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第四章 この宇宙の片隅で
8 誘惑 ※
しおりを挟む「んっ……ふ。パ、パパ……」
唇を離して男の瞳を覗き込んで、青年は驚いた。それは奥のほうでちろちろと燃える何かを滾らせながら、じっとこちらの目を見つめていた。
と思った次にはもう、またぱくりと口を塞がれている。
「ん……んううっ?」
目を白黒させているうちに、あっという間に体勢を入れ替えられ、ベッドに組み敷かれていた。驚いているうちに、口の中にぬるりと熱くて分厚い肉が忍び込んでくる。
「はっ……ぷ、パパ──」
男は青年の声など聞かなかった。さらに口を割り広げ、その中を蹂躙してくるだけだ。青年はもの慣れないながら、以前のことを思い出して彼の舌の動きになんとか応えようとした。
が、歯列をなぞられ、歯の裏側や上顎の裏まで舐められているうちに、じいんと思考が痺れだす。
目を閉じていてさえ、着ているスペース・スーツが巧みに脱がされていくのが分かった。肌がぴりぴりするほどにそれを感じていながら、青年はしばらくは呆然と、男のなすがままになっていた。
男の手がそろそろと服の裾から腹、脇腹、そして胸へと肌をなぞりながら動いている。やがてその指先が胸の先にあるものにたどり着いた。こりっと押しつぶされるのと同時に、ぴくんと腰がはねる。
「や、待っ……」
「イヤか?」
途端に男の手がぴたりと止まった。
青年はやっと離して貰えた口で荒く息をついた。
「ん……ん。そうじゃ、ないけど──」
が、男はすぐには動かなかった。寝台に仰臥した青年の上に覆いかぶさったまま、じっと表情を伺っている。
青年はちょっと苦笑した。
「……ごめんなさい。僕のせい……だよね」
彼が何を恐れているのかなど明らかだった。
すっと片手を男の頬に滑らせると、男は目を見開いた。
「前の……あの時。僕があんな風になっちゃったから」
男の沈黙と心配そうな瞳は、明らかに「是」と答えている。
青年はふふっと笑って見せた。
「大丈夫だよ、パパ。あの時は本当に初めてで……何が起こってるのかもわかんなくて。急にパパのことが知らない人みたいに思えて、怖くなって……それで」
「……すまない」
男が苦しげに眉を顰めて身体をどけようとしたが、青年は彼の首に手を回してそれを阻止した。
「みっともないことばかりで、僕の方こそごめんなさい。僕が、ただの子供だっただけだよ。急に怖くなって逃げるなんて。……でも、今は大丈夫」
少し上体を起こして、そのままそうっと男の唇にキスをする。
「ほら見て? パパ」
まだ自分の肩のあたりに残っていた衣服を、少しだけはだけて見せた。
「僕、もう……ちっちゃな子供じゃないんでしょ?」
胸までがほとんど露わになったところを、男の瞳がじっと見ている。そこには男の指先で触れられて敏感になった胸の突起が、まるで男を誘うかのようにぴんと硬く起き上がっていた。
(……なんか、じんじんする)
胸の先端も、足の間にあるものも。血液が集まって、きりきりと痛みを訴えてくるほどだ。これから与えられるのだろう刺激をすでに知っているかのように、それを待ちわびているのがはっきりと分かる。
……早く。
早く、欲しい。
「あ。とは言っても、はじめてだから」
青年は互いの額をそっとくっつけるようにして、じっと男の目を覗きこんだ。
「色々、知らないことばっかりだし。そういう意味ではちょっぴり怖いよ」
男の瞳がどこかせつなげに揺れたように見えた。
「……当然だな」
「でも、絶対にイヤじゃないから。それだけは信じて。……ね?」
乱れた姿のまま男に抱きつき、耳元で「お願い、パパ」と囁いてみる。
男の腕が、また凄い力でこちらを抱きしめ返してきた。
(ああ……!)
もう、息もできないほど。
「フラン……!」
彼の鼓動がはっきりと青年の胸にも届いた。
そこからはもう、ただただ彼の手に身をゆだねた。
◆
「はあっ……あ、あ……パパっ……」
下半身の衣服もすっかり取りのけられて、青年は男の目の前に足を開き、ずっと荒い息をついている。
男の手はとてもとても優しかった。前回のことを思えば、もう信じられないほど丁寧に、ずっと青年の体を愛撫し続けてくれている。
「ん……んっ!」
足の間のものを握りこまれ、最初のうちはゆるゆると、手や舌や唇で愛撫される。口全体ですっぽりと覆って愛され、激しく頬裏で扱き上げられると、あっという間に青年の腹の奥から何かがせり上がって来た。
「や……あっ、ああっ……!」
背中を丸め、きゅむ、と両足のつま先を縮めて体を震わせると、ぴゅっと飛び出た熱いものが自分の腹から胸のあたりを濡らしたのを感じた。腰の奥から全身へ、たまらない解放感が駆け巡ってじんわりと広がっていく。
初めてだからというのと、前回のような失敗をするまいと思うからなのだろう。男の愛撫はとても丁寧で優しすぎた。青年が、むしろ物足りなくてむずむずするぐらいに。
快楽をはじけさせた余韻に浸って脳が一瞬真っ白になり、びくびくと腰を震わせる。
男は青年の足を広げさせたまま、放ったものを指に絡めてぬるぬると青年の中心を扱き、その下の袋をやわやわと撫でたあと、今度はさらに奥の方へと指を進めた。
「んあ……んっ」
ぬぷり、と硬い指先がそこに忍び込む。
違和感が先に立って、青年は思わず腰を引けさせた。
「気持ち悪いか」
「うう……ん」
耳たぶを唇で食まれ、項や頬にキスを落とされ、あやされて首を横に振る。そちらに気を逸らされているうちに、ぐぷりと指を進められた。
「んあっ……うう!」
また腰がびくりと跳ねて無意識に逃げ出しそうになる。男の手がそれを、腰の脇をぐいと握って抑え込んだ。
ぐちゅり、ぬぷりと淫猥な水音が部屋に響いて、耳から意識までもを犯してくる。
そうされているうちに、元気をなくしていたはずのものがまた、ふるりと震えながら立ち上がっていた。
男の瞳がそれを見てくすりと微笑う。
「……若いな。元気でなによりだ」
「やあっ……あん」
いたたまれず、腕で隠して顔をそむけるが、あっさりと男の腕にどけられた。
「ダメだ。……見せろ」
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