墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第十一章 反撃

10 夜の窓辺

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 魔王はまだ将軍らと話があるというので、リョウマはダンパと部屋に戻った。
 《レンジャー》の仲間とムサシも、《保護区》での仕事が残っているというので、後ろ髪を引かれる表情ながらも戻ることになった。その表情は特に、ケントの顔に顕著だった。

「お前、無理すんなよ」
「うん。あんがとな、ケント」

 ケントが本当に心の底から自分を心配してくれていることはわかっている。純粋に自分を大事に思ってくれていることもだ。
 だからこそ申し訳ない気持ちにもなるけれど、自分がいまどうしても心惹かれてしまうのは、なぜか敵の総大将だったあの魔王なのだった。……この気持ちだけは、もうどうしようもない。

「なんか……ごめんな」
「謝るな。謝るようなことじゃないだろ」
「うん……。そうだな」

 ケントは最後まで怒ったようなふくれっ面を作っていたが、それが本気のものでないことは、幼いころからともに育ったリョウマには一目瞭然のことだった。

 《保護区》へと戻っていくみんなの飛行艇をダンパとともに見送って、リョウマは私室に戻った。
 ようやく魔王がそこへやってきたのは、そこから二刻ほど経った夕方だった。
 魔王は早々にダンパを下がらせると、二人だけで夕餉をとり、いつものように二人で入浴を済ませて寝室へ戻った。
 その間、魔王は昼間の件についてなにもリョウマに訊ねなかったが、そのぶんずっとリョウマはどきどきする羽目になった。夕餉など、大好物の肉料理が山ほど並んでいたというのに、ほとんど味がしなかった。

 魔王がようやくその話題を振ってきたのは、丸い月がすっかり中天に懸かるころになってからだった。窓辺でその月を見上げながら、魔王は自分の膝のうえにリョウマを座らせていた。
 時おり、優しく触れるだけの口づけが髪や、耳や、頬に落ちてくる。気持ちよくて、ついうとうととしかかりそうになるたびに、「いや、ダメだダメだ」と自分を叱咤して目を見開く努力が必要だった。
 それにしても、いつまで経ってもその話にならないのはどうしたことか。体力魔人のこいつはともかく、自分はいい加減寝なければ、明日にひびくというのに。

 もしかしたらこの男、今になってリョウマに意思を確認するのを躊躇っているのだろうか……?

(いやいやいや。んなわけねえよな)

 心臓に毛どころか針金が生えまくっているこの男に限って、そんなことは。
 そう思うのに、魔王の指はリョウマの髪をやわらかく弄んでいるだけだし、その唇は肝心の話をするよりも、リョウマの顔や体のあちこちに口づけをすることしか選ばない。
 いい加減ジリジリしてきて、リョウマはついに自分から口を開いた。

「……あのさあ。しねえの? あの話」
「ああ。……いや、うん」
「なんだよ珍しいな~。お前がそんなにモノを言いにくそうにしてんの、初めて見たかも」
「失礼なことを申すな。これでも結構ナイーブなのだぞ」
「うっそでえ!」

 ナイーブ! 言うに事欠いてナイーブだとは!
 ぎゃははは、と大笑いしてしまってから、慌てて口を閉ざしてちょっと反省した。これはやっぱり可哀想かもしれない。自分がされたら、きっと傷つく。

「あいや……ゴメン。ちょい言い過ぎた」
「構わぬさ。珍しくあれこれ躊躇しているのは事実なのだから。これが私らしくないという自覚もあるしな」
「なんでそんな、躊躇すんの? 返事はわかりきってるだろ」
「わかりきっているのか?」
「そりゃ……」

 言いかけて、すぐそばにある魔王の顔をまじまじと見返してしまった。

「もしかしてお前こそ……今になって結婚はしたくねーと思ってる……とか? ま、無理もねえけど」
「それはない!」
「はぎゃっ」

 突然耳元で叫ばれて、キーンと耳が痛くなった。

「皆の前では多少ふざけた言い方をしてしまったが。……私は本気だ。私が結婚するというなら、その相手はそなたがよい。そなた以外にはあり得ない。私はそなた以外のだれも欲しいとは思わぬ。これはまことの本心だ」
「……あっそ」

 すぐそばにある魔王の瞳に、月あかりが差し込んで、ちらちらと銀色に光っている。その目が少し上目遣いにこちらの表情を探っている。魔王の手がこちらの手を上から包み込んだ。

「リョウマ。もう一度訊ねるぞ。……私の、伴侶になってくれぬか」

(やっと言いやがったな、こいつ)

 思うと同時に、リョウマはにかっと笑って見せた。

「おうよ」
「まことに?」
「だからそーだっつってんべ。てか、もっと早く言え。こっちはもうずっと前からそのつもりなんだからよー」
「リョウマ!」
「むぎゃっ! し、死ぬ! しぬしぬしぬ!」

 力いっぱい抱きしめられると、下手をすると窒息死しかけるのだ。と、すぐに腕の力がゆるんだ。

「あ。すまぬ」
「ちょっとは気をつけろ、こちとらただの人間なんだからよっ」
「『ただの』は言い過ぎであろう? 誉れ高き《BLレンジャー・レッド》殿が」
「変身してなきゃただの人だっつーの!」
「はっははは!」

 すぺーんと頭頂部にチョップを食らわしたら、魔王は高らかに笑声をあげた。ひどく明るい笑顔だった。
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