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1. 異世界デビュー
これが本当のお待ちかね?
しおりを挟むさあ。トイレに行ってすっきりした所で。気を取り直してやってみよう。
時間も早いからか、他の宿泊客は居ないみたいだったから、共同トイレだったけど誰とも会わなかった。
用を足す所は1つだけじゃなかったけど。何かセーフ? そんな感じだった。長いから。ビールを飲んだ後のトイレは。俺だけか?
さてと。
不老不死なんてのは要らないから、何でも回復させちゃう万能薬。やって来い来いエリクサービール!
てえぇいっ!!
そう言えば、この名を冠する薬草酒なんてのもあったか。
……
ん?
じょばばばばあ~~
「おっ!」
で、で、で、出たあ~~~っ!!
出ております! 絶賛放出中であります!
下半身からではありません。それは出して来たところです。これは上半身、それも手からでございます。
絶賛製造中。
って事は、有るんだよ。やっぱり有った。
これがエリクサービールだ!
不老不死ってぶっ飛び過ぎたファンタジー要素が間違いだったんだ。きっとそう。もうそれでいい。有ればいいのだよ。それでも飛びっきりのファンタジービールだろうけど。
どうだ! 参ったぞ!
俺はやっちゃならない事をやってしまったのか?
何故かドキドキして来た。動悸? 息切れ? ただの酔っ払い?
いやいや。既に素でんがなあ。って事もないけど、元々そこまで酔ってない。
あっ。魔力、減ってます!
減ってます! 『10』も? 『10』だけ?
あれ。感覚が分からないぞ。これはきっと高いもの。中級ポーションだってそれなりにしたんだ。体力、魔力、状態異常回復用と3種類。それがこれ1杯で済んじゃうんだよ。
それより上の効能で。そう認識してるから、これはきっとそういう類いの飲み物のはず。見た目はただのビールだけど。いや。ただのビールじゃなかった。
とってもプレミアムな大変美味しゅうございますって言っちゃう位のビールだった。ごめんなさい。
あ。これなら簡易鑑定出来るんじゃないか?
簡易とは言え、これが何かくらいは教えてくれるはず。
「…………」
あっ、う、うん。やっぱり出来るんだ。簡易的に。それっぽい内容で。
はは。出来たら出来たで嬉しいけど、やっぱり内容はそれでした。やったね。
『エリクサーの効能が薄められたビール』
そのまんま。でも効能はそれなりにあるっぽい。流石にそこまでは教えてくれません。簡易鑑定は伊達じゃない!
別の方向で。
これは人前では、って、別にビール飲んでるようにしか見えないんだから、何の問題もないんじゃないのかな。俺が自己申告しなければ。鑑定能力持った人が居なければ。
それと、これが必要になるような事態に陥ったり、危険な事をしなければ、巻き込まれたりもしなければ。
独りでひっそり生きて行けば大丈夫?
…………
いやいやいや。それはそれとして。
取り敢えず、1杯いっとくか。効果の実証するのに、早く飲まないと魔力が自動回復してしまう。困ったもんだ。嬉しい悲鳴とはこの事を言うんだな。
では。
「るねっさーんすっ!」
ごく、ごく、ごく、……
う、うん。普通にめっちゃ美味しいビールじゃん。味には変化なし。当然か。そんな感じで製造したんだから。消費魔力を知りたかったから冷やしてないだけで、1杯目に飲んだビールと一緒です。
お、おお~。
全部飲んでないのに、魔力全回復。軽い酔いも、すっきりさっぱり。状態異常と見なされて回復させられたか。やるな。これはこれで乾杯事案。無限ループが出来るな。やらないけど。
必要な魔力が『10』って事は、冷やさなければ20杯分は直ぐに製造出来てしまうと。しかも、独りで引きこもって製造すれば、魔力は3倍のスピードで回復してくれるから、それとヒーリングリングもあるから更に早く回復してくれる。
なんなら、製造したエリクサービールを飲めば1発回復だし、トイレの回数が増えるけど、やろうと思えば無限増産出来る事になる。
俺は、異世界初日で、すんごいチート能力を手にしてしまった。多分そう。きっとそう。
これからも、酔った勢いってのも大事にして行こう。
流石ユニークスキル。想像力と妄想力の勝利だ。
こんなん出来たんだから、もう何でもあり。
成人男性の1日分の栄養素も入れて、食事代わり。栄養補給じゃなくて完全食。これ1杯で24時間空腹無しで生きられます。なんて仙ビールはどうでしょう。
豆じゃないからこのネーミング。ダメか。あれは1粒で10日は飢えを凌げる優れもの。他にも問題があるかもしれないし。
なら、1杯満足? あれはあくまでも栄養調整食品だったはず。やっぱりネーミングって難しい。
それに、俺は食事はゆっくり時間を掛けてしっかり摂りたい派。もしもって時にはいいけど、検証はしたくない。ずっとビールだけで過ごすなんて。俺には無理。
そんな時が来たらやってみよう。そんな時が来ない事を祈るけど。
あれっ。
じゃあ、そんな時が来ちゃった時の為に、それ用のビールも造ってみる?
事になっちゃうね。この乗りは。勢いは。何かあってもエリクサービールがあるから大丈夫。物理的な修理は無理っぽいけど。復元魔法なんて無さそうだから。修復魔法も。残念だけど。
攻撃にも使えるファイヤービール。それはただの火炎瓶?
なら、爆発させて、エクスプロージョンビールとか行ってみる? それもただの爆弾じゃん。
十分脅威だけど。
ならなら、アルコール度数をMAXにして粘性も高めて、更に強力にしちゃったりなんかして。
追撃でねっとりアルコールが飛び散ったり纏わり付いて、ナパーム的な継続性のある炎が辺りを燃やし尽くしちゃったりして。
…………
ヤバイな。俺。もう酔いは覚めてるはずなのに。元がこんなヤバイ奴だったのか?
剣と魔法の世界なだけに、自身を守る為の攻撃力、防御力は必要だとは思ってるけど、流石にここまでは?
い、いや。それこそ人外とか、ドラゴンとかも居る世界。こんな攻撃力がどれだけあっても足りないかも?
な、ならば、出来るかどうかだけ、製造出来るかどうかは試しておかなくちゃ。
「……」
出来るよね。なんたってここはファンタジー要素満載の剣と魔法の世界で在らせられる異世界なんですぞ。きっとそう。多分そう。
そんなファンタジー要素満載の、薄くはなったけど、エリクサービールが出来たんだ。それならこんな組み合わせただけのナパームビールなんて簡単なものさ。
実際の成分なんて勿論知らないけど、そこは必殺ファンタジー変換。魔力を使って程よく解決してくれるはず。
問題は、出来たとしても投擲が基本になるのだろうけど。間違って飲んじゃうと、とっても危険な嗜好品。死行品? って事か。
でも、これも簡易が付くけど、アイテムボックスに入れておけば、魔力を使わずに攻撃出来ちゃうか。だって名目は『ビール』じゃもん。効能が恐ろしいだけで。
つい、語尾がおかしくなった。
……
……
……
結果発表~!
独りでも、乗りって大事。自分で自分を盛り上げてやらないと。だれも盛り上げてくれないから。
それが独りの辛さであり悲しい所でもある。
気楽でいいけど。
で。
アルコール度数の調整も、ノンアルコールから火が着く程の度数まで。それこそ自由自在。
温度設定も、程よい範囲で調整出来た。
流石に完全に凍らせるなんて不粋な事はしたくないからやってないけど。アルコール度数が一般的な日本酒くらいなら家庭用冷凍庫でも凍らせられるのは知ってるけど、やりません。
でも、ノンアルコールのなるべく薄~い色のビールを凍らせて製造すれば、任意の大きさの氷が造れる事は分かった。魔力はちょっとだけ使うけど、氷魔法要らずでゲットです。
攻撃には使えないけど。背中の中にそっと入れてやるくらい? それは嫌がらせ。
えっと、あと、効能すらも魔力を使えば自由自在。魔力10で薄いエリクサービールも製造出来ました。
内緒で、火炎瓶も、爆弾も、ナパームも。
出来ちゃった。
……
そんなつもりじゃなかったのに、子供が出来ちゃった。なんて不意打ちで言われたような感覚です。それに似たような罪悪感?
出来た事はないから知らないけど。突然言われたらびびるだろう。そんなつもりじゃなかったのなら?
一応、1つずつ小さめのコップに入れてある。アイテムボックスから出して置いておかなければ大丈夫。間違って飲む事はない。はず。
……
ちょっと怖いから、メモを巻き付けておく事にしよう。分別も大事だ。見ただけじゃ分からないから。簡易鑑定でも分かるけど、間違って飲んでしまったら洒落にならない。
暫しお待ちを。
書き書き書き
火気火気火気
火気 爆発物 殺戮兵器
勿論、検証なんてしていない。出来る訳がない。ここは宿屋の1室。例え僅かな量でもやっちゃダメだろう。殺っちゃうかもしれないし。自らを?
思った通りに製造出来たんだから、効能も期待に応えてくれるはず。効能? 効果? 威力だろう。
不老不死の何でも有りのエリクサーって括りでは製造出来なかったのだから。同じ理屈ならそういう事だと思う。妄想通りの出来のはず。
この町を出た後で、次の町を目指す途中で実験だ。科学に実験は不可欠。あと、ファンタジーにも。
威力もそうだし、どんなものかは知っておく必要はある。楽しみって訳じゃないけど、これは使命として。製造責任者として果たすべき案件。
忘れないように注意しよう。目を塞ぎたくなるような案件に限って忘れる癖がある。それを現実逃避と言う。
何気に消費魔力がエリクサービールよりも低かった。ちょっと意外。それだけエリクサーが凄いんだって事で納得する事にした。
酔わないとやってられない。なんて事にはならなかった。受け入れたから。
流石ユニークスキル。ゆにーくスギルやろ。スキルも掛けてみた。濁点付いちゃったけど。
……
アルコールも適量ならば心地よい。酒は百薬の長なんて言葉すら否定する輩も居たようだけど。そんなの関係ねえ。俺には嗜好品。飲むよ。飲ませて頂戴よ。理性が保てる範囲なら。
で、結論。
ビールって事にすれば、どこか掛かってれば、実際にあるものならば、案外どんなものでも製造出来てしまうスキル。上手いこと程よくファンタジー変換してくれるスキル。それがビール製造のユニークスキル。
って事で落ち着いた。事にします!
「ぷっはあぁ~~っ! 旨い! やっぱこれだね!」
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