

 南には、商業区や居住区。

 東西の出入り口付近には、乗り合い馬車関連施設や荷馬車置き場。それを囲むように宿泊施設。

 中央には、それらをまとめる為のギルド事務所等。それと教会も。

 所々には広場もあるようで、公衆トイレや朝市の場所等も書かれていた。


 特に直ぐに何かしなくちゃいけないって訳ではないが、取り敢えず宿を押さえるべきだろう。余力があれば商業ギルドには顔を出して、町の様子を見てみるって感じだろうか。

 そもそも俺は行商人なんだから、そういった活動はしなくちゃならない。町に入ったら商業ギルドへ。これ基本。でも後で。

 明らかにお上りさんって反応だけはしないようにして早速行きましょう。言っても直ぐ目の前にも宿屋が並んでいるのだが。浮かれて何か仕出かしちゃう前に心と体を落ち着けたいというのが本音です。


 人生、時には思うまま、好き放題に生きていい時期もある。もう直ぐ折り返し地点。ここで謙遜し過ぎたり自重して、後で独りで自嘲しても仕方ない。

 なるようになるさ。折角の異世界。がっつり堪能させて頂きます。

 よし。気合いも入れたし、見た感じも古臭くはないし、金額も平均的なようだし、ここに決めよう。

『寛ぎの宿 猫の尻尾亭』

 決して名前だけで選んだ訳じゃない。目についた看板の中では1番ぴんと来たっていうのが大きいのは否めないが。十分に癒やされ、寛ぐ事も出来るのだろう。いい名前だと思った。


『雑魚寝ハウス 小鬼小屋』
『大食漢歓迎 赤鬼の宿』
『寛ぎの宿 猫の尻尾亭』
『団体専用 クラブハウシーズ』
『三ツ星ホテル スリースター』

 順番に値段が上がって行く並び。

 思う所は人それぞれだろう。俺も色々突っ込みたいと思ったけど、これはこれで分かり易くていいのかな。とか思ったりもした。

 看板の下には料金表もあって比較も出来たから。名前だけでなんとなくどういう宿なのか想像出来るから有り難かった。


「いらっしゃいませ。お1人様ですか?」

 見ようによったらラブホテル、ファッションホテルのようにも見えたのだが、当然のようにここには受付けが居て、期待通りの猫人族の可愛い女の子が迎え入れてくれた。

 いえすっ!

 これでムキムキのおっさんの狼人族とかが立ってたらどうしようかと思った。勿論、回れ右で出て行ったと思うけど。回れ左でも良かったか。


 商業ギルド証を提示しながら、

「はい、私1人ですが、3日程の宿泊は可能ですか?」と返す。

 ドキドキする胸の高鳴りを抑え、なるべく冷静を装う。ここで負けちゃダメだ。

 受付けの応対、いや、受付け嬢次第では、1泊のみでもいいかと思ったけど、このけも耳。ぴょこぴょこ動く可愛らしいお耳を生で見てしまったからには、別の宿に行くなんて選択肢は無い。

 可愛いのは当たり前。笑顔もグッド。これで語尾が『にゃん』なら満点だったのに。

 オプション料金を払えば言ってくれるのだろうか。そんなサービスはないのかな。メニュー表もないようだし。残念だ。


 そんな可愛らしい猫耳受付け嬢は、身分証を軽く確認し、普通のお客だと判断してくれたのか、更にニコッと笑い、

「はい。モルト様お1人様で3日間ですね。お部屋は空いておりますが、お食事はどうされますか?」

 なんて受け入れてくれた。下の方も受け入れて欲しい。

 お食事には、貴女のお耳と尻尾は付きますか? なんて聞けたら良かったのに。まだ無理だった。

 流石にそこまでぶっ飛んだ言動は出来ません。初めて会ったばかりだし、心の準備も出来てなかったから。


 少しでも長く言葉のキャッチボールをしたいとは思うのだが、あくまでも今はお客と受付け嬢。第一印象はとっても大事。だからここはスマートに話を進めるべき状況。

 おじさんは立派な大人です。純粋な子供心と剥き出しのエロさを持ってるけど。まだ見せちゃダメ。心も下半身も。

 こほん。

 心の中では泣く泣くだったけど、町の散策も調査もしたいから、朝食だけはここで摂る事にして、前払いで3泊分。15000ジェニを支払った。安い!

 君なら息子を握ってくれるだけで払っちゃうよ? ないか。


「はい。確かに。ありがとうございます。これがお部屋の鍵になります。外出される際にはこちらに預けてからお出掛け下さい。紛失等についても責任は取れませんので、念の為に貴重品等は置いておかないようにして下さい」

 金庫付きなんて部屋は無い。一応、受付けを通らないと部屋に上がれない構造になっているようだが、何があるか分からないのもまた事実。

 じゃあ、何かあったら1番怪しいのはここの関係者じゃね? なんて思っても言いません。こうして事前に注意してくれているのだから。それでもやるなら凄いと思うけど。

 これも油断させる為の手段なのかもしれないけど。こんな可愛子ちゃんなら何でもあげたくなっちゃうぞ。おじさんの初めても。幾らなら、……。

 止めておこう。


 自分自身での最低限の警戒は必要と。お部屋でのトラブルの責任は一切取れません。という事だろう。簡易だけど、アイテムボックスがあるから俺には関係ない話。

 他にも、門限とか、朝食の時間とか、タライとお湯は追加料金とか、連れ込み禁止とか。この宿での注意事項を教えてもらって、部屋に上がる事に。

 至近距離でこれだけの説明をしてくれただけでもお値段以上。若さもそうだけど、けも耳最高。これぞ本当の、お、値段異常?


 24時間対応なんてしてくれないのは当たり前。そんな便利で快適なシステムは、誰かしらの犠牲、いや、企業努力とスタッフの頑張りによって成り立つもの。当然料金にも反映されるのだから、それはそれなんだろうけど。


 303号室。猫の名前付きの部屋じゃなかったのは残念だった。これも俺の偏見。仕方ない。

 ただひと言。古いビジホテルっぽい。風呂は無い。トイレは各階に有り、共同だ。


 部屋には、ベッドと小さなテーブルと椅子が1つずつ置いてある。以上。有料チャンネル付きのテレビやアメニティグッズなんて有る訳がない。

 あれもある意味行き過ぎた、過剰サービスもあったような。特に日本。

 ウェルカムドリンクサービスとかは可愛い方で、朝食バイキング付きとか。

 茶菓子、使い切りのシャンプー、リンス、化粧水、カミソリ、歯ブラシ、タオル、ドライヤーとか、消臭スプレー、靴磨き、ズボンプレッサーなんてのもあったかな。当たり前のようになってたか。

 考えればまだまだ出てきそうだけど、もういいや。ああ、新聞とかも貰える所もあったな。


 そんなのは一切無い。ここは1人部屋だし、これが普通。宿は寝床を提供する所。テーブルと椅子があるだけでも良心的なのかも。

 寛ぎの宿で猫の尻尾亭なら、コタツとかソファーが欲しいな。なんて思ってしまった。無い物ねだりはダメ。


 壁は、……

 うん。それなりにしっかりした造りだろうから、何も聞こえてこない。ただ人が居ないだけかもしれないけど。

 扉と壁の間に隙間はあるから、耳を澄ませば廊下の音は聞こえてきそうだけど、扉は頑丈そうだから、荷物でも置いておけば音漏れは防げるのかな。双方向で。


 どさっ

「ふう~」

 ベッドにダイブして考える。

 柔らかベッドで良かった。今更だったけど、固~い板だけのベッドじゃなくて良かった。布団はあってもそれなりにダメージが入っただろう。子供みたいな事しちゃダメだった。



 いやいやいや。そうじゃなかった。

 取り敢えず、ステータスオープン! なんて言わなくても表示してくれる親切設計。

 漸く試せます。魔法。

 ずっと童貞じゃなくても魔法使いにはなれる世界で良かった。でもまだこっちの世界では童貞だ。早く筆下ろしもしなくちゃな。

 こっちの身体に合わせて、息子も何気にグレートアップしてやがる。ちょっと嬉しい。ドーピングしてる訳じゃないから。これで戦闘力がいか程かも確認しておかないと。出来るだけ早く。いか程にイカ臭くなるのかな。なんて。

 これも重要案件。男には譲れないものも、試したい事もある。それがこれ。毛も金髪たあ恐れ入った。まさか自分の毛が地で金髪になるとは。異世界、恐るべし。
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