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第五章 和平会談
16 心と心
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「はあ……はあ、ふう」
快楽の証を放出して、しばらくリョウマは荒い息をついていた。それでも魔王の膝の上からどこうとはせず、首に両腕を回してだきついたままだ。ともすればずり落ちそうになるリョウマの体を、魔王の腕が支えてくれている。
互いの精で汚れた体や床の上を魔王の指がさらりとなぞると、そこはきれいに元通りになってしまった。
「……おお。すげえな」
「まあ、このぐらいはな」
素直に感嘆したら、魔王はまた嬉しそうに微笑み、ちゅっとリョウマの頬にキスをくれた。
それは「これで終わり」の合図だろうか?
そう思ったら、急に魔王の体から離れがたくなった。それで、さっきよりもっと力を込めて彼の体に抱きついた。
「あの……あのさ」
「うん?」
「最初の、あの時さ」
「最初?」
「うん。その……もうちょっと、したじゃん」
「もう少し──ああ。あの時はかなりそなたに無理をさせてしまったものな」
「いや、ちがくて。そ、その……準備、ってえかさ。そーゆーの、したじゃん」
「準備?」
魔王が不思議そうにこちらを見つめてきた。
リョウマはすぐに次の言葉を発するのを躊躇して、しばらくもごもご言った。
「えっと。えっと……だから! 準備っ。う、うしろのっ……」
「うしろの」と言った瞬間、体がまたかあっと熱くなった。
「……ああ」
ようやく合点がいったのか、魔王が目を丸くした。非常に驚いているらしいのが、表情ばかりでなく気配からもビンビン伝わってくる。
もう恥ずかしくてどうしようもない。身の置き所がなくてしょうがないが、それでもこれはどうしても言いたかったのだ。
「ほ、本番……の、ためには、ちゃんと準備が要るって。それ……しねえの?」
「……リョウマ」
「てか、あんたは……したくねーの?」
「…………」
魔王は完全に驚いた目になっている。しばし言葉もなくして何度か瞬きをし、リョウマを凝視してきた。
「そなた……本気で言っているのか」
「アホか。冗談でこんなん、言えるわけねーだろ」
「……うむ」
そうだな、すまぬ、と言って魔王はしばし目線を落とした。何事かを考えているらしい。
それから意を決したように目を上げた。
「正直申して、ずっと前からそうしたかった。だがそなたは私よりもずいぶん体躯が小さいし──いや、怒らないでくれ。事実を申しているまでのことだし」
「わかってーよ。それはしょーがねえもん」
「ゆえに、本当にきちんと準備をせねば……そなたを傷つけてしまうゆえ」
つまりそれは、彼がリョウマの体を思いやってくれていたから、ということだ。それだけ本気で、リョウマを大切に考えてくれていたからなのだ。
ようやくわかった。この男は本当に本気で、自分を愛してくれている。
「ん。だからさ。準備しよ?」
「リョウマ……」
リョウマは「ふんすっ」と胸を張った。
「もう、こうなったんだからさ。俺だってちゃんとしてえ。俺ぁもう腹くくったぜ。いっつも俺ばっかキモチよくなって、あんたはそこまでじゃなかったろ? ……そんなん、イヤだ。ぜってーヤなんだ」
「そんなことはない。私はリョウマとこうしているだけでも、もはや天にも昇る心地なのだから」
「昇んなや! そんなんで昇んなやあ!」
「リョウマ」
「んえっ?」
突然、ぎゅっと力いっぱい抱きしめられて息が詰まった。
「愛している。リョウマ」
耳に流し込まれてきたそのセリフに、じん、と全身が震えた。
「バーカ。俺だって愛してんよ。バカエルケニヒ」
言ってちゅっと唇にキスしてやったら、魔王は一瞬、ほんの一瞬だけ、くしゃっと泣きそうな顔になった。が、すぐに笑いだした。
「ふふ……はは、はははははっ」
なんとも明るい笑顔だった。
「うっひゃひゃひゃひゃっ」
リョウマも一緒になって、顔じゅうで笑い返した。
快楽の証を放出して、しばらくリョウマは荒い息をついていた。それでも魔王の膝の上からどこうとはせず、首に両腕を回してだきついたままだ。ともすればずり落ちそうになるリョウマの体を、魔王の腕が支えてくれている。
互いの精で汚れた体や床の上を魔王の指がさらりとなぞると、そこはきれいに元通りになってしまった。
「……おお。すげえな」
「まあ、このぐらいはな」
素直に感嘆したら、魔王はまた嬉しそうに微笑み、ちゅっとリョウマの頬にキスをくれた。
それは「これで終わり」の合図だろうか?
そう思ったら、急に魔王の体から離れがたくなった。それで、さっきよりもっと力を込めて彼の体に抱きついた。
「あの……あのさ」
「うん?」
「最初の、あの時さ」
「最初?」
「うん。その……もうちょっと、したじゃん」
「もう少し──ああ。あの時はかなりそなたに無理をさせてしまったものな」
「いや、ちがくて。そ、その……準備、ってえかさ。そーゆーの、したじゃん」
「準備?」
魔王が不思議そうにこちらを見つめてきた。
リョウマはすぐに次の言葉を発するのを躊躇して、しばらくもごもご言った。
「えっと。えっと……だから! 準備っ。う、うしろのっ……」
「うしろの」と言った瞬間、体がまたかあっと熱くなった。
「……ああ」
ようやく合点がいったのか、魔王が目を丸くした。非常に驚いているらしいのが、表情ばかりでなく気配からもビンビン伝わってくる。
もう恥ずかしくてどうしようもない。身の置き所がなくてしょうがないが、それでもこれはどうしても言いたかったのだ。
「ほ、本番……の、ためには、ちゃんと準備が要るって。それ……しねえの?」
「……リョウマ」
「てか、あんたは……したくねーの?」
「…………」
魔王は完全に驚いた目になっている。しばし言葉もなくして何度か瞬きをし、リョウマを凝視してきた。
「そなた……本気で言っているのか」
「アホか。冗談でこんなん、言えるわけねーだろ」
「……うむ」
そうだな、すまぬ、と言って魔王はしばし目線を落とした。何事かを考えているらしい。
それから意を決したように目を上げた。
「正直申して、ずっと前からそうしたかった。だがそなたは私よりもずいぶん体躯が小さいし──いや、怒らないでくれ。事実を申しているまでのことだし」
「わかってーよ。それはしょーがねえもん」
「ゆえに、本当にきちんと準備をせねば……そなたを傷つけてしまうゆえ」
つまりそれは、彼がリョウマの体を思いやってくれていたから、ということだ。それだけ本気で、リョウマを大切に考えてくれていたからなのだ。
ようやくわかった。この男は本当に本気で、自分を愛してくれている。
「ん。だからさ。準備しよ?」
「リョウマ……」
リョウマは「ふんすっ」と胸を張った。
「もう、こうなったんだからさ。俺だってちゃんとしてえ。俺ぁもう腹くくったぜ。いっつも俺ばっかキモチよくなって、あんたはそこまでじゃなかったろ? ……そんなん、イヤだ。ぜってーヤなんだ」
「そんなことはない。私はリョウマとこうしているだけでも、もはや天にも昇る心地なのだから」
「昇んなや! そんなんで昇んなやあ!」
「リョウマ」
「んえっ?」
突然、ぎゅっと力いっぱい抱きしめられて息が詰まった。
「愛している。リョウマ」
耳に流し込まれてきたそのセリフに、じん、と全身が震えた。
「バーカ。俺だって愛してんよ。バカエルケニヒ」
言ってちゅっと唇にキスしてやったら、魔王は一瞬、ほんの一瞬だけ、くしゃっと泣きそうな顔になった。が、すぐに笑いだした。
「ふふ……はは、はははははっ」
なんとも明るい笑顔だった。
「うっひゃひゃひゃひゃっ」
リョウマも一緒になって、顔じゅうで笑い返した。
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