墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第五章 和平会談

18 予感

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 翌朝。
 目覚めたときにはもちろん、隣に魔王はいなくなっていた。
 予想していたことだったとはいえ、リョウマは思っていた以上にがっかりしている自分に気づいて苛立ちを覚えてしまった。

「ちぇっ……」

 なんとなくふくれっ面になりながらも、顔を洗いに外へ出ると、ダンパはもうとっくに起き出していた。日も昇らぬうちから己の朝稽古をしてみたり、せっせと薪を割るなどして朝食の下準備をしてみたりしていたらしい。

「おはようございます、リョウマ様」
「あ。お……おはよ……」

 そのたくましい体に似合わぬ可愛いパンダの顔を見て、昨夜のあれこれを一気に思い出してしまった。あのすべてを、きっとこの男は聞いていたにちがいないのだ。もちろん故意ではなく、単に「仕事」の一環として。
 だが思った通り、ダンパはすべてを「知らなかった、聞かなかった」で通してくれるようだった。さすが大人である。
 家の表で火を起こし、簡単な雑炊を作って二人で朝食をとりながら、リョウマは昨夜からずっと気になっていたことを彼にぶつけてみる気になった。

「あ、あのさ……ダンパさん」
「『ダンパ』で結構と申しております。なんでしょう」
「えっと……えっとさ」

 言い出してみてから、どう尋ねたらよいものやら、ちょっと考え込んでしまう。

「勘違いだったらゴメンなんだけど。なんか、魔王……おかしくね?」
「陛下がにございますか? それはいかように」
「って。それはうまく説明できねえんだけど……うーん」

 再び考え込んで、かつかつと椀から飯をかき込んでいるリョウマを、ダンパはしばし無言で見つめてきた。

「その、つまりさ。なんか、そっちの国で困ったこととか起こってね? 事件とか、事故とかさあ」
「…………」
「なんかうまく言えねーんだけど。魔王、ちょっと変だったからよ。なんかそっちであったんじゃねえかなって」
「左様にございますか」

 言って、ダンパは自分の椀を置き、もともと正しい居住まいをさらにきちんと正して座った。思わずぎょっとなって、リョウマは危うく飯を喉に詰まらせるところだった。

「申し訳ありませぬ。残念ながら、自分はなにも存じあげませぬ」
「そ、……そっか」
「たとえ存じあげておりましても、陛下ご自身がお話しにならぬことを、自分ごときが申し上げることもございませぬが」
「あ。……うん。そりゃそっか。ごめん」
「謝っていただくには及びませぬ」

 ダンパは静かに言っただけだったが、ほんの少し、何かを考える様子に見えた。


 ◇

 
 次に魔王から連絡が入ったのは、そこからさらに数日後のことだった。例によってリョウマの指輪からいきなり魔王の声がしたのである。

 《御前会議の結論が出た。至急、そちらの長老会議を開いてもらいたい》

 というわけでその日もまた、さっそく長老会議が行われることになった。
 場所は同じ、ムサシの家。面子は先日と同じ面々に加え、今回は残りの《レンジャー》であるハルトとコジロウも参加している。
 今回、リョウマは「通信係」だった。要するに指輪を使って魔王とこちらをつなぐ役である。リョウマの指輪の赤い石がキラキラ光ると、前の時のようにその上に画面が現れて魔王の顔が映し出された。
 例によって互いの挨拶がかわされてから、魔王は開口一番、こともなげにこう言った。

 《結論から申そう。そちらの要望は概ね受け入れることになった。こちらの《保護区》に移りたい者は、すぐにも移動できるよう準備も整えてある。ただし、細かいことはこちらの大臣や将軍どもと詰めてくれると助かるが》
「ええっ」
「な、なんと──」

 めちゃくちゃに仕事が早い。いや、早すぎて度肝を抜かれた。

「いやちょっと待て。もう《保護区》ができたって? マジか!」
 《こんなことで嘘を申してどうなるのだ?》

 画面の中の魔王が苦笑したが、リョウマはどうもその顔色が気になった。……いや、普段よく見るちょっと薄青い肌の色なので、やっぱり気のせいかもしれないが。
 どことなく疲れているような、寂しそうな。とにかく奇妙な感じがしたのである。

(なんだこいつ。いったいどうしたんだよ……?)

 いやな予感がどんどん膨らんでいく。
 あれからずっと「気のせいであってほしい」と願ってきたが、やっぱりそうではないようだ。

(いったいなんだ……? なにがあったっていうんだよ)
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