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1. 異世界デビュー
こっちもお待ちかねの検証
しおりを挟む現在時刻は13時ちょい過ぎ。ちなみにこっちの世界も1日は24時間で、1年は365日。日本程温度変化は激しくないみたいだが、春夏秋冬と同じように四季っぽいものがある。
不思議と腹は減ってない。いつもは12時近くになると自然と腹が鳴ってたのに。泣いてたのか。
空腹耐性なんてもののせいかもしれないけど、食べたいとも思ってない。ならばいいだろう。食べたくなった時が食事時。
おっとっととと。
いいね。この感じ。久し振り。
いや。初めてか。
自分の指先からビールを注ぐなんて。文字通り、指先からビールが出ました。流石、ユニークスキル。
出そうとしたから出てくれた。この感じなら、出そうと思えば体からなら何処からでも出せそうだ。敢えてやらないけど。
まさかさっき出したみたいに勢いよく息子からは出さないよ。さっきと先っぽも掛けてみる?
ナニがとは言わないけど。ナニからナニを出すなんて?
そんなの例えビールって分かってても飲みたくない。俺にはそんな趣味はない。例えそれが可愛い女の子の聖、水、……。
止めよう。誰得にもならない話。
って。おいおいおい。最高かよ。ユニークスキル最高説。
中ジョッキ1杯程度なら、消費魔力は小数点以下って事かよ。
『僅かな魔力で思いのままのビールを製造する事が出来る』って、生活魔法と同じ様な括りかよ。
……
あざーっす。
だが、これも検証だ。どれだけ使ったら魔力が減るか。それを確かめる必要はあるだろう。決してビールを何杯も飲みたい訳じゃない。
理性が保てる範囲で楽しく飲めればいい。軽くアルコールを回して気分が良くなればいい。そんな飲み方が基本です。これマジで。
ちなみに、この中ジョッキは家財道具一式の中に入ってたのを使ってます。こっちにもあるみたい。ガラスで出来た中ジョッキ。いいね。
木製のもあったけど、それじゃ見た目を楽しめない。折角だからガラスの中ジョッキに注いでます。
ビールにはこれでしょ。庶民派だし。独りだし。洒落たグラスで飲むなんて、独りじゃやってられません。この年だから?
勿論、香りや飲み応え、満足感なんかも違ってくるけど、今はこれ。うん。旨いな。
そんなに違いが分かる男じゃなかったけど。試しに色んなビールを並べてブラインドテストしてみた所、見事に正解率は半分程だった。
それ以来、偉そうにビールについて話したり、味について語ったりするのは止めた。恥ずかしかったから。はははん。
基本的には小麦色のアルコール飲料。それをビールと認識しています。勿論、色んな色付けされたのとか、黒ビールなんてのもあるけど。俺がいつも飲んでたのは普通に小麦色のヤツ。
発泡酒とか第3のビールとかもあったけど。懐具合に合わせて現地の地ビールや珍しいビールを楽しんだりもしたけど。
だけど最後にもう1回? もう1杯!
とくとくとくとくとく~~
しゅわわ~
おっとっとお。
「ずずずっ」
泡も旨い!
取り敢えずいつも飲んでたヤツって感覚で出してみた。ごめんなさい。嘘を言いました。見栄を張ってすみません。
ここぞっていう時だけ飲んでた上品な香り高いプレミアムでモルト感たっぷりのちょいとお高いビール。あっ。ちなみに俺の名付けはここからね。モルトです。よろしく。
取り敢えずってだけじゃなく、お代わりも、締めも、ずっと飲んでいられるアルコールドリンク。それがビールだ。飲んだ分だけトイレは近くなるけど。
細かい事はもう触れない!
これで最後かな?
そもそもビールとは。
大麦の麦芽を粉にして、水と一緒に加熱した糖化液にホップを加えてアルコール発酵させた醸造酒。ホップによる苦味、炭酸ガスによる泡立ちが堪らない飲み物。
だとか。
「ぷっはあ~」
主な原料は、モルト、ホップ、水。それと酵母。
モルトは、麦芽。発芽させた大麦。
ホップは、ハーブの一種。ビールに苦味や香りを付けてくれる。
水は、……。水。
酵母は、……。イースト。糖質をアルコールと炭酸ガスに分解する。アルコール発酵。
副原料は色々あって、
米、コーン、スターチ、馬鈴薯、デンプン、着色料、糖類。他にも、フルーツ、ハーブ、スパイス等々。
なんて基本はいいとして、日本ではウザイ税制のお陰で麦芽の使用割合でビール、発泡酒、第3のビールって別けられてたけど。
原料が違い過ぎるのに、そもそもビールって呼んでいいのかよって話は置いといて、『ビール風味の発泡アルコール飲料』って言われれば仕方ないって思うしかないからこれ以上突っ込まないけど。
ただ、第3のビールは、麦、麦芽以外を原料としたもので、発泡酒に麦由来のスピリッツや蒸留酒などのアルコール飲料を加えたもの。
ちょ~~っとしか含まれないものについては日本国では表示義務はないから、飲むと頭が痛くなるとかってなるお酒に関しては、体質に合ってないか、そもそも飲んじゃ、……
止めます。世の中に喧嘩を売るのが人生じゃない。時には警鐘を鳴らす事も必要だけど、それは今じゃない。俺はそんなビールは造らない!
色んな方向から消されちゃう前に撤収。
なんて怖い話しは置いておいて。
ダンッ!
「ぷふう~~」
まだまだ~。もう1杯! もう1掘り?
発酵にも上面発酵、下面発酵、自然発酵があって、
上面発酵は、酵母が麦汁の表面に浮き上がって行くのでそう呼ばれる。古くからの造り方。→エール
常温からやや高温で発酵。発酵期間は3、4日。その後の熟成期間は2週間程。
下面発酵は、酵母がタンクの底に沈んで行くのでそう呼ばれる。中世以降に始まった造り方。→ラガー
5度前後の低温で発酵。発酵期間は7~10日。熟成期間は1ヶ月程。
自然発酵は、培養されていない野生酵母を使った造り方。
なんて難しい話はここまでで。
ごく。ごく。
「やっぱりビールはいいねっ!」
世界の主なビールには、
上面発酵の、エール(ペールエール、マイルドエール、ブラウンエール、エキスポートエール、ビターエール、スコッチエール等)、アルト、ケルシュ、バイツェン、トラピスト、ポーター、スタウト等が。
下面発酵の、ピルスナー、ドルトムンダー、ボック(ドッペルボック)、アメリカビール、ライト等が。
自然発酵の、ランビック(グーズ)等がある。
なんて覚え切れない話はここまでで。
ビールは色々あってそれぞれに旨い。正直苦手なのもあったけど。それでいい! それもいい! それも人それぞれだから。
本当にこれで最後でラストで最終的なファイナルトリビアです。ビールに関しては。
取り敢えず、これくらいは知ってるぞって感じでユニークスキルに意識させてみたりして。
そんなの関係ないかもしれないけど、こういう細かい所やイメージって大事って言うから。よく聞いたから。結構読んだから。恐らくこれも必要な事だったのだろう。
別に酔っ払った訳じゃない。まだ大丈夫。まだ昼だし。外は明るいし。気分も上々だし。アゲアゲだし。独りだけど。……
うっぷ。
旨いものは独りで飲んでも旨い。
これ定説。寂しいと思った時点で負け。俺はそんな過ちは犯さない。けも耳ちゃんも犯さない!
そういうのはあくまでも合意の上で。気持ちでも、お金でも?
乾杯っ!
グラスをちょいと掲げてからもうひと口。ひと飲みがひと口じゃない。飲み切るまでがひと口じゃない。
ジョッキから口を離した時。それがひと口。それが俺の定義。
ごくごく、ごく。
「ぷっはあ~~っ。旨~いっ! もうひと口!」
あっ。そうか。今の状態は一種の引きこもり。これまたユニークスキルの『引きこもり超回復』がいい仕事してくれてるんだ。その効果もあるのだな。
しかも『ヒーリングリング』も着けっぱなしだし。体力、魔力も絶賛微回復中。これまたはめっぱなしだった。
なんかエロいけど、こんな良い物は外さない。抜かずの入れっぱなし? それもいい。それでいい。
……
そのお陰で自動的に全回復してんじゃん。既に満タン。MAXです。小数点以下の魔力なんて、相殺されて減らないのか。スゲーや。
そうだった。決して既に酔ったからじゃない。はずだ。まだまだ行ける。そう言い出したら酔ってる証拠説。
なら、魔力をそれなりに消費しそうなビールを製造してやればいいんじゃない?
量は、……。今は無理。後で、明日にでも? この3日間のうちに、瓶とか樽とか買っておこうかな。流石に大鍋には入れたくないし。なんなら樽を買いまくって商売しちゃうか?
ビールは取り敢えず販売はしない方向で考えてたのに。どうしようもなくなった時の取って置き。切り札の様に思ってたのに。既に楽な方向に考えてる流され易い狡いヤツ。
酔ってるな。
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