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第四章 この宇宙の片隅で
9 嬌声 ※
しおりを挟む二本、三本とじっくりと指を増やされて行く頃には、青年はもう何がなんだかわからなくなりかけていた。
「はあ……っあは、……んっ、パ、パパあっ……!」
恐らく今の自分は、かなり淫らに腰を揺らしていることだろう。物欲しげに男の前に足を開いて、その間の雫を垂らしているものまで見せつける。その周囲を覆っている、まだ薄い下生えを、男の手が時おりさわさわと撫でている。触れられるたび、青年の喉からは嬌声が漏れ、体は素直にびくんと跳ねた。
本来そういうことのために使う場所でないそこは、もうすっかり奥の方まで濡らされてほぐされ、入り口も柔らかく変えられてしまっていた。
「ここがイイか?」
「ふあっ……!」
ぐりっと指先でその場所を押されて、青年は必死で首を振る。さっきから何度もそこを刺激され、そのたびに迸りそうになっている。奔流が堰き止められなくなりかけ、そのたびに必死に我慢してきたのだ。
青年の喉はずっとあられもない甘く蕩けた声を上げ続け、すっかり掠れかかっている。感情だけによらない涙が両目からは溢れつづけ、口の端からははしたなくも涎まで零れてしまっている。
「やは……もう、やあっ……!」
さすが、男は百戦錬磨だった。あのフランを相手に百年以上も様々なことをしてきただけのことはあるのだろう。
あちらのフランは人間ではなかったはずだけれども、基本的には同じ男性体なのだから当然だった。
「やはっ……パパ、あんんぅっ……あん、ふああんっ!」
欲しい。
もっともっと、いいものがそこに。
そう思ったら、無意識にそちらに目をやっていたらしい。青年の目線に気付いて、男は片頬を引き上げた。
「欲しいか?」
ぶんぶんと首を縦に振る。が、男は笑みを崩さなかった。
「……その前に、触ってみるか」
言って青年の片方の手をそちらへ導く。
その熱さと大きさをじかに感じて、青年は震えた。そちらもすでに、ぬるぬると先走るもので濡れている。くっきりとした先端のくびれ。そして、凶悪なほどに浮いた血管が指先に触れた。
(あ……すごい)
これが、今から突いてくれるのだ。
先ほどから触れて欲しくてたまらない腹の奥のあの部分を。
この硬くて大きな素敵なものが、あそこを思いきり突いてくれたら──。
「は……う」
想像しただけで、足の間のものがずくんと疼いた。
「いやあ……パパぁ」
涙を零しながら、小さな子供みたいにいやいやをして見せる。
「もう、やっ……。僕……もうっ」
腰をくねらせ、その場所を男のその部分に擦りつけるようにした。
「はやく……パパぁ」
前はあんなに恐ろしく思えたそれが、今は欲しくて欲しくて堪らない。
「あ……あ。パパぁ……お願い──」
涙を零しながら、腰を揺らしておねだりをする。
すると男が覆いかぶさってきて、深いキスを施される。夢中でその舌に応えている間に、男の先端がようやくぐぷりと踏み込んできてくれた。
「ふあ……あ、あ」
「ゆっくり、大きく息を吐いてみろ。力が抜ける」
男の声はまだまだ平静だ。青年が受け入れられるようにと、腰や太腿をゆっくりとさすってくれている。額に、頬に、耳にとまたキスをいっぱい降らせてもらった。
言われるままに何度か息を吐いてみるが、すぐにうまくはいかなかった。
「最初はうつぶせのほうが挿入れやすいんだが。……そうするか?」
「ん……ん。やっ」
青年は必死で首を横にふった。
「パパの顔……見る。このまま、が……いいよ──」
うまく呼吸もできないで、途切れとぎれに訴えると、男はちょっと苦笑したようだった。こめかみに玉の汗が浮かんでいるのが見える。
さすがにこのまま、中途半端な生殺しではつらいのだろう。
青年は必死で自分の体を宥めようと頑張った。が、「頑張ろう」と思えば思うほど、身体は言うことを聞かなかった。むしろ余計に変な緊張が生まれるのか、どうしてもそこが緩んでこない。
男は一度、ふうっと息をついて青年の体から自身を引き抜いた。
「あっ! パパ……?」
「一度、こっちもためしてみよう」
言って男は青年の腰を持ち上げ、抱きかかえた。
先ほどまで受け入れかかっていたそこに、ぬるりと熱い肉の感触がしてびっくりする。
(え、ええっ……!?)
男がそこを舐めている。
信じられない。柔らかな肉がぬるりぬるりと出入りして、その場所をさらに柔らかくしてくれている。
「あ、ああ……ダメ、パパっ……そんなとこっ!」
必死で逃げようともがくが、男の腕はがっちりと腰を掴んでいて放さない。
「やはっ……んあ、あっ……あっあんっ……」
最初は気持ち悪いとしか思わなかったそこが、この短時間でどんどん快感を生み出す場所に変化している。本来単なる排泄のための器官であるそこが、どんどん性器へと生まれ変わっているのだろう。
内壁をぐりっと舌先で刺激されると、それがそのまま前のものへ伝わって青年は焦った。これではまた、自分だけが達してしまう。
と、男の手がきゅっとその根元を握りこんできた。
「さすがに、二度も先にイッては後がつらくなるからな」
「なっ、なな……なに言って──」
あらぬ場所でくすりと笑われて、脳天まで真っ赤に染まりそうになる。行き場を失った欲望が腹の奥でぐるぐると滞り、つらくて堪らない。息が詰まって何も言えなくなった。
と、遂に男が青年の腰を抱え直した。
「……さて。そろそろ観念してくれよ。俺も限界なんでな」
「あ……う」
腕で口元を隠しながら見上げると、銀色の短髪の先から汗の雫を滴らせながら男がこちらをひどく優しい目で見下ろしていた。
(パパ……パパ)
大好き。
だいすき。
あなたにだったら、僕は──
──『なにをされたって、構わない』──。
そう思った、次の瞬間。
青年は体の中心を、ずぷりと男に貫かれていた。
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