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第十二章 新たな命
3 惚れた弱み
しおりを挟む魔王とリョウマの歴史的な婚儀から続く、長い長い祝宴の間、主役である二人には大きな、そして大変めんどうな仕事が待っていた。
すなわち政府の要人と経済界の重鎮および、武官の要職者やら地方都市の首長やらといった者たちからの祝いの挨拶を受けつつ顔合わせをすることだ。
これは一国の王としてとても大切な仕事であるらしい。
魔王夫妻──と言うと、リョウマが男子であるためにかなり語弊があるわけだが──との謁見のために設えられた大広間。そのひな壇に並べられた玉座に座らされ、長々と続く拝謁者のための列をひとりひとり消化していくのは、なかなかに大変な作業だった。
なにしろ絶対的に人数が多い。ちょっと気が遠くなるほどに多い。まあ、あの《勇者の村》と比べれば当たり前ではあったけれども。
一応はリョウマも、事前にある程度、招待した様々な生き物の形質をもつ人々の顔をなるべく憶えようと努力はしたのだったが、早々に諦めた。あまりにも多すぎたのだ。それゆえ、やってくる者ごとに側近の者から「この者はかくかくしかじかで……」と背後関係やら何やらを耳打ちしてもらえたのは大変ありがたかった。
だがその作業も三日目ともなると、リョウマはもう完全に疲弊していた。
どうやら朝から顔色がすぐれなかったらしい。見かねた魔王が「あとは任せよ。細かいことはデータを見て学べばよい。これ以上の顔つなぎは不要だ」と言ってくれて、早々に自室に引き上げてきた。
《勇者の村》の主要メンバーや《レンジャー》のみんなは当然のこと、ダイダロスやトリーフォン、ダンパらからの祝辞もいの一番に受け取っているので、リョウマはありがたく魔王の申し出に従ったのである。
「はあ……。今更だけど、王族って大変なー」
部屋に戻るなり、速攻で楽な夜着に着替え、ベッドにもぐりこんだリョウマは、それでようやく大きく息をつくことができた。ここまでついてきてくれたダンパは、例によって扉の外で待機してくれている。
ちなみに晴れてリョウマが公式に王配となったのを機に、近衛隊も再編成され、今後はダンパひとりがリョウマを守る形ではなくなるという。
こんな風にすぐに体力が尽きて手をかけてしまうようでは、今後もみんなに迷惑を掛けてしまいそうで心配になる。
「けどっ。アイツも悪いんだぞ!『もうダメだ、やめろ』って、どんなに言っても毎晩毎晩、サルみてーに盛りやがってよー」
いや、こう言うとむしろサルに失礼な気がする。
特に、この国には猿の形質をもった獣人だっているのだから、あまり失礼なことを言ってはならない気もする。
(ううう。ごめん、サルさん……)
はっきり言って、本当に身がもたない。魔王は気を遣って、事後にはいつも《治癒》の魔法をかけてくれるが、それでも追いつかないこの腰の疲労! まったく、どうしてくれようか。
だが、事後に怒り心頭で睨みつけると、昔と違って今の魔王は心底申し訳なさそうな顔をする。大きな体を小さく縮めて落ち込んで、反省しきりという様子になる。その顔を見ていると、ついつい「ちょっと可愛いな」なんて思ってしまい、「ま、いいか」なんて許す気になってしまう……のが、最大の間違いなのだ!
結局、毎度毎度同じことの繰り返しになってしまう。「これ以上はダメだ、明日こそは絶対に許さねえ」と毎回心に誓っているのに!
(もしかして……これが、アレか?『惚れた弱み』とかなんとかいう──)
「わーわーわー! もういい、寝るっっ!」
情けない声をあげて布団をひっかぶり、丸くなる。
とりあえず、休むのだ。今はそのことしか考えない。それに限る。
ダンパには先に言ってあるから、このまま夕餉の時間までは誰にも邪魔されないはず──
というリョウマの思考も、夜の闇が襲ってくるように訪れた泥のような眠りによって、早々に彼方へ押し流されていった。
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