墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
181 / 227
第十二章 新たな命

9 保護区行政庁舎

しおりを挟む

「これはこれは、配殿下。斯様かような狭苦しい場所にお越しくださり、恐縮至極に存じまする」

 しかつめらしい顔をしてリョウマたちを出迎えたのは、《第一人間保護区》の行政官筆頭だという初老の男だった。前に自分たちを出迎えてもてなしてくれた古老とは別人だ。あちらはあくまでも、村の代表者であり、村民をたばねるかなめの人物。
 そしてこちらは、村内の具体的な政策を立案して魔王国との仲立ちをする、魔王国所属の行政機関だ。

 「《保護区》の中で、我が国と関連する活動をするためには、保護区の行政官の同意と協力をとりつけておく必要がある」という魔王のアドバイスに従って、今日のリョウマはこちらへ訪問することにしたわけである。

 いかにも武人然としているムサシなどに比べると、行政長官はずいぶんと脆弱そうに見える男だった。ここには《瘴気》が存在しないため、人間の男である。名を「オサマベリ」というらしい。真っ黒な髪を真ん中できっちりと分けてなでつけ、針のように尖らせたくの字型の口ひげを鼻の下に蓄えている。脂肪をかなり積み上げてあるらしい腹を、きらびやかな布地で幾重にも覆っていた。

 彼の周囲を囲んでいる、この地域の行政を担っている者たちも、大体は似たような体形である。栄養状態がいいといえば聞こえはいいが、なんとなく全体に自堕落な雰囲気を醸し出していて、とてもいい印象とは言いがたい。全部で十名ほどで、うち三名は女性だった。

 行政庁舎も村のほかの建物とはちがい、魔都デヴァーデンスでよく見かけたような、つるりとした曲面の壁で囲まれたつくりだ。村の中ではほとんど見ることもない絵画が飾られていたり、「シャンデリア」と呼ばれるような照明器具がさがっていたり、大窓に豪華なカーテンが掛けられていたりと、全体にとても瀟洒しょうしゃな感じがする。

 庁舎を貫く廊下を案内され、リョウマ一行は応、接室らしき部屋へ通された。一行はリョウマのほか、護衛のダンパ以下二名と、村長ゲンゴ、《勇者の村》の古老ムサシ、それに《レンジャー》四名で構成されている。総勢十名だ。
 あちらの十名とこちらの十名は、向かい合ってテーブルについた。速やかに茶などが供され、話はすぐに始まった。

「事前の書面にてご訪問の主旨は承っております。そちら《第二保護区》の子どもをこちら側の子どもと共に、デヴァーデンスの学校へ通学させたいとのことでしたな」
「はい」

 つまり、今回の訪問の目的はこれだった。
 いま現在《勇者の村》出身の子どもたちは、学力の点でこちらの子どもたちとは比べるべくもない。このままでは、彼らの将来は非常に狭い選択肢しかないことになりかねない。それではあまりに可哀想だ。
 こちらの村の子どもたちと同じレベルの教育を受け、同じように将来を展望できてこその「平和」であり「幸せ」だろう。と、リョウマはそう考えた。そして魔王もそれに同意してくれたのだ。「まずは思うようにやってみよ」と。

「ナリスのレポートを先に読んでくれたんスね。どうもありがとうございます」
「いえいえ。当然のことですゆえ」

 これら諸々の要望を、事前にレポートにまとめて庁舎へ送ってくれたのは、結婚以来文官としてリョウマの側近になってくれている魔族の青年だった。今回、この仕事を託されてから、魔王によって直々じきじきに紹介された人だが、これまた非常に優秀かつ魔王に忠実な人であるらしい。名を「ナリス」という。
 顔は赤ギツネのそれに最も近く、すらりと細身で姿がよい。非常に賢そうな印象の青年だ。賢そうすぎて、ちょっと冷たそうに見えてしまうのは残念な感じではあるが。今回はダンパの下につく形で、書記もかねて同行してくれている。

「それより、殿下。わたしどもに敬語はお使いになりませぬよう」
「え? でも、そんなわけにはいかねえッスよ」

 ぶ、と後ろから吹き出す声が聞こえた。明らかにサクヤとケントの声だった。

(くっそう。わーってるっつーの)

 どうせ、自分の「敬語」など敬語とも呼べぬほどのお粗末なものだ。そんなことはわかっている。しかし、こういう場合はやはり言葉遣いも大事だろうと思うのだ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...