白と黒のメフィスト

るなかふぇ

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第八章 神殿の思惑

11 月の夜 ※

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 話し合いがようやく終わったのは、丸い月がだいぶ高く上がったころだった。
 深夜に至り、みなは足音を忍ばせてそれぞれの部屋に戻った。
 久しぶりにインテス様とともに寝室に入る。ティガリエとはいつも通り、その前室にあたる小部屋で夜の挨拶をして別れた。
 すでに夕刻に食事も入浴も済ませてあり、あとは寝るだけだ。

「さあ、シディ。あらためてよく顔を見せておくれ」
「あ、はいっ……」

 ご不在のあいだシディが一人で寝ていた寝台に腰かけ、インテス様が手招きをしてくださる。シディはもう、あとも見ないでその胸に飛び込んだ。

「インテス様、インテス様っ……おかえりなさい、おかえりなさい……っ」

 殿下の膝の上にまたがる格好で、その胸に額をぐりぐりこすり付けながら同じことを繰り返してしまう。しっぽなんて、背後でもうびゅんびゅんに空を切っている。胸元で、殿下に頂いた首飾りの鎖がちゃりちゃりと音を立てた。

「魔法に加えて、剣の稽古もしていたそうだな。ずいぶん日焼けして、腕にも筋肉がついたようだ。体全体に力がみなぎってきているな」
「え、本当ですか?」
「ああ。健康そうで何よりだ。精悍なシディもすこぶる可愛い──」
「んんっ……」

 待ちわびた口づけが下りてきて、すぐに無我夢中になる。熱い舌を絡められ、二人の舌が立てる水音にますます興奮する。歯列を舐められ、舌先で上顎の内側をくすぐられると、背筋にぞくぞくと快感が這いあがってくる。

「んん……気持ちいいな。そなたの舌」
「そ、そうでふ……か」
「ああ。シディは少し舌が長いものな。さすがは黒狼王の子」

 それは関係あるのだろうか。犬に類する生き物なのだから、人より舌が長いのは当たり前だけれど。
 夢中で口づけに応えているうちに、すっかり足の間のものが欲望を表現してしまっている。夜着の薄い布を押し上げて突っ張っているのが、月明かりにもはっきりと見えるほどだ。シディはたまらず、もぞもぞと腰をくねらせた。すると股間にはっきりと、インテス様のそれも同様の欲望を示している兆候を感じた。

(インテス様……)

 もどかしい思いで殿下の長衣をお脱がせする。インテス様の手も、慣れた手つきでシディの夜着を肩から滑り落としていく。そうしながら、殿下の唇がシディの鼻先に、顎に、首筋に、鎖骨にとたくさんの愛情のしるしをつけていく。

「はうっ……!」

 ちゅむ、と胸の尖りを口に含まれて遂に声がでた。同時に腰がはねる。足の間のものにどんどん、あの熱くて堪らない欲望が集中していく。と同時に頭の中心が熱くとろけてかすんでいく。
 ちんまりとした胸の粒を舌先で転がすように愛撫され、もう片方も指でつままれこねられると、もうシディの腰はどうしようもなく勝手に動き始めた。左右に螺旋を描くように、いやらしいうねりを醸しだす。

「いん、てす……さまあ」

 もう欲しい。たまらない。
 自分の身体の奥の奥に、この方の硬くて熱くて大きいのを──ずっぷりと、挿れてほしい。それからいっぱいいっぱい、突き上げて。シディが大好きなあの場所を、いっぱいいっぱい突いて、突きまくって欲しいのだ。
 少しだけそんなことを妄想するだけで、先端につぷりと生まれた欲望の雫が見る間に膨らみ、つつうと足の間へと垂れ落ちていく。

「ああ……シディ。そなたは可愛い……まことに可愛いっ」
「んんっ……。いんてす、さまあ……っ」

 たまらず自分のそれを扱きたくなるけれど、我慢する。それをやってしまったら、あっという間に果ててしまう。それでは殿下を十分愉しませてさしあげることができない。
 ふたりで荒い吐息を飲み込みあうようにして口づけを交わし、互いの肌を愛撫しあいながら腰をこすり合わせる。シディはすでに腰のあたりに布の一部を絡ませただけの格好だ。

「あは……っ」

 布の間から差し込まれてきたインテス様の手がシディのそれに触れる。やわやわと袋を撫で、根元からそろそろと硬い棒をなぞりあげられるだけで、今にも達しそうになって必死に堪えた。
 そっとインテス様の手を押し戻す。

「だめ、です……っ。そんな、したら──」
「うん。今夜はもう少し、そなたには我慢してもらわねばな」
「え……」

 見上げたところで、ひょいと体を入れ替えられて寝台に沈められた。両足をぐいとひろげられ、その間にとろりといつもの香油を落とされる。冷たいと体が一瞬竦んでしまうけれど、これは温められている。きっとこれもインテス様の魔法なのだろう。この方の行為は、いつも、どこまでも優しくて、シディを不安にさせることがない。

「あ……あ」

 先端にとろとろと掛けられる香油にさえ感じて、甘く蕩けた吐息が漏れてしまう。
 インテス様が覆いかぶさってきて、夢見心地のシディにまたたくさんの口づけの雨を降らせた。
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