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1. 異世界デビュー
町歩き2 無傷無血帰還クエスト
しおりを挟む持ってて良かったアイテムボックス。簡易が付いてても俺には完璧な位の完位。そんな言葉はない。
少しずつ、少しずつ装備を整える。ゆっくり歩きながら。周りを警戒しながら。
こんな時間にこんな所でこんなおっさんに興味を示すのは、そっちの気がある奴か、人種的に危ない奴。
暴力で金品を奪おうとする奴等。人の命を軽んじてる奴等。だと思う事にする。間違ってないと思う。
だから武装して行くのです。少しずつ。
先ずはこれ。『結界石』。
動いたら効果が薄れるけど、使わないよりは絶対にマシ。魔力を流して認識阻害機能(中)を発動させちゃいます。
ゆっくり歩きながら、おっさんの気配が薄くなったら焦るでしょ。認識されなくなる事を願うけど、流石にそこまでの効果はないと思うから油断は禁物。キンモツ。キンもモツ?
キンは、モツはモツでも、臓物ならぬ、イチモツです。なんてアホな事を考えながら、気配を断つ。
誰も気にもしてないかもしれないけど、だったらいいな。これも演習って事で黒歴史に刻まれればいいや。
そして、首から掛けてる『護り石のペンダント』を確認。無反応だけど、色も変わってないし、温かくもなってない。はず。1度も反応した事がないから、違いが分からない。
でも、ちょっと安心。正常に作動してくれると信じてる。騙さないでね。これ以上? 効果を発揮してくれるのは嬉しいけど、しっかり作動するか確認したいけど、今は作動して欲しくない。この矛盾や如何に。
だが、まだだ。まだ終わらんよ。ここで油断しちゃダメだ。花街から出てからが勝負。多分そうだと思う。
俺が賊ならそうするだろうから。仕掛けるなら暗闇で。しかも人気はなるべく少ない方がいい。当たり前。
にんきじゃない。ひとけの方。こんなおっさんが人気者になれるなんて思わないけど、カモって意味では人気が出ちゃうカモ? 上手いね。
ならば、まだまだ続けよう。
身体強化、光魔法の補助魔法は絶賛発動中。問題なし。
もしもの時の為の『ヒーリングリング』もしっかり着けてます。何かあれば直ぐにヒール掛けちゃうぞ。どぴゅっと1発イっとく?
ふう。こんなんでも、少しは緊張を和らげる効果があるのです。余裕って大事。空元気でも、元気な振りしてればそれなりに元気になれる気がするもの。多分。
諦めないで!
えーっと。『厚手のフード付きマント』は、逆に怪しまれる事になりそうだから、今は却下。俺は泥棒じゃない。またよろしく?
次は、『鋼のショートソード』を抜いて手に持ってるのは逆に不味いから、しっかり腰に差しておく。俺は強盗じゃない。散々抜いたけど、これは抜かない事を願う。
何気に『皮の胸当て』を着込んで、左手にバックラーを持っちゃいます。小さくて良かった。目立ち難いという点では、こういう時には花丸装備。
俺の力量で攻撃を防げるかどうかは別問題。気持ちは大事。あるだけでも心強い。これも傷1つとて付けられない事を願う。
なんなら、お盆のようにして股間を隠す事も出来るだろう。素っ裸からの1発芸。5発抜いたから5発芸? それで隙を突いて逃げるなんて事も出来るかも。
このサイズでも100%隠す自信はある。隠し切れてしまうのは、決して俺のだけじゃないはずだ。あっ。でも、そんな事してる方が不審者じゃん。
……
こんな事なら、『ミスリルのチェーンメイル』も着込んでおけば良かった。今更後悔。今後は必ず何処でも着ておく事にしよう。流石にここでは無理。今更服を脱ぎたくない。
湯冷めするのが嫌って訳ではない。さっきまでの興奮と満足感は既に覚めている。ただ道端で脱ぎたくないだけ。そんなおっさんが居るだけで逮捕事案。そう思ってしまうのだから仕方ない。
諦めよう。さっきのアキラと掛けてみた。
最後は、これ。『黒鋼の魔戦棍』。見た目はちょいと凶悪だけど、警棒の攻撃力が大分増したやつ。って感じ。
魔力を流すと攻撃力が増加しちゃうし、属性に合わせた追加ダメージまで入れてくれるから、とっても頼もしい相棒になってくれそうです。棒だけに。
……
うっし。重量軽減(中)も付いてるし、今の俺の筋力なら、でも? 全く問題なくぶん回せる代物。自己修復(小)まで付いてるから、結構乱暴に扱っても大丈夫。
そもそもそういう使い方をする武器だし、ちょっとやそっとじゃ全く壊れない代物なんです。棒だけに。知ってた。
なんと逞しい事でしょう。こんな風に思われてみたい! 俺の息子とは大違い?
でも、こんな凶悪な先っちょだったら、女の子は受け入れてくれるかな? 喜んでくれるかな? 悦びの為に。
……
いやん。そんな目で見ないでね?
……
よしよしよし。誰もこっちを見てないぞ。この装備だけでも、見る人が見れば過剰装備かも。町中で、未だに花街に居るのだから当たり前。もう境い目まで来てるけど。
さあさあさあ。ここからが本番だ。散々やったけど、ここからが本当の命を懸けた冒険になるかもしれないんだ。気を張って行くぞ。町中なのに、これ如何に。
総合格闘術:LV4よ。
剣術:LV3、棒術:LV3よ。
投擲術とか射撃術はいいとして、今は置いといて。
気配遮断術:LV3、気配察知術:LV3、危険察知術:LV3をフル活用。
痛覚耐性:LV5のお世話にならない事を願う。
もう、さっきから願いっぱなし。所詮こんなもの。俺は弱い人間。それも仕方ない。神頼みも時には大事。少しでも気が休まるなら。祈る位は安いもの。タダだから。
タダより高いものはないとはこれ如何に。
多田より高い奴は居ない。これは、多田が男か女かに依っても解釈が変わる禅問答。今は置いておこう。
いざとなったら、流石に火魔法は不味いから、光魔法のフラッシュで目を眩ませて逃げてやればいい。喧嘩両成敗なんて御免だから、逃げるが勝ち。俺はそういう男。
まさか、こんな所で冒険者まがいの冒険が出来るとは。宿を目指すだけだけど。町中で。
それでも今は夜。これも立派な冒険となる事を願わん!
勿論、流血の事態に陥るなんて以ての外、かすり傷1つ負う事なく、無事に門限までに宿に到着するクエスト。
門なんて無かったけど、デッドラインなんて言葉は、死線なんて漢字は、それこそ死を連想させちゃう不吉な言葉だから今は使っちゃダメ。
しかも締め切りなんて忌まわしい単語まで浮かんでしまうストレスフルなキラーワード。ならば普通に、定められた時刻、定刻までに辿り着くミッション。
いや。やっぱり、インポッシブルなんて付けたくないし、危険な気がするから、クエストの方がいいな。ドラゴンなんかに殺られても生き返れそうだから。ゲームみたいだし。
誰に命令されるでもなく、報酬すらない任務。自分の平穏な睡眠の為、無駄遣いをしない為だけに発動される制限時間付き課題。クエストだ。
昼間なら、子供でも簡単にこなせる所業です。
さあ! 行くぞ!
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