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第六章 迫りくるもの
13 悪夢
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「う~~ん。ううう~~~ん……」
翌日の朝方。なんだかひどい夢を見た。とんでもない重荷を負わされて道をゆき、やがてたまらずばたりと道端に転がったら、今度は巨大な米俵のようなものが腹の上に落ちてきてどうしても動けない。起き上がろうともがいてももがいても、どうしても起き上がれない……という悪夢であった。
散々うなされた果てにばちっと目が覚めたら、現実でも、なんだかやっぱりでかいものが胸の上に置いてあった。
「くっ……重んもっ……って、おいいい!」
いや、重いはずだった。
隣で寝ている魔王エルケニヒが、ほとんど猫の子でも抱きしめるようにして、リョウマの体を抱き込んですやすや眠っていたのである。
「てんめっ……苦しいっつったろーが。いい加減にしやがれ。ほら起きろって。起きろやああっ」
「ん……なんだ? リョウマ。まだ早い。もう少し寝よう……」
寝ぼけた声で返事が聞こえ、さらにむぎゅぎゅうう、と抱きしめ直されて本気で息が止まりそうになる。
「ぐええっ……どアホウっ! 寝ぼけんな、寝ぼけて人を絞め殺すなあっ、起きろおおおっ」
最終的に男の鳩尾を思いっきり膝蹴りしたところで、ようやく魔王は「うっ」とひと声あげて目を開けた。
「なんだ、リョウマ。どこかまだ痛むのか」
「痛んでんのはおめーだろうが。俺はノープロブレム。傷なら昨日、シュルレのじっちゃんにきれいに治してもらったからよ」
そうなのだ。あのあと、早速に呼ばれた侍医の白ヘビ老人、シュルレが簡単に診察をし、魔王国で最高レベルの《治癒》魔法を使ってすぐに傷を治してくれた。おかげでもとよりずっと元気になってしまったぐらいだ。
それでも魔王はずっとリョウマを心配し、食事をする間も入浴をする間も、ずっとリョウマの隣にぴたりと張り付くようにして過ごした。もちろんベッドの中までも。そして今に至る。
なお魔王は、夜のあいだ決して手出しはしてこなかった。体のことを心配してくれたらしい。
「あのなあ。もうほんっとーに大丈夫だからよ。お前は心配せずに、ちゃっちゃと仕事に行けっつーの。てか、あのエロ恐竜野郎はどうなった?」
「プローフォルか」
その名を聞いた途端、魔王は眉間と鼻の頭にしわを寄せた。部屋の隅にゴキブリでも見つけたかのような顔だ。
「あの者には、この世で考えられる限りの苦渋と辛酸を舐めさせる。そなたに与えようとした苦痛のすべてを受けさせ、そのうえで公開処刑と決まった。もちろんあの腐れ汚物の男根は、この手で端から磨り潰すがな」
「ひえええっ」
ぐぐぐ、と血管の浮いた拳を握りしめて唸る男を見て、思わずゾッとする。無意識に自分の股間をきゅっと押さえて足を閉じてしまった。
そんな風に死刑にされるなら、あのときクズ肉のように一瞬で殺された兵らのほうがよほど幸せだったのかもしれない。
(自業自得だけど、ちょ~っと可哀想かも……いやいやいや。自業自得。自業自得だっ、あんなもん!)
何度もそう思い直し、ぶるぶると顔を左右に振った。
「んで? 結局あいつ、なんであんなことしたんだって?」
「昔から、この魔王の座を狙っている男ではあったのだ」
「えっ、マジ?」
「ああ」
それはまた、大層な望みを抱いたものだ。
「それでもほかの将軍の目もあって、なかなか表立った行動はしなかったのだが……」
「ふうん?」
「例の彗星のあれこれで、政府内がやや混乱しているこの時を狙ったようだ。私がそなたの色香に迷い、国の大義を忘れて政務をおろそかにしていると、下の者らに吹き込まれた……という話も聞こえてきている」
「いっ、色香ぁ??」
なんというクソ恥ずかしい単語だ。だれの話だ? いや自分か。勘弁してくれ。
「そもそも、すでに百年以上はこの座を狙っていたのだ。残念ながら人望としてはほかの将軍らにまったく及ばぬというのにな」
「へえ。そうなん?」
「ああ。見ていればわかろう?」
「あ~。ま、ね」
獅子の将軍ダイダロスも、《勇者の村》に派遣されてきた大鷲の顔のトリーフォンも、立派な押し出しの大将軍だった。ちょっと見ただけだったが、部下らからの尊崇もしっかりと集めているように思えた。イノシシ顔のサムイルについてはあれ以来あまり見る機会がなかったが、エルケニヒがこう言うならそうなのだろう。
「人望のない者ほど、身の丈に合わぬ地位や権益を無闇に欲しがるものよ。その責務の重大さも考えずにな。それはいつの世も変わらぬ真理のようだ」
「むーん。そういうもんか……」
ちょっと考え込んでいたら、またもや魔王がリョウマの体をぐいと抱き寄せた。
「うわっ。おいっ……」
「本当に大丈夫か? 体のことばかりではないぞ。ああした行為は何よりも被害者の心を蝕み破壊するもの。そなたのここも心配なのだ、私は」
言ってリョウマの胸のあたりにそっと人差し指を置く。
リョウマは思わず苦笑した。
「大丈夫だって。ほんと、ギリギリだったけどな。ちゃんとあんたが助けにきてくれたんだからよ」
「……そうか」
「つーかアンタ、人のこと言えねーかんな? お前だって最初、なんだかんだで無理やりヤろーとしてきたじゃねーかよ、性犯罪者の顔が見てえんなら、まず鏡を見ろよ鏡をよー」
「……うむ。その節は、まことに申し訳なきことを」
いきなり魔王がざっと寝台から出て床に平伏しそうになったので、リョウマは慌てて両手を振って遮った。
「いやいやいや。もういいって。……てかあの時、なんであの場所がわかったんだ? 指輪で連絡はできなかったみてえだけど」
「ああ。それはな」
赤い指輪の効力は、思ったとおりになにかの障壁魔法を使って失わされていたらしい。だが、魔王国内でそんな不審な魔方陣を不自然に展開させれば、各所に配備されている忍びたちの目にすぐにつくのだという。
基本的に、この国では不審に思われる魔法は事前に政府に申請・許可を得てから使わねばならないことになっているそうだ。まあ非常時にはそうも言っていられないわけだが。
「要するに、詰めが甘い。頭は決して悪くなかったが自己過信が強く、己の都合のいいようにばかり考えて判断を誤るきらいがある。あの者のそういう部分も、部下らからの信頼を得にくい理由になっていたわけだ」
「なあるほど……」
なんだかいろいろと納得である。
「んで? 《勇者の村》のみんながこっちに来る話はどうなった。あれから進展は?」
「そなたの事件のために中断していたが、返信はあった。少なくとも長老らの同意は得られたとのことだ」
「そっか! よかった……」
少し胸をなでおろす。もちろん村人全員を説得するのが目標だが、まず第一段階はクリアといったところか。
「ともあれ、まずは朝食をとろう。……さ、リョウマ」
「ん」
と差し出された手にごく自然に手を乗せてから、ハッと気づいた。
「っじゃねーわ。やめろ、女の子にするみてーなことはやめろ恥っずいわ!」と、ぺしっと男の手を払いのける。
「いやいや。そなたは病み上がりなのだから。なにかあってからでは遅い。さあ、遠慮せず」
有無を言わさずくいっと手を取られて立ちあがらされる。と思ったら、その手の甲にまたもやナチュラルにキスされた。
「ぐわあっ。だから! そーゆーのを、やめろってよおお!」
魔王はふはっと笑っただけで、ひどく嬉しそうな顔を崩さず、手も離さない。そのまますぐに侍従たちが呼ばれ、朝の身づくろいが始まってしまった。
(ったく……。毒されてる、ぜってーに毒されてんぞ、俺!)
と自分を叱咤するも、なにやらもにゃもにゃと腹の底から上がってくるのは、どう考えても「嬉しい」というふわふわした気分なのだった。
処置なし、である。
翌日の朝方。なんだかひどい夢を見た。とんでもない重荷を負わされて道をゆき、やがてたまらずばたりと道端に転がったら、今度は巨大な米俵のようなものが腹の上に落ちてきてどうしても動けない。起き上がろうともがいてももがいても、どうしても起き上がれない……という悪夢であった。
散々うなされた果てにばちっと目が覚めたら、現実でも、なんだかやっぱりでかいものが胸の上に置いてあった。
「くっ……重んもっ……って、おいいい!」
いや、重いはずだった。
隣で寝ている魔王エルケニヒが、ほとんど猫の子でも抱きしめるようにして、リョウマの体を抱き込んですやすや眠っていたのである。
「てんめっ……苦しいっつったろーが。いい加減にしやがれ。ほら起きろって。起きろやああっ」
「ん……なんだ? リョウマ。まだ早い。もう少し寝よう……」
寝ぼけた声で返事が聞こえ、さらにむぎゅぎゅうう、と抱きしめ直されて本気で息が止まりそうになる。
「ぐええっ……どアホウっ! 寝ぼけんな、寝ぼけて人を絞め殺すなあっ、起きろおおおっ」
最終的に男の鳩尾を思いっきり膝蹴りしたところで、ようやく魔王は「うっ」とひと声あげて目を開けた。
「なんだ、リョウマ。どこかまだ痛むのか」
「痛んでんのはおめーだろうが。俺はノープロブレム。傷なら昨日、シュルレのじっちゃんにきれいに治してもらったからよ」
そうなのだ。あのあと、早速に呼ばれた侍医の白ヘビ老人、シュルレが簡単に診察をし、魔王国で最高レベルの《治癒》魔法を使ってすぐに傷を治してくれた。おかげでもとよりずっと元気になってしまったぐらいだ。
それでも魔王はずっとリョウマを心配し、食事をする間も入浴をする間も、ずっとリョウマの隣にぴたりと張り付くようにして過ごした。もちろんベッドの中までも。そして今に至る。
なお魔王は、夜のあいだ決して手出しはしてこなかった。体のことを心配してくれたらしい。
「あのなあ。もうほんっとーに大丈夫だからよ。お前は心配せずに、ちゃっちゃと仕事に行けっつーの。てか、あのエロ恐竜野郎はどうなった?」
「プローフォルか」
その名を聞いた途端、魔王は眉間と鼻の頭にしわを寄せた。部屋の隅にゴキブリでも見つけたかのような顔だ。
「あの者には、この世で考えられる限りの苦渋と辛酸を舐めさせる。そなたに与えようとした苦痛のすべてを受けさせ、そのうえで公開処刑と決まった。もちろんあの腐れ汚物の男根は、この手で端から磨り潰すがな」
「ひえええっ」
ぐぐぐ、と血管の浮いた拳を握りしめて唸る男を見て、思わずゾッとする。無意識に自分の股間をきゅっと押さえて足を閉じてしまった。
そんな風に死刑にされるなら、あのときクズ肉のように一瞬で殺された兵らのほうがよほど幸せだったのかもしれない。
(自業自得だけど、ちょ~っと可哀想かも……いやいやいや。自業自得。自業自得だっ、あんなもん!)
何度もそう思い直し、ぶるぶると顔を左右に振った。
「んで? 結局あいつ、なんであんなことしたんだって?」
「昔から、この魔王の座を狙っている男ではあったのだ」
「えっ、マジ?」
「ああ」
それはまた、大層な望みを抱いたものだ。
「それでもほかの将軍の目もあって、なかなか表立った行動はしなかったのだが……」
「ふうん?」
「例の彗星のあれこれで、政府内がやや混乱しているこの時を狙ったようだ。私がそなたの色香に迷い、国の大義を忘れて政務をおろそかにしていると、下の者らに吹き込まれた……という話も聞こえてきている」
「いっ、色香ぁ??」
なんというクソ恥ずかしい単語だ。だれの話だ? いや自分か。勘弁してくれ。
「そもそも、すでに百年以上はこの座を狙っていたのだ。残念ながら人望としてはほかの将軍らにまったく及ばぬというのにな」
「へえ。そうなん?」
「ああ。見ていればわかろう?」
「あ~。ま、ね」
獅子の将軍ダイダロスも、《勇者の村》に派遣されてきた大鷲の顔のトリーフォンも、立派な押し出しの大将軍だった。ちょっと見ただけだったが、部下らからの尊崇もしっかりと集めているように思えた。イノシシ顔のサムイルについてはあれ以来あまり見る機会がなかったが、エルケニヒがこう言うならそうなのだろう。
「人望のない者ほど、身の丈に合わぬ地位や権益を無闇に欲しがるものよ。その責務の重大さも考えずにな。それはいつの世も変わらぬ真理のようだ」
「むーん。そういうもんか……」
ちょっと考え込んでいたら、またもや魔王がリョウマの体をぐいと抱き寄せた。
「うわっ。おいっ……」
「本当に大丈夫か? 体のことばかりではないぞ。ああした行為は何よりも被害者の心を蝕み破壊するもの。そなたのここも心配なのだ、私は」
言ってリョウマの胸のあたりにそっと人差し指を置く。
リョウマは思わず苦笑した。
「大丈夫だって。ほんと、ギリギリだったけどな。ちゃんとあんたが助けにきてくれたんだからよ」
「……そうか」
「つーかアンタ、人のこと言えねーかんな? お前だって最初、なんだかんだで無理やりヤろーとしてきたじゃねーかよ、性犯罪者の顔が見てえんなら、まず鏡を見ろよ鏡をよー」
「……うむ。その節は、まことに申し訳なきことを」
いきなり魔王がざっと寝台から出て床に平伏しそうになったので、リョウマは慌てて両手を振って遮った。
「いやいやいや。もういいって。……てかあの時、なんであの場所がわかったんだ? 指輪で連絡はできなかったみてえだけど」
「ああ。それはな」
赤い指輪の効力は、思ったとおりになにかの障壁魔法を使って失わされていたらしい。だが、魔王国内でそんな不審な魔方陣を不自然に展開させれば、各所に配備されている忍びたちの目にすぐにつくのだという。
基本的に、この国では不審に思われる魔法は事前に政府に申請・許可を得てから使わねばならないことになっているそうだ。まあ非常時にはそうも言っていられないわけだが。
「要するに、詰めが甘い。頭は決して悪くなかったが自己過信が強く、己の都合のいいようにばかり考えて判断を誤るきらいがある。あの者のそういう部分も、部下らからの信頼を得にくい理由になっていたわけだ」
「なあるほど……」
なんだかいろいろと納得である。
「んで? 《勇者の村》のみんながこっちに来る話はどうなった。あれから進展は?」
「そなたの事件のために中断していたが、返信はあった。少なくとも長老らの同意は得られたとのことだ」
「そっか! よかった……」
少し胸をなでおろす。もちろん村人全員を説得するのが目標だが、まず第一段階はクリアといったところか。
「ともあれ、まずは朝食をとろう。……さ、リョウマ」
「ん」
と差し出された手にごく自然に手を乗せてから、ハッと気づいた。
「っじゃねーわ。やめろ、女の子にするみてーなことはやめろ恥っずいわ!」と、ぺしっと男の手を払いのける。
「いやいや。そなたは病み上がりなのだから。なにかあってからでは遅い。さあ、遠慮せず」
有無を言わさずくいっと手を取られて立ちあがらされる。と思ったら、その手の甲にまたもやナチュラルにキスされた。
「ぐわあっ。だから! そーゆーのを、やめろってよおお!」
魔王はふはっと笑っただけで、ひどく嬉しそうな顔を崩さず、手も離さない。そのまますぐに侍従たちが呼ばれ、朝の身づくろいが始まってしまった。
(ったく……。毒されてる、ぜってーに毒されてんぞ、俺!)
と自分を叱咤するも、なにやらもにゃもにゃと腹の底から上がってくるのは、どう考えても「嬉しい」というふわふわした気分なのだった。
処置なし、である。
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