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第四章 勇者の村
26 愛撫 ※
しおりを挟む魔王の両腕が、リョウマの背中をそっと抱き寄せるのを感じた。ひどく優しくて、温かい腕だった。
「そなたと口づけがしたい。……ダメだろうか」
肩を震わせているだけで何も答えないリョウマをじっと見つめて、魔王はしばらく沈黙していた。が、やがてリョウマの髪を撫で、頭をそっと抱き寄せた。
「では、答えなくてもよい。そなたは何も答えるな」
言って、顎を少し持ち上げられる。
「いやならば、噛みつくなりなんなりせよ」
「ん……っ」
ふわりと塞がれた唇から、全身に電撃が走ったようだった。リョウマは目を見開き、魔王の胸元を両手で握りしめた。
「ん……んん」
いったい、これはなんだ。こんなのは初めてだ。あの《魔の森》で無理やりに奪われた時のような激しくて身勝手なものとは、まるでちがう。
優しくて、温かくて、全身が蕩けてしまいそうで。
ちゅぷ、とときどき小さな音をたてながら、魔王はしばらくリョウマの唇の表面を労わるように味わっているようだった。
「……ふふ」
いつのまにか唇が、勝手に薄く隙間を作っていたらしい。ほんのわずか、顔を離して魔王が微笑んだ。ひどく嬉しそうに見えた。
「よければもう少しだけ開いてくれぬか? ……そなたの、もっと奥を感じたい」
「ううっ……んっ」
魔王の唇はしばらく、リョウマの上唇と下唇をそれぞれに愛撫した。これもひどく優しかった。
「んむ……っ」
次にはもっと、深いのがきた。あの時のように、頬の上から上顎と下顎の間を指で無理やりこじ開けられるようなこともなく、ごく自然に舌と舌が絡まりあう。
ちゅぷ、くちゅっといやらしい水音が天蓋の中に溢れはじめる。
(あ……こん、な)
恐ろしいほどの快感がリョウマの体を貫いていく。頭がぼうっとして、くらくらする。どこでどう息継ぎをしたらいいのかもわからない。それでも夢中で、リョウマは差し込まれてくる魔王の舌に応えていた。
魔王はリョウマの舌を唇で吸い出し、甘噛みし、余すところなく味わってみたり、リョウマの上あごをちょろっと舐めてみたりする。そのたびに、リョウマの腰が勝手に跳ねた。
魔王の手はいつのまにか服の下から這いこんで、リョウマの脇腹や背筋の素肌を優しく撫であげている。
「あ……ん」
舌と肌に与えられるその快感が、そのまま下腹部に重い欲望を積んでいくのをじかに感じた。ぞくぞくして、ぴりぴりして。生まれたての小鳥みたいにぷるぷる震えてしまう。
「心地よさそうで、なによりだ」
「ん……うるせっ……はあ、あ」
「もっとだ。もっと、そなたには必要だろう?」
「あ……はあっ」
股間のものが、眼下で明らかに布を押し上げはじめている。次第に苦しくなってきて、リョウマは思わず腰をよじらせた。
魔王がリョウマの目尻に浮かんだ涙を舐めとり、胸の袷から手を差し入れた。
すでに立ちあがっていたそこを、指先でこりっと弄られる。
「んあっ!」
「もう固くなっているな。ここが気持ちいいか?」
「あ、や……っ」
そこをくりくりと弄られるたび、腰に溜まったものが重さを増した。リョウマは思わず腰をくねらせ、魔王の腰にそこを押し付けた。
魔王はひょいと頭を下げると、リョウマの胸の粒に吸い付いた。
「ふあっ」
舌先でぺろぺろと舐められる。慣れない感覚が、ビリビリと脳を犯していくのを感じたが、けっして「イヤだ」とは思わなかった。ただただ、気持ちがいい。
「あ、ああ……ん、あん」
自分でも変だと思う。そんな場所を男にそんな風に愛でられて、自分がこんな声をあげる日が来るなんて思いもしなかった。ましてや相手は、あの魔王だというのに。
魔王の唾液に濡れたそこが、ふっと息を吹きかけられて冷える感覚まで、すべてがリョウマの快楽の糧になっていく。
「いや……ああ、も、それ、以上は──」
魔王の腰の上に向かい合わせに跨って腰をびくびくさせながら、自分でもなにを懇願しているのかもわからないまま懇願する。魔王は薄く笑った。でもその笑みは、あの洞窟のときのようにリョウマを嘲笑うものではなく、ただ嬉しそうに見えた。
「そろそろこちらも堪らなくなっていよう。……どうする?」
「はあ……あ、ど、どうするって──」
思わず、みっともなく勃ちあがっている自分のそれを見下ろした。
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