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1. 異世界デビュー
これぞお待ちかねの検証
しおりを挟むさあさあ。やってみよう!
量以外で魔力をそれなりに消費しそうなビールの製造。
散々トリビアしちゃったけど。あんだけ語っちゃったけど。全然関係ない方向でやってみます。反省はしてるけど、時間は戻らない。
男は前に進むのだ。決して酔っ払った訳じゃない。
はずだと思いたい。
ふむ。
アルコールが回った頭でも軽く考えられるのが、簡単な味の違い程度じゃ消費魔力は変わらないかなあ。って事くらい。
種類に依って風味が違うのは当然だし、それくらいじゃユニークスキルにとって大した負担じゃなさそう。
全く視点を変えて、アクロバティックに両手からとか、全部の指から出しちゃうとか。それはそれで既に出来そうな気配。
うん。
出来るな。早く注ぎ終わるって事がメリットか。だからと言って消費魔力は変わらないと。
手から出すのは当たり前。両手ともオッケー。指からも出せました。勿論、どの指からでも。他には、目からは、……。滲みそうだからやらない。後悔はしたくない。
足からとかもやりません。飲みたくないし。
それから、うん。これは出来るかな。出来たら便利。
「……」
ごくんごくん、ごっくん。
「ぷはーっ。うまい!」
はい。出来ました。直接口の中。勿論、直接胃の中なんて何の得にもならない事はやりません。味わいたいし、喉越しも堪能したい派。
うむ。いいね。いい感じじゃん。思う通りに出来るっていいね。
ならば、お次は、味わいはそのままに、糖質、プリン体カットとか。超健康ドリンクにしちゃうとか。やってみよう。
これは簡易鑑定じゃ結果が分からない。ビールはビール。検証のしようがない。長期的に飲んでみてどう変わるかなんて、それはそれでやってみるしかないけど、流石に面倒だ。
それなら、分かり易くアルコール度数か。
ノンアルコールから超絶怒号の96度とか。
1度だけ味わった、いや。ちょこっとだけ試してみた事があるウォッカのスピリタス。あれはそのまま人が飲んじゃならない部類の液体だ。
興味本位でも止めといた方がいいレベル。個人的にはだけど。つんと来る、痛い、嫌な気分になる。うえぇってなる。火が吹ける。そんなに口に含みたくないけど。
勿論、分かってる。それはビールじゃないけど、ビールにも様々なアルコール度数がある。
日本国の場合は、ビールのアルコール度数の定義が20度未満って定められてるからそこまでの物はないんだけど、海外では結構な度数のビールが造られていて、名前も凝った物が多い。
ぶっちゃけ、飲んだ事はない。だって高いもん。
ちなみに、
スコットランドのアルマゲドンってビールは65度。
同じ所で造られてるスネークヴェノムは67.5度。
『終局の決戦場』『蛇の毒』って意味。不味くはないらしいけど、飲めません。怖いから。それと高いから。残すのは勿体無いってもある。捨てるなんて論外だし。
だからそれなりの物は俺にも製造出来るはず。飲んだ事はなくても知識としてはある。実在してたし、今も造ってるはず。
ファンタジーの力を見せる時!
ユニークスキルの有用性を信じてる!
でも、そんなに飲めないからほんの少しだけ。
ちょろちょろ、……
な、舐め舐め。舐め舐め。
……う、うん。不味くは、ない? 事もない?
あれ?
「あ、ああ~っ」
でもあれや。アルコールが強いのは分かる。ごっくんなんてしちゃいけないヤツだ。それくらいは分かる。ちょい舐め程度で大正解。
しかも。魔力は減ってない。これも普通にビールだからだろうか。実在するものなら、ほんの少しの魔力で再現可? まあ、ちょっとしか出してなかったし。尚更減り難いか。
こんなのを中ジョッキいっぱいに出したくない。出した以上は飲まないといけないから。それが造った物に対するケジメ。責任の取り方。時と場合にも依る。
でもやっぱスゲーな。ユニークスキルって。信じて良かった。ありがとう。
はい。
ノンアルコールビールは出来たと思う。なんせ味は一緒だから分かりません。そんな絶妙な感覚は持ってない。普通に美味しいビールです。
これでノンアルって言われても分かる奴はおらんやろう。鑑定持ちくらいか。それか素面の時のひと口目?
とにかく、今の俺には分からない。ノンアルでも酔える奴は居るから。思い込み。プラセボ。プラシーボ効果なんてものもあるから。場の雰囲気や無意識下の脳って凄い。怖い?
でも、基本は少しは酔いたい派だから、どうしてもって時以外は製造しないかな。ノンアルは。
ならば!
気を取り直して、温度はどうじゃい!
冷えたビールは格別じゃん。物にも依るけど。冷やし過ぎも味が無くなっちゃうから程々に。お腹が冷えちゃうから控え目に。
これなら魔力を使うんじゃないのかな。製造出来ないなんて言わせない。美味しいビールを製造する事こそ使命。ユニークスキルの宿命。
造り手の思いを乗せ。出て来い!
程よく冷えたビールよ!
あっ。勿論、普通にプレミアムなちょいとお高いビールです。何が普通かって。もうこれを標準のビールにしちゃうからです。ああ。なんて贅沢さん。こんな異世界は好きですよ。
さあ!
「おお~っ!」
つい、叫んでしまった。ちょいと小声で。ほんのちょっと抑え気味で。
出来ました。出ました。製造しちゃいました。
今更だけど。俺は氷魔法なんて使えません。そんな便利な魔法が取得出来れば良かったんだけど。ありません!
だが!
これは確実に冷えている!
だって冷たいもん。中ジョッキ万歳。
ごく。ごく。ごく。ごきゅ。
「っぷっはあ~~っ! やっぱ、これっ!」
これがビール。冷やせるなら冷やすべき。これを標準仕様に変更します!
おっ。消費魔力は『1』ですとっ!
あっ。回復しちゃった。そりゃそうか。絶賛回復祭り開催中。ならばやはりこれを標準仕様に!
もっと魔力が必要でも変えるつもりはないけど。
ふっふっふっ。やはりか。やはり妄想爆発事案でもしっかり受け切ってくれたか。これぞファンタジー。屁理屈とも言う。
じゃあじゃあ。やっぱり、長期的な検証は必要だけど、健康も考えて、味わいはそのままに、糖質、プリン体カット。アルコール度数はやや控え目に。こんな感じも付加して標準仕様に認定しちゃいましょう。
いけるはず。冷やす事が出来たんだから、こんなの簡単、簡単。だってこれはユニークスキル。ゆにーくで有用な特別な部類のスキルです。多少の我が儘だって許されるはず。
あっ! 酔っ払って来てるからか、更に閃いた。ヒラメ居た? いやいや。そんなの居ない。そこまで酔ってない。幻覚は見えません。
あー。
この世界には、ファンタジーなものが沢山あるね。あったんだからあるんだよ。光魔法でもあるけど、状態異常を回復させちゃう魔法とか、ポーションとか。
勿論、体力や魔力も回復させちゃうのもある。持ってるし。もしもの時の為に2つずつ。初級と中級の。そして、その上の、上級があるのも知っている。
ならば出来るんじゃないのかな。そんな効果を及ぼす、そんな効能のあるビールが。超健康ドリンクならぬ、実際に回復させちゃうビール飲料が。
体力回復ビールに魔力回復ビール、状態異常回復ビールまで。もう何でも有り。
なんならエリクサーっていうのも知ってます。当然じゃん。二次元の世界を愛する俺を舐めるなよ。なんて。
出来るんじゃないのかな。この理論と理屈が通じるのなら。それを屁理屈と言う。2度目です。
ユニークなスキルって、それこそチートと同義じゃん? 同意してくれる? って事でお試しタイム。
やれる時には勢いで色々やっておくべき!
どうせなら1番難しそうなのをやってみる。決して面倒だからじゃない。今ならやれそうだから!
これがアルコールパワー!
しっかりがっつり酔ってるな。今更だ。
ごくごく、ごくごく、ごっくん。
ダンッ!!
「ぶはあ~っ」
俺の魔力は『200』だ。この範囲なら持ってけ泥棒。
「てえいっ!」
この世界の最高のファンタジー回復薬。いや。万能薬。
何処までやれるか探るのがファンタジーの真骨頂。それこそファンタジー。
「………」
……
おかしいな。何も出ません。ナニも出してないからか? ナニを出せば出て来るのかな?
お~い。ビール。
それは違う飲み物だった。
あれか。出来ない場合はナニも出ない。製造出来ないのだから、何も出せない。そういう事か。
でも、おっかしいなあ。今ならやれそうだと思ったのに。
ふむ。
分かったぞ。
魔力が足りないか、実はそもそもそんな万能薬はこの世界には存在しないか。いや。あるのは知っている。
こっちの世界の『一般教養・一般常識』が教えてくれているのだから間違いないだろう。例えお伽噺だったとしても、有るには有るって事になっているんだ。
ならば製造出来るだろう。それがユニークスキルなんじゃないのかな。なあ、ユニークスキルよ。
……
あっ。もしかして、あれか? どれだ?
ああ。不老不死って違ったか? やり過ぎか? 流石にそこを意識し過ぎたか?
うっかり造っちゃってテヘペロ事案。そんなの狙ってない。
あくまでも何でも回復させちゃう万能薬だけど、流石に不老不死までの効能はない。そういう事かも。そういう事なら行けるかも。
行くなら一緒にな。逝くんじゃない。イクんだぞ。
あれ?
そこん所を踏まえてもう1度。それでもダメなら魔力が足りないせいにしよう。そうしよう。
おっし!
おしっこ行って来よう。やはりビールを飲むとトイレが近くなる。それは仕方がない。飲んだら出す。これ基本。
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